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江戸時代の歩き方の再現(3)

腕の動かし方

江戸時代の歩き方を再現しようとすると

腕はどうしているのか?


この疑問にぶつかります。

歩いている人の浮世絵

歩く人の浮世絵

浮世絵では、現代の歩き方の様に手を前後に振っている人はいません。
特に女性は着物の裾を押さえて歩く人が多いですし、
男性でも荷物を持っている絵が多く、手ぶらの時の動きは、なかなか読み取れません。

また、江戸末期の外国人の記録にも、歩いているときの手の動きに注目した記録は見当たりません。

数少ない手ぶらで歩いている浮世絵が、こちら

菱川師宣 吉原の躰(国会図書館 蔵)


これで見ると
手は下に下ろしていて、左右の腕の前後の位置はほぼ同じです。
袖口を持って歩いている女性も、手を振っているような感じではありません。

おそらく、
江戸時代には、歩く時前後に手を振ることは無かったものと思われます。

そこで、私自身、手を振らないように腕を脱力して歩いてみました。

そうすると、わずかな動きですが、肩が動いているのに気が付きました。
その時の動きは、
右足が後ろ、左足が前に来た時、左肩が後ろに引かれるように動きます。
その時、右肩は胴体を回り込んで前に出てくる感じでした。

あれ?と思って、肩に力を入れて動かさないようにするとどうも歩きにくい。
脱力していると、身体が勝手にバランスを取ろうとする結果、腕を振らなくても肩が自然と動くみたいです。
たぶん、江戸時代の人々も、あえて手を振らなくても肩を自然と動かしてバランスを取っていたのではないかと思われます。

さて、その肩の動きに腕を連動させるとどうなるのでしょうか?

左足を前に出して左肩が後ろに引かれる時、左ひじが後ろに下がりながら曲がり、手のひらが上を向くように力が働いているのを感じました。それはちょうど、左腕全体を肩から外側に回す(外旋)動きでした。
その時の右腕ですが、腕が下に伸びて、手のひらが後ろを向くように力が働くのを感じました。それはちょうど、右腕全体を肩から内側に回す(内旋)動きでした。

この腕の動き、つまりは腕の外旋・内旋を意識的に行うと、足~胴体~腕の連動がうまくつながり歩くことができました。
その歩きは、左足を前に出した時、左腕が外旋しながら手が前に出て、
右腕がまっすぐ下に下りていて、右足は後ろにある。
まさにナンバ歩きで言われる「同じ側の手足が前に出る」状態だったのです。

この歩きを行った後、比較のため現代の方法で歩いてみました。
するとなんだか、江戸時代の歩き方と比べて、胴体の動きがまるで止まっているみたいに感じられました。改めてナンバ歩きをしてみると、胴体も含めた体全体が足となって動いているみたいでした。
おそらく、現代の歩き方では手と足で左右の動きが異なるために、胴体はねじれるだけで歩きに参加していないですが、江戸時代のナンバ歩きでは、手と足で左右の動きが一緒なので、胴体も含めた身体全体が同調して動いて歩きに参加しているのだと思います。しかも胴体をねじらないので、着物を着ていても合わせがずれる心配がずっと少なくなります。

まとめると、以下の写真のようになります。

江戸時代の歩き方 ナンバ歩きの動き

前に出すときは外旋、後ろに下がるときは内旋

この動きが江戸時代の歩き方、つまりはナンバ歩きの基本になります。


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