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日日是好日

にちにちこれこうじつ = 毎日がよい日(晴れの日も雨の日も・・・)

森下典子『日日是好日』(新潮文庫、2006年)

学生時代に茶道にのめり込んだ友人がいたのだが、形式ばった作法の素晴らしさをどれだけ聞かされても、何がいいのか私には全く理解できなかった。和菓子には苦味のある抹茶が似合うとは思うけれど、足が痺れてでも茶室に通いたい人の気持ちが知れなかった。この本を読むと、そんな私でも茶道の世界の魅力がなんとなくわかるような気がしてきたから不思議だ。

著者は『週刊朝日』連載のコラム「デキゴトロジー」の取材記者だったという。週刊誌を読む習慣がなかった私でも、このデキゴトロジーは(読み終えた友人から薦められて)愛読した記憶があるので、その筆力ゆえの賜物と思う。

20年程前のこの話題の書(初版は飛鳥新社より2002年出版)を私が今ごろ読んで感動しているので、「で、茶道やりたいと思った?」と家族に問われた。「いや、抹茶と和菓子はもっと自由に楽しみたい」と私。その証拠に、上の画像の茶碗は息子が校外学習で作ってきたご飯茶碗だし、茶筅も気まぐれにしか登場しない。それでも、坐禅に通じるような茶道の精神を想像できるようになったことが嬉しい。

 雨は、降りしきっていた。私は息づまるような感動の中に座っていた。
雨の日は、雨を聴く。雪の日は、雪を見る。夏には、暑さを、冬には、身の切れるような寒さを味わう。 ….. どんな日も、その日を思う存分味わう。
 お茶とは、そういう「生き方」なのだ。
 そうやって生きれば、人間はたとえ、まわりが「苦境」と呼ぶような事態に遭遇したとしても、その状況を楽しんで生きていけるかもしれないのだ。

『日日是好日』より引用

2018年に大森立嗣監督・脚本で映画化されたので、ご存知の方も多いはず。
梅雨どきの読書におすすめの1冊です。


たくさんのスキをありがとうございました🙏