江戸イット[Edit]

人生はまだ、編集の途中。 note限定の短編小説を書いています。

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最近の記事

薄氷の空に

雲の流れ、湖の波の流れ、 木々が揺れるリズム、西の空に沈みゆく夕陽。 タイムラプスを待つ間に読んだ小説のページをめくるスピード。 そのどれもが時の流れを表していて、時間の意味を再定義している。 1日は24時間で、90年生きたとして人の人生は79万時間で、 それは紛れもない事実なのだけれど、 "仮に"今目の前に見える時の流れを軸に生きたとしたら、 人生はどのように移ろい、どのように歳をとっていくのだろう。 ── そんなことを考えている間にも、 眼前に広がる山々

    • 村上春樹風雨宿り

      雨 予感はしていたが、やっぱりそうか。 僕は諦めたようにバッと傘を開き、豪雨の中を歩き始めた。雨は点から線に変わり、みるみるうちにその表情を変えていく。 怒っているかのように強く地面を叩きつけるように降り続ける雨。ただ仮にも雨だ、怒っていると言うよりは泣いていると表現した方が正しいのかも知れない。 その時の僕がそんな事を考える余裕があったかどうかは想像にお任せするとして、とにかく雨は強く降り頻る。点から線へ、やがて視界を遮るほど強く降り続けた。 そんな雨とも滝ともわ

      • 猛者たちの狩り場

        赤坂の夜の街は、コロナ前の、あるいはそれ以上の活気を取り戻し賑わいを見せていた。 ザ・センチュリオンホテル クラシックという、仮に単語をどれか一つ抜いたところで、名前として成立してしまいそうなホテルの一階にそのバーはあった。 バーの外に置かれたハイテーブル、それを囲む某広告代理店のような人達、その前を行き交う多様な個性を持った多国籍なキャッチの人達。 それらが、赤坂の中心はここだと言わんばかりに主張し合い、それは少し異様に見えた。 店内に入り店員と目が合い、人差し指を立

        • 麒麟の唄

          夏から秋に移り変わる空の表情。 昔から今に作り替えられていく街並み。 平成から令和に移り変わる時代を共に過ごしたこの街は、 いつか"僕の街"から"誰かの街"へと姿を変え、親しみも感じなくなってしまうのだろうか。 そんな独り言を他所にキリンは佇む、未来の片鱗を上から見下ろしながら。 Copyright © 2022 江戸イット(Edit) All Rights Reserved.

          とある真夏の日に

          朝早くの便だったせいか、乗客のほとんどが心地よい眠りに誘われる中、着陸を知らせる機内アナウンスの声で目が覚めた。 成田空港に着くや否や、けたたましく鳴り響く蝉の鳴き声が聞こえた。 無機質なプラットフォームに再生され続けるその音が、今が真夏の真っ最中であることを思い出させてくれる。 ショルダーバッグをかけたすらっとした体格の男性の寝癖を目印に、流れる人混みに混じり第二ターミナルを目指す。 同じように吸い込まれていく男女がすぐうしろの方で、北海道に蝉はいるか? いたとして

          とある真夏の日に