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精子に問題があると言われた話

プロフにも書いている通り私達夫婦には長らく子供がおりませんでした。

結婚して通常の夫婦生活を送っているものの結果がついてこない感じです。

二、三年たったある日妻が言いました。

「不妊治療をしたい。自分が妊娠できる体なのか確認して、必要なら治療したい」

不妊治療?そんな大げさな。と言うのが私の最初の正直な感想でした。

まあ本人の好きなようにすれば良いかと思いまして「良いんじゃないかな」と回答。

妻の不妊治療クリニックの通院が始まりました。

おまえが原因だ

色々調べてタイミング療法とかホルモン剤とか治療が始まりましたが何ヶ月しても妊娠しません。

ある日の通院後、奥様の体以外にも念のため旦那さんの精子の状態も確認しましょうという話を妻が持って帰ってきました。

「精子の状態ねぇ。。。」

まあ確かに妊娠は女性だけでは成立しないことだし、50:50の割合で男性側にも原因があると考えるのは当然か。

まあ俺の精子には何の問題もないだろ。ちゃんとやることやれてるし。

「分かったー」と二つ返事でサンプルを提供した。

帰ってきた結果は決して良いものでは無かった。

まるで

「今まであんたの奥さんが妊娠しなかったのはお前が原因だったんだよ。お前は自分には問題がない、問題があるのは妻の体の方だ、俺は悪くないと思ってただろう。どう責任をとるつもりだ?」

と数人に囲まれて詰問されたような気分でした。

「痛み」として分かった言葉

精子の検査の結果はスコアで表されます。奇形率、運動率、そもそもの精子の数などいくつかの項目が個別に表示されます。

まあどれも良いとは言えない、落第レベルの精子たちでございました。

妻からは

「その日の体調とか、心の状態にも影響されるらしいから今日の結果が全てじゃないんだって」

とかそんなニュアンスのことを言われたような気がします。

「なんか、ごめん。」

責められた気がしてとりあえずの謝罪の言葉しか出てきませんでした。

何というか試験に落ちたというか、お前は人としてダメなんだと言われたような、誰に何を謝ったら良いのか、そもそもこの結果は誰かに謝ることなのか?など色々な気持ちが胸に押し寄せ半ば放心状態でした。

次のサンプル提供もはっきり言って気が重い。

どうせすぐにスコアは回復しないのだろうし、メンタルが影響するということであるなら気が重いという状態もスコアにはよくないのだろう。

「心の持ちようだよ」
「栄養状態だよ」
「サプリメント飲んだら?」
「そんな親のところに子供は来ないよ」
「電子レンジで調理したものは食べちゃダメだよ」などなど

不妊で悩む女性に良かれと思ってかけられる言葉の数々。僕は女性ではないので当事者ほどの痛みは感じないまでも酷い言葉だなぁ、とは感じていました。

しかし、明らかに妊娠の成功率を下げている自分の精子のスコアの悪さを目の当たりにしたときそれらの言葉を「痛み」として感じました。

これはとても痛い。

男性側にも原因があるというのは知っていましたし、精子の検査に協力的でないパートナーがいるという話もよく聞きます。

自分に問題がないと思ってるから、また自分に問題があると分かったら怖いからというのも協力的でない理由なのだと思います。

私もできることなら知りたくなかった。種としての人間として致命的な欠陥を指摘されたようなそんな気分。

誰だって知りたくないし、考えたくない。

あれから5年は経過していますがこの記事を書くにあたって色々思い出しても暗い気持ちになります。

正直に言えば心に傷跡として残っています。

とは言え不妊にまつわる苦しみ悲しみ痛みを女性だけが味わうのも何だか違うとも感じます。

世界的に見れば、恐らく日本でも、どちらかと言えば不妊にまつわる事柄においては女性の方が辛い目にあっているとは思います。

が、男性は男性で「精子に問題があります」と言われたら結構ダメージあります。僕はありました。

きちんと落ち込もう

この記事を読んだ方の中には同じ思いをした男性も、また女性もおられると思います。

この思いをしないに越したことはありません。しかしこの後それを経験するかもしれない人、今まさに落ち込んでる人にこの記事が届けば良いなと思います。

何の慰めにもなりませんが、少なくとも僕は落ち込みました。

あなたの心が弱いとか、そんなんじゃありません。

あなたは一人じゃありません。

少なくとも僕はあなたと同じ思いをしました。

まあ今は傷の舐め合いでも良いじゃないですか。

そんな常に前を向いてとかポジティブでい続けられるような立派な人間ばっかりじゃないですよ。

ちゃんと落ち込みましょう。

そこからまた考えましょ。

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