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フィンテック革命の中で見えてきた生保の将来像

この本を読んでいて思わずため息が出てしまった。

これは金融分野の新潮流、エンベデッドファイナンスについて取り上げた本だ。

エンベデッドファイナンスというのは、消費者生活と密な接点を持つ非金融事業のフローに、金融サービスを組み込む手法のことだ。

フィンテックにおける第三の波と言われている。

ECサイトで多様な決済方法を提供したり、口座開設をスピーディに行うなど、消費者体験の向上に大きく貢献できるものとして注目を浴びている。

この流れ自体は非常に興味深いのだが、私のため息の原因は保険の章で生保の話が全く出てこないことだった。

生保が改革の波に乗るために必要なこと

生保は家の次に高い買い物と言われるほど単価が高く、生保は損保と比べると意義が分かりづらいので、購買行動のフロー内に組み込んでも「じゃあついでに加入しよう」という動きになりづらい。

というわけで、エンベデッドファイナンスの流れに生保が乗るには以下のような変化が必要だ。

①生保のニーズが高まるタイミングの見極め
②ニーズが高まる時に顧客接点を持つ非金融事業者との関係構築
③安価な保険料のメニュー拡充(保障期間の短期化、保障範囲の限定化)
④外部の会社とのスムーズなデータ連携
⑤使いやすいUIの追求
⑥多様な決済手段の提供(月払、年払、前納など)

以前に書いたが、④と⑤についてはデータを中心に据え、それ以外のレイヤーを自由に組み替えられる「疎結合アーキテクチャ」が鍵になりそうだ。

生保のニーズが高まるタイミングの分析

上記変化の中でまだまだ工夫の余地が大きいのは②だろう。

一般的に生保のニーズが高まるのは、以下の通りだ。

(1)健康だが、万が一の備えの必要性を感じる
結婚、出産、ローンを組む

(2)不幸なことが起きた時
身近の大切な方が亡くなった、または病気や要介護状態になった

(1)は非金融事業者とタッグを組んで商品提案をしてゆく。

実はこの分野は既にレッドオーシャンだったりするので、他社を凌駕するような洗練されたシステムを提供できるなら勝負を挑む余地はある。

(2)は「○日後の落ち着いたタイミングに提案するとよい」というのを研究してノウハウ化すべきだ。

日数だけでなく、「この行動をした後なら気持ちが落ち着いているはず」というパターンがあるなら、それもどんどんアルゴリズムに取り込むべきだ。

上記のような行動履歴を収集できる非金融事業者とは積極的に手を組むべきである。

また、優れた生保セールスが開く勉強会には会社の金でどんどん人を送り込むべきだと思う。

金融改革を個人のキャリアに紐づけると

将来的には、上記の①〜⑥に貢献できる人間が生命保険会社で重宝される存在になるだろう。(今の私のキャリアだと④⑤か)

既存の大手生命保険会社は、長い歴史の中で積み重ねた信頼と、金融庁からの認可を活かして、非金融事業者の黒子に徹するというのはかなり実現可能性が高そうだ。

この辺りの動向は、業界の人間として引き続きウォッチしてゆきたい。




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