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わたしの十年に一度の本:10歳未満編

noteをはじめてまだ間もないのですが、10月は10個以上投稿すると何かいいことがある…みたいですね。せっかくなので私も今月は投稿10を目指してみたいと思います。

それでね、中にはネタに困る…という人もいるかもしれないので、1つ提案させてください。以前facebookの読書のグループにいた時、『十年に一度の本』という企画を提案させてもらいました。自分の人生を、
10歳未満、10代、20代、30代…と10年で区切り、その中で1冊(1作品)だけ本を選びます。必ずしも『好き』でなくてもいいと思います。何かインパクトがあって自分の考え方が変わったとか、読書傾向が変わった…など何か衝撃を受けたり、あるいは今も変わらず好きでい続けるような本でもいいと思います。

幸福な王子

私が本を読む楽しさを知ったのは小学校2年生の時。そのころ学級文庫というシステムがあって、クラスメイトがそれぞれ自分の本を持ち寄って教室の後ろの本棚に収め、休み時間などに自由に読んでいいものでした。学級文庫の本を片っ端から読んでいき、最も印象に残ったのがオスカー・ワイルド幸福な王子でした。

講談社だか偕成社だかどこか大手の出版社が出している子ども向けのシリーズの一つだったように思います。タイトルも幸福な王子ではなく、『しあわせな王子』か『しあわせの王子』でした。表題作のほかにわがままな大男若き王星の子が収録されていました。他にも何か入っていたかもしれませんが、記憶にあるのはそれだけです。

きれい!

感想を一言で述べるとそうなります。それまで読んできたグリムやアンデルセンや小公女などとも違い、心を揺さぶられるものがありました。そして物語に美しさを感じたのです。当時は美しいという感覚は理解できてなかったでしょうから、その頃の自分のことばに訳すとやはりきれいな話となるでしょう。

上に上げた4つの物語の中ではわがままな大男だけはちょっと違いますが、『幸福な王子』、『若き王』、『星の子』、いずれも見た目の美しさに惑わされてはいけない、大切なものは見えない所にある。という、とても分かりやすい教訓が込められていました。

私は特に星の子の話が好きでした。誰からも愛される美しい容姿を持った男の子はわがままいっぱいにふるまうものの、最後は誰からも見放され醜いヒキガエルのような姿になってしまう…。どこか『ドリアン・グレイの肖像』を彷彿させる内容です。

人間とは愚かなもの

高校生になってからは『サロメ』や『ドリアン・グレイの肖像』の世界観にどっぷり浸かりました。ワイルドの作品は美しくて本当にうっとりさせられます。そして、見た目の魅力にとらわれてはいけない…と思いながらも、容姿端麗な人やお洒落が上手な人に魅力を感じてしまう自分がいます。

ワイルド自身も美しいサラ・ベルナール(女優)を推し活して、美しいダグラス卿(同性愛の相手と噂されてる人)に夢中になる。彼自身もめいっぱいお洒落した気障男だったようです。ワイルドのおかあさんも衰えた姿を人目にさらしたくなくて、年を取ってからは暗い部屋で過ごしていたようです。

星の王子様でないけど、大切なものは目に見えない。見た目に捉われるのは愚かなことだ。しかし人間とは愚かなもの。ワイルドは誰よりも美に捉われかつ自分の愚かさを痛感していたのでしょう。

上の写真の左側は、中学生のころに買った西村孝次訳の新潮文庫。いろいろな翻訳を読んでみましたが、これが一番、これを超えるものはない…と思っていましたが…光文社古典新訳文庫の小尾芙紗訳を読んだら、自分の中のランキングが変わりました。小尾さんの翻訳は本当に素晴らしいのですが、その話はまた別の機会に。

さて、あなたご自身の子どもの頃の本を一つ選ぶとしたら何になるでしょうか。思い出を手繰り寄せて考えてみてください。そして、その本の存在がわかったら是非、ハッシュタグに十年に一度の本とつけて投稿してみてください。楽しみにしています。



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