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【分析】強くなるための練習をする方法~ARスポーツHADO編~

割引あり

 はじめまして、著者のすっすと申します。ARスポーツ「HADO」大好きおじさんです。
 この度、スポーツ分析の入門書を執筆し無料公開することにいたしました
。17000字程度の無料noteという形ですが、将来スポーツを続けていく中でデータ分析を自身の強みにしたい方はご一読ください。

#HADO Advent Calendar 2023に参加中。

 本編に入る前に少しだけスポーツとゲームについて説明させてください。どちらも「強くなるための練習」ができ、本編で触れるからです。

 スポーツは運動を楽しむこと全般を指す広い意味でのスポーツと、技術や能力の極限を目指す競技としてのスポーツがあります。
 ゲームは遊戯全般を指す広い意味でのゲームと、対戦を通じて勝敗を競うeスポーツとしてのゲームがあります。
 本書においてはスポーツなら競技スポーツ、ゲームならeスポーツを対象にします。
 その中でも私はHADOというスポーツに焦点を当てていきます。
 記事の中では基本的にHADOに当てはめて説明を進めていきますので、他の競技スポーツやeスポーツをやっている方はそちらに置き換えながら想像してみてください。

 どちらも技術を向上させるためには練習が必要ですが、練習に割ける時間が限られています。社会人の方ならなおさらです。
 楽しむためだけにプレイをしているうちは練習の内容は全く気になりません。しかしプレイ回数を重ねていると少しずつ欲が出てきて「どうしたらこの動きができるようになるんだろう」「この上手な人はどんな考え方で動いているんだろう」などと向上心が出てくるものです。
 限られた時間の中で上達し、更に競技スポーツ・eスポーツを楽しめるようになる方法を一緒に考えていきましょう。

 それでは、時間の制約と向上心の狭間で心苦しさを感じた時に、本編の内容がみなさんの助けになることを願っております。


本書の内容について

 本書は競技スポーツやeスポーツのプレイング向上に関する書籍です。
 要は「今よりもっと上手く勝つには」、という話ですね。
 様々な方法が考えられますが、本書では「分析」という観点から上達の方法と考え方をご紹介していきます。
 スポーツやゲームを上達させたい方は、一度お手に取ってみてください。

はじめに

 競技スポーツもeスポーツも、老若男女問わず平等に始めることができます。
 しかし20年以上生きていると誰もが実感しますが、始めた後の上達スピードは不平等です。
 理不尽とさえ言えます。
 自分が数カ月かけて習得した技術を、同じチームの後輩が数日で習得したりすることはザラにあります。

 こうした理不尽は、あなたが凡人で、後追いの人が天才だから起こるのでしょうか?
 いいえ、基本的にみなさんのほとんどは凡人です。稀に天から二物を授かりし天才が現れますが、一旦横に置きましょう。
 後輩も例外ではありません。才能の有無について触れるのはここで最後にしましょう。
 もっと核心に迫る理由があります。
 それはあなたががむしゃらに練習してきた期間の間に、後追いの人はどうすれば効率よく先達との差を埋められるのか、学んできたからです。
 つまり、技術習得のための分析をし、それを短期間で結果に結び付けたと言えるのです。

 本書ではアナリシス(分析)に注目し、私が愛するスポーツ「HADO」に当てはめて、アナリティクス(分析の方法論)へ触れていきます。
 なので各章では具体例(HADO)を交えながら説明を進めていきます。
 実践してみると道のりは遠いのですが、分析ができるようになると、あらゆる競技スポーツやeスポーツの楽しさが何倍にも膨れ上がります。
 また、各章の末尾ではその章の理解度促進を図るためにワークを用意しています。
 それらのワークを実践することで、各々が自分なりにできる分析を見出すことができます。

 それではここから順を追って一緒に成長していきましょう!

コラム:HADOって何?

 HADOとは、現実世界を舞台にエナジーボールを自らの手で放ち戦うスポーツです。
 頭と腕に専用のデバイスを身に着けて縦10m・横6mのコートの上に立ち、3対3で勝敗を競います。
 「エナジーボール」という攻撃用の魔法と、「シールド」という防御用の魔法を使い分けることができ、相手の身体の前に表示される「ライフ」という的に攻撃を当てると得点を取ることができます。

HADOのイメージ図(HADO公式より引用)

 私はHADOを長らくプレイし続けてきましたが、他の競技スポーツやeスポーツで例えることのできない、個性的なスポーツです。
 どう新しいのか触れる前に、まずは実際に体験した人の声をご覧ください。そちらでHADOのイメージを膨らませてから詳細に触れていった方がよりHADOがどのようなスポーツなのかイメージしやすいです。
※私が開いた体験会で聞いた声を要約します。

  • Aさん(色んなスポーツが好き)
    「HADOって外から見てるとドッジボールみたいだね!」

  • Bさん(サバゲ―が好き)
    「HADOとサバゲ―の作戦の立て方が似てる」

  • Cさん(オンラインゲームをよくする)
    「攻撃する時がFPSのエイムしてるみたいだった」

 数十人の人から聞いた話の中からいくつか印象深かったものをピックアップしました。
 HADOは競技スポーツ・eスポーツ両方の楽しさを味わうことができます。
 魔法の球を打つのは現実に存在する人間で、腕を振ることで魔法を打てますし、全身を使って避けることもできます。
 

1章 「がむしゃらに練習」の限界

 みなさんはどのような競技スポーツ・eスポーツをしているでしょうか。
 球技?格闘技?それともFPSやバトロワ系ですかね。
 みなさんが取り組んでいる競技スポーツ・eスポーツについて、以下の3つの質問を考えてみましょう。

  • 大会で優勝したことはありますか?

  • あなたの競技人生はどこをゴールに考えていますか?

  • 大会で少しでも勝ち進む/自己ベストを出すために何をしていますか?

 HADOの場合、普段の練習や、公認チームのみが出場できる公式大会に思いを馳せることになります。
 4年前…2019年の私のエピソードを例に上記の質問を考えてみます。

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 就職活動を終えて暇だった大学生の私は、旧Twitterで知人の誘いを受け、偶然HADOを始めました。
 大会経験はもちろんありませんし、HADOの経験も過去に1度体験しただけでした。
 当時のHADOは破格の賞金を設けている特殊な企画があり、「ランキング上位5人を連続で倒すと1000万円がもらえる」というものでした。
 倒す相手がHADO日本ランキング上位の人であることを知らなかった私は「全力でやり切るだけで1000万円もらえるかもしれないすごい企画だ!」と目を輝かせ、「この競技にフルコミットして1000万円を手に入れること」がゴールになりました。
 がむしゃらにアピールをすることで応募者百余名の中から通過し、残った数十名の中からのオーディションも通過し、数名の挑戦者にまでノミネートされました。
 オーディション後の練習は週に3回ほど会場を貸し出してもらうことができました。
 あとは限られた時間の中で精いっぱい練習すれば1000万円が獲得できる、そう思っていたのです。
 使える時間は全て使い練習を重ねましたが、結局私は相手を全員倒すことができず、企画の肥しとなったのでした。
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 このように、ふとしたきっかけで始めましたが、競技シーンに魅力を感じて勝負に臨むようになっていきました。しかし具体的にどうすれば勝負に勝つことができたのか、思いを馳せられていなかったのです。

 これはHADOに限った話ではありません。
 実は何となく練習している人が競技シーンの中には大勢います。そういった人たちと戦う緒戦に勝つために、がむしゃらに練習するアプローチは有効です。
 望む全ての成果(私の場合は1000万円を獲得することでした)は得られませんでしたが、練習頻度を増やし試合があるところに全て顔を出すようにすると、徐々に勝率が上がっていくことが実感できました。

 更に具体的に話しますと、チーム練習を限界まで増やし、出られる大会に全て出れば、ものすごい勢いでチームが強くなるし、優勝できるチャンスも多いです。
 そのため、HADO日本ランキングが爆速で向上していきます。

 しかし、練習及び大会への出場は、時間とお金と体力(リソース)が消費されていきます。
 みなさんはどこまでリソースを練習の対価として支払うことができるでしょうか。
 HADOの上手さが練習量のみで決まるのであれば、リソースを最も多く支払えた人・チームが大会で優勝することは必然です。
 つまり、「Pay to win」(≒がむしゃらに練習)の考え方に則ります。

 がむしゃらに練習をずっと続けることのできる人は何の問題もありませんが、そうでない人…具体的には、

  • 社会人(アルバイト/パート/正社員)

  • 学生(高校生/大学生/専門学生)

  • 肉体にトラブルを抱えてる人(怪我、虚弱、病気)

などについては、以下の4つの限界点にぶつかります。
 その際に感じる壁を乗り越えられず、競技から身を引く人が後を絶ちません。

限界点① 怪我のリスク

 練習を通じて、少しずつ身体が鍛えられていきますが、勝負で勝ちたいからといきなり練習頻度を増やすと、怪我をするリスクが上昇します。
 筋肉痛で済むのなら少し休めば大丈夫ですが、人体には回復が遅い部位として関節部や内臓などがあります。
 練習中の怪我は、疲労や不安定な姿勢によって、可動域を超えた運動をすることによって引き起こされることが多く、一度怪我をしてしまうと治療に数週間以上の時間を必要とすることもあります。

 怪我をしている間、自分の満足のいくような練習ができなくなってしまう。そこでブランクができてしまったり、新しい動きを模索して更に無茶と怪我を重ねてしまったりすることも考えられます。
 最終的に自分が望む実績を積めず、悔し涙と共に身を引くことになる人がいるのです。

限界点② 対価を出せなくなる

 人間は生きている限り消耗していきます。
 時間を使い、体力を使い、お金を使い日々を過ごしています。
 大会に出ることを見据えてHADOをする場合は、

  • 移動時間(ほとんどの人が片道30~60分です)

  • 交通費(概ね片道500円~1000円です)

  • 練習の時間(2時間することが多いです)

  • 練習の体力(一概に表現できないレベルで差異が大きいです)

  • コートレンタル費用(1時間当たり1200円~1300円くらいが相場です)

  • 外食費(作戦会議やトレーニング後のプロテイン補給に伴い)

  • 大会への参加費(隔週1回、ひとり2000円くらいになります)

  • 大会への参加時間(隔週1回、4時間くらいかかります)

がほぼ確実に必要です。
 週1回の練習をして隔週に1度の大会に出た場合の、月当たりの対価を集計してみますと、

  • ひと月に使う時間:{(移動30分x往復)x6回}+(練習2時間x4回)+(大会4時間x2回)+(作戦会議を週に1時間ほどx4週)=23時間

  • ひと月に使う体力:移動と練習と大会と、それぞれが終わった後のケア

  • ひと月に使うお金:{(移動500円x往復)x6回}+(練習2000円x4回)+(大会2000円x2回)+(作戦会議で食費1000円くらいx4週)=22000円

となります。
 週1の練習でも、人によっては無視できない大きさの対価となります。
 これが週3や4での練習になることや、スポーツ用具の購入など、上記のシミュレーションにない出費も考えられます。
 1ヵ月や半年であれば深く考えずに出費することもできますが、1年を超えたあたりで否が応でも費用対効果のようなものを感じることになります。

 練習量が大事なことは間違いないが、人によって支払える対価の感覚は異なります。
 その感覚と乖離した出費が続いた時に、志半ばであっても身を引くことになるのです。

限界点③ 練習効率が悪く伸び悩む

 がむしゃらに練習することで実力が上達しますが、人によってその速度が異なります。
 特に中級者レベルの実力を脱したあたりから差が顕著です。
 私は過去に十数回はHADOの体験イベントを開催し、100人くらいの初心者のHADO人生を見てきましたし、様々なHADO選手と練習もしてきましたが、おおむねHADOの上達速度には以下のような基準があると感じています。

  • 体験者(プレイ5試合…1日):HADOに登場する要素を認識した。

  • 初心者(プレイ50~100試合…5日くらい):HADOのプレイ方法を覚えた。

  • 脱初心者(プレイ250試合~500試合…60日くらい):自分の得意不得意な動きを把握した。

  • 中級者(プレイ500~2500試合…半年くらい):駆け引きや戦術を意識し始めた。

  • 脱中級者~(プレイ3000試合以上…1年以上):駆け引きや戦術を実践できる、高度な身体操作が求められる場合にも対応できる。

 体験者レベル~中級者レベルまでは概ね共通して上記のような速度で成長していきます。
 括弧書きの中は純粋なプレイ回数と時間です。週1回練習する人は5週間かけると初心者レベルになります。

 練習量をこなすことは上達の最低条件ではありますが、それを満たした上で練習の効率に大きな差があり、上位プレイヤーとして君臨する人と下位から上位へ上がれないプレイヤーとの分水嶺になっています。

 伸び悩んでいる自分の姿と、自分を追い抜いていく周囲を見ていく中で「自分には才能がない」「自分は向いていない」と判断して競技から身を引く人がいるのです。

限界点④ 気持ちがついてこなくなる

 端的にモチベーションが下がることで辞める人がいるということです。
 周囲から目視で確認することができない上に、これが理由で辞める方が一番多いです。
 事情は様々です。家庭の事情や仕事の転勤、結婚、生活苦、仲間との方向性の違いなど、人の数だけ原因があります。
 がむしゃらに練習するのは終わりのない長距離走みたいなものなので、走れなくなるとゴールが見えなくなり、モチベーションが低下してしまうのです。
 HADOにおいては、最初は楽しくてやっていたが、いつの間にかお金がモチベーションになっていたり、ライフステージの変化に伴ってガチ勢がエンジョイ勢になったり、その逆が発生したりします。
(私も何度かなりました)

 その結果、今まで何となくでやっていた練習をこなす気が薄れてしまい、競技から身を引くことになります。


まとめ 「がむしゃら」の限度は人それぞれ異なる

 がむしゃらに練習することに潜む4つの限界を説明しました。
 余力の大きい人ほど、がむしゃらに練習することを続けやすいですが、長い目で見ると大差ありません。
 4つのうちどれかが限界に達した時、がむしゃらに練習することはできなくなります。
 例えば「お金もやる気もあるが怪我で練習できない」「健康でお金と時間があるが、今いるチームに対して気持ちが離れてしまった。一緒にはもうやりたくない」などですね。

 強くあり続けるためには、実力の上達に対して支払う対価を小さくしていくことが望ましいのです。
 次の章からは分析を意識して、効率よく上達するための第一歩を踏み出します。


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