見出し画像

コタキ兄弟と四苦八苦 「六、世間縛苦」

常識は良い面もあるし、悪い面もあると思います。良かれと思ってアドバイスしたことが、人に取って価値観の押しつけになってしまったら・・
そんなことを考えながら、常識のぶつかり合いを中心として会話を書き起こしました。

ひょんなきっかけでレンタル親父を始めることになった二人の兄弟のドラマです。

レンタル兄弟親父に、急遽ホームパーティのゲストとしてレンタルされることになったのだが、突然のことで兄の予定が合わず弟一人で出向くことに・・

最初は舞い上がっていた弟の二路だったが、別居中の妻「ユカ」の登場で怪しい雰囲気に・・

ジロ 「うちはさ、奥さんが働いってから俺が主夫だから毎晩夜泣きに付き合ってミルクも離乳食も全部やった。
毎日弁当を作って父母参観もPTAも学芸会の衣装だって下手くそだけど作ったよ。
だから俺は  娘が1年から6年までどんな役をやって、何を歌ったかも全部言える。
全部一緒に練習したもん、俺は。 俺はね 俺は昔っから  どんな仕事も続いたことはない。
社会不適応のクズ親父だけど、 どう言うわけか娘は立派に育ってるよ。
パパちゃんがろくでなしの分 もうしっかりしてくれちゃって。 
俺は感謝してんだ、ここまで元気に大きくなったこと。
神様とか信じねぇけど、これだけは天に向かってありがとうって思ってんだよ。 」


(ジロ 心の声) まさか 初めてのソロ活動でこんなことになるとは・・

ジロ 「俺史上 ねっ 俺史上 レンタル親父史上 最高にいい仕事 タワマンには天国があった!」

「天国もらいました」

「あ〜ワインおかわり、あ すみません」

「わたしたち社会勉強として普段出会わないような人を順番にゲストで呼んでるんです」

ジロ 「それでレンタル親父? 良いチョイス〜」

「来てくれて良かった〜 予定していた人が急に来られなくなって」

ジロ 「どんな人?」

「ダメ 絶対の会です」

ジロ 「それ 何のプロ?」

「覚醒剤から足を洗った人」

「どうして薬に手をそめてしまったのか。 偏見を捨て直接話を聞くことで見えることがあるんじゃないか」

「こういうアットホームな雰囲気なら話せることもあるでしょ」

ジロ 「え? アットホーム?」

「アットホーム」

ジロ 「ナイスアットホーム! ナイホーム!」

- 乾杯する

「飲んで飲んで飲んで」

ジロ 「いただきます」

ジロ 「依頼人の8割は女。兄貴がさ、女方面にうといから そういうときは 俺が さっと懐に入って、ニーズに応えて任務完了。それで時給1000円 だから今日は6000円 」

「うわ いい商売だなぁ」

ジロ 「俺もびっくり」

「じゃあ2時間レンタルだから12000円かぁ」

ジロ 「あざ〜〜す」

「もう一人来るから 14000円」

「ああ そうだ」

ジロ 「何人でもどうぞ。 100人来たら100万円」

「100人なら10万円です」

ジロ「あれ 計算できないのばれた」

- 別居中の妻 「ユカ」が登場

ユカ「あれ、やけに盛り上がってない?」

「ゲストが面白くて」

ユカ「そうなんだ」

「ゆかちゃ〜ん」

「みんな久しぶり」

「ゲストのレンタル親父。いつもはお兄さんとコンビで、 今日は急遽お願いしたから一人だけ」

「どうもレンタル兄弟おやじの弟です」

「何固まってるんだよ」

「ゆかの好みだったりして」

「え〜」

ジロ 「いや、実はおれたち。。」

- かぶせるように大声で

ユカ 「はじめまして、中学校の教諭をやっております「ゆか」と申します。瑠璃子さんと男性陣とは大学のゼミが一緒で、男性陣の奥様たちとは以前お会いしたことがあります。」

「なんで説明してんの」

「まじめか!」

「ゆかちゃん 昔からそうだったんじゃん」

「ま、まぁ とりあえずさ 座ろうよ」

「そ そうね コート預かる」

「グラス グラス」

「ユカ、グラス お願いしま〜す」

「ねぇ あれどうなった 例の無職の旦那」

「ああ ロクでもないって噂の」

「離婚したんじゃなかったっけ?」

「え、まだだっけ」

「秒読みか」

「何それ聞きたい」

ユカ 「あんまり面白い話でも」

「まぁ、飲みながらゆっくり(話を)聞いてあげる」

「子供がいて無職って父親の自覚なさすぎるだろ。 ユカの男の趣味ないわぁ」

ユカ 「でもね 私は仕事続けたかったし 私が働いてジロ・・夫が家事と子育てっていう分業でいいかなって」

「教育上よくないだろ働かない父親なんて」

「俺もそこは気になる。社会不適応者のもとで子供がどう育つのか」

ユカ 「社会・・不適応・・」

「え? 違うの?」

ユカ 「ちがくはないかな」(乾いた笑)

「不安定な仕事で食べていけるんですか」

ジロ 「ボチボチ」

「結婚したいとか思わないの?」

ジロ 「何で俺が結婚してないって思った? 」

「ああ ごめん。 してるんだ」

「マジで 奥さん心広いなぁ」

「奥さん 何してる人なんですか」

ジロ 「いい女だよ。誰が見ても 俺にとっても もう娘も 「めっかわ」! 超仲良し ハッピーラブラブ 」

「へ〜」「ラブラブだな」「ステキ」 (謎の拍手)

「老後の不安は? 貯金はある?」

ジロ 「ない ない もう何もない」

「すげぇな」「それで よくこんな仕事できますね」

ジロ 「まぁ ねぇ〜。他にできる仕事ないんで。 ハツハツハツ」

ユカ 「ねぇ もう話変えない?」

「なんでよ〜」

「探せばまともな仕事見つかると思いますよ」

「そうだよ トーク面白いし」

「あっ コンサル紹介してやれよ」

「いやいや・・」

ジロ 「あのさ あのさ、俺は今の俺に満足してるの ハッピー最高!」

「あなたは良くてもお子さんは? 説明しづらくないですか?」

ジロ 「じゃあ あんたは銀行の話を子供にしてんの? 今日はどこと取引して どこぞの会社の融資を引き上げて倒産させて 社長が首を括ったと言う話を子供にすんの?」

「いえ、そんな話は」

ジロ 「それからさっきユカの・・ そこにいるユカちゃんの無職の社会不適応者の父親の元で子供がどう育つのか疑問だってあんた言ったよな」

「はい」

ジロ 「意外と覚えてるんだよ。 学はねぇけど大事なことは忘れない。俺の娘がハイハイからタッチした日は生後11ヶ月の5月15日。つかまり立ち すっ飛ばして、いきなり立ち上がってトントントンと俺に向かって3歩歩いて、うわあってびっくりして泣いたよ。あんた子供がタッチした日は覚えてるか?」

「いいえ・・いや・・ それは・・いや・・」

ジロ 「うちはさ、奥さんが働いってから俺が主夫だから毎晩夜泣きに付き合ってミルクも離乳食も全部やった。毎日弁当を作って父母参観もPTAも学芸会の衣装だって下手くそだけど作ったよ。 だから俺は 娘が1年から6年までどんな役をやって、何を歌ったかも全部言える。全部一緒に練習したもん、俺は。 俺はね 俺は昔っから どんな仕事も続いたことはない。社会不適応のクズ親父だけど、 どう言うわけか娘は立派に育ってるよ。パパちゃんがろくでなしの分 もうしっかりしてくれちゃって。 俺は感謝してんだ、ここまで元気に大きくなったこと。神様とか信じねぇけど、これだけは天に向かってありがとうって思ってんだよ。 」

====
娘(ハナ)「いちばん いけなかったのは私なんだ。パパちゃんの事 友達にめっちゃ自慢してた。いつもうちにいて一緒に遊んでくれるって。小学校の時はみんな羨ましがってたのに、だんだん「そんなの変だ」って、「お父さんは働かなきゃいけないんだ。」 って。うちは、ダメな家族なんだって」
====

ジロ 「だから誰に何言われようが関係ねぇ。ひとつも恥ずかしい事ねぇもんよ。だから何でも言えるよ。あんたらの暇つぶしのネタいくらでも提供してやるよ 」

ユカ 「もうやめて。みんな誤解してる。ジロウちゃんは父親失格じゃない。私よりよっぽど母性がある。家にいることより働くことを選んだのは私。ジロウちゃんは会社勤めに向いてない。だから うちはこれでいいの。これで良かったの。なのになんでみんな放っといてくれないの? 無職の旦那で大変ね。でもあなたは教師なんだから子供を教育する立場なんだから許しちゃダメ。私が旦那に言ってあげるから。言えないなら連れていらっしゃい! もちろん断った。でもクラスに何かあるたんびにやっぱりあなたには監督能力がない。まともな家庭を作れない母親に子供は任せられない。保護者もそう言ってる。 私の家と生徒指導にどんな相関が。 ナンセンスだと言っても通じない。文句言われないように頑張ってヘトヘトで家に帰ると 能天気な笑顔・・そこが好きだったのに・・イライラして 誰に何を言われようが関係ねぇって そう言って終わるなら私だって言いたいよ」
====
「いやぁ勉強になった。反省点は多々あるな」

「まぁね うん」

「そういえば レンタル親父っていうのがあるって 私ユカから聞いたんだった」

「え」

「お前さぁ」

「まさか旦那がやってると思わないでしょ。 ねぇ」

=== タワマンを見上げる二人

ジロ 「恐ろしい場所だったなぁ」

ユカ「二度と来ない」

ジロ 「友達じゃねぇの?」

ユカ「昔はね」



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?