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「能力」の生きづらさをほぐす、明るいお悩み相談室へ行った話

能力の呪いに強い違和感を感じながらも、自分自身が憑りつかれていたことに気づいて、少し解放できた本。
【「能力」の生きづらさをほぐす】

著者 勅使川原真衣「能力の生きづらさをほぐす」

その昔、仕事でうまくいかないことが多くて「きっとこれは、●●力が足りないからだ!」とその力が身に付きそうな所へ学びに行く・・・というのをよくやっていました。
しかし。
やってもやってもうまくいかない。辛い。
という何の我慢大会か修行かわからないような状況が続いて、結局自分が何をしたいのか分からず、色々とモヤっていたことがありました。

また当時大学を取り巻く社会背景についても仕事として関わりながら「なんか違う」違和感を感じる場面に出会うことが多かったです。
今も明確な解は無いけど、そのヒントになって呪いが解けた1冊がこの本。

昨夜は著者の勅使川原真衣さんを迎えてイベントを開催される、天王寺のスタンダードブックストアへ。
お店に入る入口で、自分に続いて入ってきたのが勅使川原さんご本人!
勝手に運命の出会いと思いました(笑)

今回のイベントはスタンダードブックストアの店主、中川さんと勅使河原さんがイベント参加者から募った悩みに二人で答えていく「明るいお悩み相談室」。お二人の掛け合いがタイトル通り明るく、楽しかったです。
紹介された悩みは最初から最後まで、全てのお悩みがグサグサ刺さるくらい身に覚えがあり(笑)それぞれの悩みに対して出てきたお二人のコメントに、ロックのライブか!というくらいヘッドバンキング(のような頷き)の嵐でした。

ここでは、イベントで取り上げられたお悩みへのコメントから一部ピックアップしてみます。

役割をプレイする

仕事において、そうしたほうが上手くいくなら。
自分の役割をプレイしても良い。

勅使河原さんのコメントでこんな風なものがありました。
聴きながら、過去に意識もせずに役割をプレイすることがあったかもしれない。これはもしかしてわたしの得意技?!

直感的な思いつきですが、どこまで役割をプレイすることを許容できるのかは、もしかしたらエドガー・シャインの「キャリア・サバイバル」の考え方も活かせるのかもしれない、と思いました。

みんな一生懸命

どの人も一生懸命だけど、その方向が違うだけ。

わたしも上手くいかなさ過ぎて途方に暮れた時にふと同じような思ったことがあります。
「みんな、自分の幸せに向かって進もうとしている。(何が幸せかとか進み方や速さはそれぞれ違うけど)」
その時は、そう思い至ったもののまだモヤモヤしていましたが、今は納得。
もちろん、分かり合えない時にはいきなり諦めずに対話するのも大切。

能力の差ではなく、それぞれが「知っていること」と「知らないこと」との差である

能力の有無という話題が出てきた時に、実は「能力」と読んでいるものがとても曖昧であること。
これは本を最初に読んだ時に「そういうことだったか!」と、衝撃を受けたことでもあります。
とはいえ、つい「知らない」と言い損ねたまま話は進み、そのままジワジワと事態が変な方向へ行ってしまうこともよくあること。

少し逸れますが、能力についていうと、わたしも大学の授業で紹介することのある経団連のアンケートにあがる「大卒者に期待する能力、資質」

色々な能力や資質を期待されているのだけれど、ここであがっている能力や資質を「全て持ち合わせた人を探す、養成する」ということを多くの採用現場で「なんとなく」やろうとしている、という勅使川原さんの話はこれまでの経験からも感じていたなと思いました。

またイベントや著書でも紹介されていた、教育基本法の第一条「教育の目的」でもこのように書かれています。

教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。

教育基本法(教育の目的)第一条

全ての資質、能力を一人の人に求めようとすることは採用現場が悪い、云々ではなく。もしかしたら、この条文が人々の間でじわじわと浸透しているからなのかも?とも。

企業の方にももちろんオススメだし、ぜひ教育に携わる教員にも、職員にも読んでもらえたらと思いました。

わたしも本を読んで分かってはいても、いつまでも未完であることに囚われてしまいそうになること。
自分へのリマインドも込めて、先日担当する授業で「自立する、ということは自分のできないこと、苦手なことを他の人に助けてもらう、相談することができる、ということ」といった話もしました。

勅使川原さんご自身もお話されていたのですが、勅使川原さんは能力の存在を否定しているわけでなく、現代社会での能力の取り扱い方について問いを投げかけていて、きっと色々な方にとって違和感、うまく言えないモヤモヤだったことが明文化されたということかなと思います。
わたしはそうでした。

教育社会学という分野でこういう話題を取り上げていたこともこの本で初めて知ったし、自分が能力至上主義に陥っているのではないか?と確認のためにも時々読み返そうと思います。

会場がスタンダードブックストアだったのも今回嬉しかったし、これは行かねば!と勝手に運命を感じた要素のひとつ。

心斎橋にお店が有った頃、未知の本との出会いが楽しみで時々行っていたスタンダードブックストア。天王寺に移ってから行ったのは初めてでしたが、相変わらずのエッジの利いたラインナップでした。
中川さんがなんとも温かみのある方で、中川さんのお話も伺ってみたくなります。1階にあるカフェにも行ってみたい。

そしてこの本の出版社 ”どく社” の方もいらしていて、どく社の方のお話もお聴きしてみたかったけど、話すきっかけと勇気が無く・・・
今度までに話しかけられるようにしたい!とも思ったのでした。


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