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本「PHP2024年1月号」より抜粋


PHP202401

<重岡大毅(俳優、タレント)>

直感を信じてチャレンジする
  悔いのないように心がけているのは、自分に正直になること。誰々がこう言っているとか、誰々はこうだからというのは、あまり気にしないようにしています。それよりも自分の直感を信じますね。
 うまく説明できないですが、「これ、なんかいやだな」「これ、いいかも」というなんとなく感じられるものってあるじゃないですか。物事を決断する際は、そういう直感に従います。
 だから、後悔することはないです。何かをしてもしなくても、そのとき考えたベストチョイスですから。
 もう一つ、僕が後悔しない理由として、「100パーセントを目指さない」ことがあるかもしれません。以前は何をやるにも完璧を目指して肩に力が入っていたと自分でも思いますが、今は完璧じゃないほうが人間味があっていいなと、周りの人たちを見ていて思うんです。完璧に見える人でも、失敗したり悩んだりしている。大人になるにつれ、そんな姿のほうが魅力的に見えるようになりました。
 だから、失敗は決してマイナスなことではないし、無駄でもない。僕にとって無駄だった経験は一つもないし、経験はすべて自分の力に変わると考えています。だから、「後悔することはない」と言えるのかもしれませんね。

怖くてもやるしかない
 何か新しいことにチャレンジするときは、もちろん「失敗したらどうしよう」と思いますが、「じゃあ、やめておこう」とは絶対になりません。とくに仕事に関しては、やるしかない。
 これまでまったく経験のないことでも、「こいつならやれるだろう」と思って仕事をくださるわけですから、「怖いけど、やっぱり飛び込んでみよう」と思えます。
 最近気がついたんですが、そういうときのヒリヒリ感を楽しんでいるところはあるかもしれません。

<上村愛子(元フリースタイルスキー女子モーグル日本代表)>

  ただ、それまでは単純に「楽しい、おもしろい」という気持ちで滑っていたのが、周囲の期待が大きくなるにつれ、プレッシャーを感じるようになりました。なかなか思うような結果を出すことができない時期が続いて苦しんだこともありました。
 でも、「ダメかもしれないけど、がんばろう」という気持ちになったことは一度もありません。「いつかは金メダル」という強い思いでいました。

  モーグルは場所やコースによって雪質やコースの固さが変わりますし、毎回滑るたびに天気や気温も変わります。そういう状況の中で、いかに納得のいく滑りをし、なおかつ高い評価を得るにはどうすればいいのか。そのためのトレーニングの仕方、食事、メンタル面のコントロールなど、パズルのピースを一つひとつ集めてつなぎ合わせていく感覚が、とてもおもしろかった。それがモーグルをやめなかった大きな理由だったのではないかと思います。

  競技当日は、自分のすべてをかけ、納得のいく滑りができました。だから、負け惜しみでも何でもなく、「やりきった」と思えたのです。結果は四位で、あと一歩というところでまたしてもメダルには届きませんでしたが、自分で考え、自分の体と心を作り、技を作ってきて「ようやく最後にオリンピックで戦える選手になれた」という喜びが大きかったのだと思います。

<清水潔(ジャーナリスト)>

選んだ道で、力を尽くす
  起きていたかもしれない事件・事故を食い止めるという、証明不可能な仕事をするのが、ジャーナリストです。失敗が許されない難しい報道をしようと思えば、完璧を求め続けるしかないんです。
 絶対に後悔したくないからこそ、常に一五〇パーセントの準備をしてきました。撮影のときは、カメラがどう壊れても対応できるよう、あらゆる予備を持参します。取材の仕方も現行の出し方も、これがダメならこうやろう、と何重にも防御する。

  不退転の覚悟で取り組めば、どんな経験も後悔にはならない。そのことを知っていますから。

<金澤美冬(ライフキャリアコンサルタント)>

  よっぽど強い思いがなければ、「何かをやりたい」と言う資格さえないと思い込んでいる人、ひたすらインプットするのに、失敗を恐れて結局行動に移さない人も多い。そういう方には、「やりたいかも」とか「好きかも」という程度のことでいい、まずはやってみましょうとお伝えします。
 会社員の働き方と、定年後のライフキャリアの開拓方法は別物です。やってみなければ、自分が本当に好きなのかがわからないし、それが社会から求められているものかもわかりません。
 やってみて違うと思えば、また別のことをすればいい。「三つのうち一つに芽が出ればいい」というぐらいのスタンスで試すと、失敗のダメージも少なくなります。

  やりたいこととの相性や、それが社会から求められているかは、すぐにはわかりません。始めてから仕事になるまでに少なくとも半年以上はかかるので、お試し期間を含めて準備期間は三年あると安心です。

  定年後に何をやればいいか見当もつかないという方におすすめなのは、興味のある学びや資格の講座に参加する事。友人づくりのコミュニティの門を叩くのは気恥ずかしい人も、学びの名目があると入りやすい。関心のあることを学んでいるうちに、自然と知り合いができていた、というのはいいですよね。

  定年後に後悔なく生きている人を見てるなかで、共通していることがあります。それは価値観が次々と更新される時代、他人の意見に耳を傾け、学ぼうとする姿勢があることです。「また、「○○だからできない」と言わない方ばかりです。居住地や情報の少なさなど、みずからの置かれた状況を言い訳にせず、一つひとつ前向きに克服していく人が幸せになっています。

<築山節(医学博士)>

後悔や悔い→過去にとらわれている苦痛を伴った認知的な思考
→「あんなことしなければよかった」「あれをしておけばよかった」
→怒り、不安、恐怖、悲しみなどのネガティブな感情の一種
→一般的に、もっとも経験することの多い感情

二種類の後悔
経験による後悔→してしまったことについての後悔
→「~しなければよかった」
→自分の意思決定によって生じた結果を、実際とは異なるよい結果を想像
→「もし……だったら」とかんがえて生じるネガティブな感情
→感情的衝撃も大きい
予期的後悔→未来の失敗を回避しようとする後悔
→「~という行動を取ったら、~のような後悔をするだろう」
→後悔の量を最小化するように意思決定に作用
→結果として、リスクを回避する選択につながる

後悔→後知恵バイアス(注:バイアス=認知の歪みや偏り)
→何らかの出来事や物事の結果について、最初から予見できたのにそうしなかったのではないかと考えてしまう

後知恵バイアスに陥らない五つの対策
①     物事がうまくいくかいかないかには、自分たちではどうにもできない「運」の要素が含まれている
→誰もコントロールできない要素
→割り切る
②    物事の結果よりも、そのプロセスに目を向ける
→偶然の結果よりも、期待通りのプロセスを経たかどうかのほうが重要
③     うまくいくかどうか
確率で考える
→客観的に評価しやくなる
④    失敗につながる要素が残っている
→それを前提に改善を積み重ねる
⑤     他者の評価は、しょせん他者の評価
成功に向けて自ら努力する方が大切

後悔を解消するための自分自身への三つの質問
①     いつも考えつくしてきたか?
→ゴール地点をイメージする
→始まりと途中のプロセスを重点的に考える
→うまくいくかどうか、客観的、確率的要素はどうか
→うまくいくために必要なものは、すべて揃っているか
②     考えの幅が狭くなっていないか?
→年齢に伴う行動半径の狭さ、行動自体の減少
→情報量の減少
→考える時間は長くなる
→意識して情報を集め、脳活動を高める
③     考えることが億劫になっていないか?(生活リズムの安定
→疲労が蓄積
→生活リズムを崩さない
→毎朝の起床時間を一時間以上ずらさない
→適度な睡眠時間を確保する

また、ボーッとしている時間を作る
→一日の中では、考えが纏まらない時間も必要
→その間も、考えていたことは一時的にでも記録しておく

一人で迷わず、周りに聞いてみる
判断に迷うことがあったら、一人で悩まないで、周りに聞いてみることだよ。経験を積み重ねていくうちに、相談のできる、的確な意見をもらえる先生に、たくさん出会うだろう。すると、今悩んでいることの解決策も見つかるはずだ。大切なのは、自分のわかっているところと、わからないところをまとめておくこと

 本や文献を読んでも理解できないとき、疑問点が解決できないときには、筆者の先生を訪問して教えていただいたり、手術を見せていただいたりもしました。
 お互いの意見がまとまらないときには、相違点も記録していました。このようにして、わからないこと、疑問の残ったことは考え続けるようにしていました。いつでも自分の意見が言えるように、自分の意思決定ができるように、常に情報を集めて、整理しておくことが大切です。
とはいえ、ときには自分で決められないこともあります。そんなときは、結論を性急に求めず、答えのない不確実さや不思議さ、懐疑の中に置かれていても、自分の考えを深めていく、「耐える力」が自分自身を鍛える意味で大切です。

 後悔を経験する場面は、自分には知識がないと自覚させられる場面でもあります。そして、感情のコントロールを鍛えられる機会でもあります。大切で貴重な機械と考えて、正確に理解する習慣を持ちましょう。

理性の中枢でもある大脳の前頭葉が、安定的に活動できるように、先に述べた「生活リズムの安定」に加えて、以下の二つの心がけることをおすすめします。
①     ネガティブな感情が生じる、後悔する場面に直面
→その後に適度な運動する時間を作ること
→運動は、感情のコントロールに有効です
→理性的な判断ができるように、十分間歩いてみましょう
→気持ちの落ち着きを感じることができると思います。
②     体が不健康な状態では、脳も理性的に正しく活動できません。
→自分の体の状態を知るために、健康診断は毎年必ず受けるようにしましょう。

<皆川博子(作家)>

押しつけられた常識に反発する

弱い存在だからこそ、踏みにじられる者たちの気持ちがわかるのではないか?

強い者にはみえないもの、見落としているものが、弱い者には見えるのではないか?

<裏表紙>

…私たちは与えられた問いに答えるばかりの人生を歩んできた感がある。
 それが悪いわけではないけれど、そんな人生にどっぷりと浸かっている今だからこそ、みずから問う、みずからへも問う姿勢が必要ではないだろうか。
 問えばたくさんの意義が現れる。知るために問うのはもちろん、それが理解を深め、考えを究める。
 またみずからを解放するためにも、問うことは重要だ。やりたいことを忘れずに、やるべきことばかりに左右されないように、本当の自分とはいったい何者なのだろう?
 人生の主役は自分。そうあるために、答えると同時に問うことを怠ってはならない。

<この本を読んで思ったこと>

悔いのない人生を歩めたならばどれ程幸せなのだろう?
私と言えば、色々と後悔する人生を歩んでいる。
後悔先に立たず。
予見能力の低さ故なのだろうか?
自分自身の直感を信じ切れなかったことが原因なのだろうか?
事前の準備が不足していたからだろうか?
周囲の意見に自分自身が流されたからだろうか?
それらも運が悪かったと割り切ってしまえばそれまでだ。
色々と、その後悔を回避する予兆は幾重にも存在した。
けれど、そのサインを軽視してしまい、後悔する事態を回避できなかったのもまた事実だ。
今まで経験してきた後悔をこれから経験しないように生かしていくしかないのだ。
新たな後悔にも遭遇するかもしれない。
しかし、怖くても進むしかないのだ。
後戻りはできない。
時間を遡ることはできないからだ。
人は前に進むことしかできないのだ。
時間の経過(=世間の変化)に取り残されないように歩んで行くしかない。

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