見出し画像

DAU.退行~完全ガイド~

DAU退行 キャラクター紹介と映画解説のほぼ完全版 

■■■■■■■■■■■■■■■■■■


「悪い夢は 悪いままにしておこう」
        -ウラジミール・アジッポ-


■■■■■■■■■■■■■■■■■■

資料として筆者がDAU退行みながら369分そのまま解説しているキャストです。
ご参考ください。

https://twitter.com/i/spaces/1OdKrzelZPlKX

まえがき。※世界各国の上映禁止と日本での上映過程を通して。


DAUとは、ノーベル物理学賞受賞の科学者 レフ・ランダウの通称「ダウ」からとった映画作品である。16作の映画作品と8作のテレビシリーズからなり、1938年~1968年までのダウを通して当時のソ連を描き出した。シリーズは現在、公式の配信にて11作品が見る事が可能でその他は随時配信予定である。

2019年パリで開催されたDAUシリーズの
インスレーション用展示館

(同じく演奏付き上映会。ガラガラである。)

研究所の名前は
「物理学と技術に関する研究所」
という名目で建設され、ダウはそこの主任研究者、所長、理事を研究所で行い住居も構えた。※実際のダウはこのような研究所にて生涯を送っておらず、フィクションである。

15作目にあたる DAU退行は6時間9分から成り立つ大作であり日本公開が世界初上映となった。その背景には、内容のグロテスクさ、倫理上の問題点がロシア政府から上映禁止となる過激なものであり、それは映画の中で示唆されている思想にもいたる所以である。表現の自由が保障されている日本において現在は上映禁止という措置はなくまたU-NEXTなどでは有料コンテンツとして配信を行っている。

(2021年11月23日
レイトショー上映されたDAU退行)

日本での上映はカルト化し観客動員もありネットでの評価も賛否両論である。絶賛もあればつもらない時間の無駄という意見がハッキリ分かれる作品で観客を選ぶ作品なのは間違いない。

ネガティブな印象をもつ本作であるが、実際にその内容は今後とも指摘されるような有害な部分も多く、一方でウクライナ進行に伴うロシア戦争を重ねてみる事も可能であり、価値観の多様性という意味では資料的価値もある。

そのような問題を抱えた本作はロシアでは上映禁止となり各媒体ではその過激な内容(赤ん坊を脳実験の被験者として扱ったり、豚の屠殺を長まわしで記録したりとした倫理上警告を受けるに値する)として撮影当時は時事問題に発展しロシアではセンセーショナルに取り上げられた。実際に諸外国でもその国独自の法律に抵触するため上映されない作品となった。(イギリスの特別上映では豚の屠殺をカットしたバージョンで公開されている等。)

日本では2021年8月28日の世界初の完全版の東京初上映から、映倫審査(R18+の映倫審査はしているものの)を通さない各都道府県のインディペンデント上映が可能な映画館で1週間の特別上映が行われDAU退行は全国で上映されていった。
 劇場の回転数によって興行収入が変わるビジネスにおいては6時間の客入り単価は一律3600円に制限され劇場でも1日1回という形態で公開されておりこれは劇場収入で成り立つ映画とし興行する価値はなく、あくまで映画の中身の観客の精査によってはじめて価値をもつ作品でといえる。
↓予告編日本版

現在は、配信などで2泊3日400円~より2022年10月1日視聴可能となったが当然として、観客は6時間の工面は難しくまた内容の難解さから途中で視聴をやめるという現象が続いている。
 今回、2022年10月22日土曜 池袋新文芸座で行われるレイトショー(22時30分~翌朝5時10分 休憩30分含む)は、長尺体験するという苦行を経験するとともに初見の方々は難解とさている研究所の人々の背景を読解しなければならない。ただ登場人物の関係が6時間という長尺ゆえに把握しづらく、理解できたとしても観客の興味を満たすようなものではない。各9章から成り立つ本作はこの苦痛体験が6時間続く。

 2021年2月27日より公開されたDAUナターシャはパンフレット、劇場公開館やパブリシティの資料も多く、ユーチューバーのレビューも多くあったがDAU退行はほとんどない。ネットでの資料もほとんどなく、ユーチューバーのレビューもなく、映画評論家の柳下毅一郎氏のDAU退行評論ぐらいしかない。※「【狂気】マジでヤバい映画シリーズを紹介【高橋ヨシキ 柳下毅一郎 てらさわホーク BLACKHOLE 切り抜き 映画批評】」

柳下氏の評論を聞いても映画を見ても6時間を通して記憶にのこる部分が少なく、資料もないので観客の初見時は「あれはなんだったのだろうか?」となってしまう事も多い。

 上映も日本のみフルバージョン上映である事からこの背景を解説する媒体もなくただ、6時間辛い経験をしたとか6時間の変な映画体験をしたという印象だけで終わる事が多かった。やはり「あれはなんだったのだろうか?」これが観客の第一印象の作品である。

 そこで、
私はこの作品の解読に1年かけてみた。

 

私は、2021年9月26日京都の映画館で見て以来、可能な限りこの作品の意味を問いただすため劇場で4回、配信で7回見てきた。1年近くをかけてDAU退行の見えてこなかった情報なども、セミナーなどに通い情報を得てまた自ら調べていき、自らも資料を獲得するにお金と時間をかけDAUシリーズの把握とその背景と意図を探ってきた。今回のDAU退行完全ガイドは、その1年の集大成的意味も込めて作成した。(つもりである)
 1つの結論として「これは映画の体をなしていない」という結論になったが、それはまた別に評論として掲載したい。  

    本記事によって映画を見た後のなんだったのだろうという混乱を避け、映画の意味や価値観をさらに見て頂いた方々のお役に立ててもらえれば幸いです。他の批評でも、これから見る方も含めて賛否はあると思いますが本ブログを通して少しでも楽になっていただければと思います。キャラクターの解説を通して DAU退行の関係相関を把握していただき、作品の価値を皆さんで立体的にして頂きたいと思います。

では、DAU退行 キャラクターの解説完全版をご覧ください。なお本ブログの※印の部分は実際の人物解説やそ背景と映画とのかかわり方を解説している印になっています。

2022.10.22 著者 ngi.

◆参考文献◆
オンライン「DAUはユートピアでありえたか?(5時間)」(視聴期限切れ)

DAU退行 DAUナターシャ 映画パンフレット。その他多くの記事は、各キャラクターの解説に付属してあります。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「物理学と技術に関する研究所」とは。

1938年創設
1968年解散
の施設である。

(研究所内観)

社会主義による規制(弾圧)から科学・学問の進歩のため治外法権を認められた研究施設で研究所の自由化を通して
・資本主義社会が社会主義社会においてどう変化を形成するか。
・ソ連の軍隊強化として超人が可能か。
・社会主義国の進展を先端科学にて立証する。
などが目的である。

施設内は、外国の要人、学者、労働者、食物まで取り入れるソ連自体が欧米諸国のように自由主義の資本でどのような過程をたどるのかという仮説を立証する場所としても認可された理由となっている。

簡単にいえば、ソ連はその日食べるものでえ国が管理するのに対してこの施設では、自由な時間に自由に食べてもよいという資本主義では当たり前の行いを行っている。その結果、人間はどのようなコミュニティを作るのかを数年に渡り作り上げている。

※本作には登場しないが、創設者は2人おり
レンダウとアナトリー・クスピッツア(演じるは演劇監督のアナトリー・ワシリエフAnatoly Vasiliev)がこのシリーズの主役となっている。

画像2
アナトリー・クスピッツア


※若いころのダウを演じるのはクラシックの指揮者として活躍するテオドール・クレンツェTheodor Currentzis。

画像1
レフ・ランダウ


(実際のレフ・ランダウ博士)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80%E3%82%A6

施設内は
・研究所 科学者たち
・研究所 要職の職員たち
・研究所 警備員、食堂など労働者たち
・外国から研究のために一時来訪する科学者たち学者たち宗教家たち
・ソ連国内から研究所へきた、学生たち、実験の被験者たち、科学者たち、学者たち宗教家たち

で成り立つ。DAU退行においては、これら人物が6時間の間に出入りし映画を読解不明にしている。本ブログはここを解明していく意図で作成している。

【DAUシリーズ 配信視聴可能】
★英語またはロシア言語のみ。日本語字幕なし
★★日本語字幕あり。公式ではなくU-NEXTなどで有料レンタル可能。

DAUCINEMA 公式より抜粋。

DAU. Dau (dir. Ilya Khrzhanovskiy)

★DAU. Brave people (dir. Ilya Khrzhanovskiy, Aleksei Sliusarchuk)

★DAU. Nora Mother (dir. Ilya Khrzhanovskiy, Jekaterina Oertel)

★DAU. Empire (dir. Ilya Khrzhanovskiy, Anatoliy Vasiliev)

★DAU. Katya Tanya (dir. Ilya Khrzhanovskiy, Jekaterina Oertel)

DAU. Conformists (dir. Ilya Khrzhanovskiy, Aleksei Sliusarchuk)

★DAU. Three days (dir. Ilya Khrzhanovskiy, Jekaterina Oertel)

DAU. Sasha Valera (dir. Ilya Khrzhanovskiy, Jekaterina Oertel)

★DAU. Nikita Tanya (dir. Ilya Khrzhanovskiy, Jekaterina Oertel)

------------【登場人物解説】------------

【外部より派遣された学者・科学者・宗教学者・パフォーマーたち】


ダニール神父 キリスト教カトリックモスクワ神学校教師
第1章 第4章に登場。演じるは実際の神父である 
ALEXANDER ISHMATOV (MEGUMEN Father Daniil)

ダニール神父 

ダウ研究時にキリストの教えを解きに外部講義を担当する。宗教の存在を否定している当時のソ連と照らしあわせ、神の実証を定義する講義を行う。
4章ラストでダウに洗礼を与える。

※宗教を禁じられるいるソ連ではタブーの出来事として描かれるがダウが神学に精通していたかどうかは描かれていない。

ダニール神父とダウ 第四章より
(神に助けを求める)


ラビ・アディン・シュタインサルツAdin Steinsaltz 博士 ユダヤ教 ヘブライ大学教授

ラビ・アディン・シュタインサルツ


第1章~9章ので登場。本作各章のナレーターは彼によるもの。
ユダヤ教教典を基に彼もまた、ダニール神父同様、宗教とソ連を照らしあわせたユダヤ教からの講義を行う。科学(実存)自体が一種の宗教であると提唱し、それ自体は自由であるが一側面からみれば害悪であり、各宗教によって発展や衰退が決まってくる。そして共産主義においては、退行し進化となす矛盾とく。

※本作のナレーターをしているとおり、ユダヤ教の教典と専門外であるにもかかわらずキリスト教の教典を引用し、この映画の共産主義がいかに退行していくかを各章で説いている。実在のアディン・ショタインサルツ


カレリンスキー GEAHAM KARELSKY トランスパーソナル心理学教授
第2章のみ登場。

カレリンスキー GEAHAM KARELSKY

人間が影響する精神的潜在能力(パーソナル心理学)の開発を行う。睡眠療法と呼吸の推進にて、身体を高揚させ効果を計る。なおここでの被験者たちはこのあと登場するコモン・ソールの実習生たちとは違う一般人という設定であるので注意。

※見ていて怪しいとしか言いようがないが、この風体にもいえる。実際のパーソンル心理学の博士である。1960年代後半から流行したフリーセックスの概念をソ連に持ち込んだら?という仮説のもと表現されているシーン。


ルミャンツェフ DMITRY RUMYANTSEV 人類学者 第5章に登場

ルミャンツェフ DMITRY RUMYANTSEV

アジッポの人類は共通に能力がもてる場合、超人に達する事は可能か?
という問いに対して「場所と時による。またそれらは事実であって差別や区別ではなく単なる事実である」と説く。
※平等、優性思想、差別においては人種の特性を重視するべきであるという理念とし描かれる。
普遍的に見た場合は、同時に相対的評価が必要となり結果優性思想にど誤った倫理が正当化される可能性があり、これ現代における
過激運動などの概念の1つではないと仮説的に語れる。
※実際のルミャンツェフは人類学のもと現在も国会議員である。やはり人権に対して一定のリベラルに警鐘を鳴らしている。右翼政治家。
↓LGBTQ問題でネオナチの弾劾を描いたドキュメンタリーに出演しているルミャンツェフ CREDET FOR MURDER (2015)予告の0:57分ごろ出演。


ジェームズ・ファロン 神経科学者 James Fallon第5章に登場。

ジェームズ・ファロン 神経科学者 James Fallon

人間の脳の機能に一定の刺激を与えて成長とともに潜在能力を開発する目的で召喚された。生後数か月の赤ん坊に脳波装置を付け脳の振動測定のち一部分に刺激を与えると、サイコパスが誕生しそのまま成長すると殺す事しか考えず自らを防衛する事を考えないソルジャーになるという仮説を持っている。赤ん坊はのその臨床実験を試みるための被験者。

(どう考えても人権的にも
赤ん坊の肉体的にもアウト)

アジッポとの会談では、アジッポの過去の職歴・経歴を推測しアジッポを同じ次元の人間としてブラックユーモアを与える。※実際のファロンはサイコパスに関する研究で第一人者として知られる。Tedに出た際のファロンのパフォーマンス


ギジェルモ・アレバロ シャーマン・実業家 メスティーソシャーマン
Peruvian Shaman GUILLERMO AREVALO VALERA
メスティーソは、白人とラテンアメリカの先住民の混血である。

第6章のラストのみ出演。
アヤワスカ(アマゾンにある植物薬または幻覚剤)を用いてダウの命延命を行うシャーマン。本作では数分程度の出演であるが、DAU退行の次の作品でDAUシリーズ最終作となるDAU Regenerationにおいては幻覚を用いて人の死し再生を行う人物として登場するという。

DAU.REGENERATIONの
ポスター素材より右がギジェルモ。

※冒頭のシャーマンとは別のシャーマンでアマゾンのアヤワスカ草を用いて幻覚的現象を引き起こす。
※冒頭のシャーマンはロシアなどユーラシア大陸が源に対してメスティーソシャーマンはハイブリッド(原理と近代の融合と自然科学を結びつける)なので目的が違う。

怪しすぎ。

⑦アンドリュー・オンドレジャック 行動心理学者 ANDREW ONDREJACK第7章~第8章のみ登場。

アメリカより来訪。行動心理学のテストを行うため、被験者たちに巨大な紙をゆっくりちぎっていくテストを行い心理的動静を記録する。実験の目的は忍耐とその行動変化の実証であるが地味な実験のため被験者チームがストレスを溜め込んだ。結果マキシムに目を付けられ、ホモセクシャル扱いを受けて暴行されそうになるがクリティーナ司書の介入により難を逃れる。
※実際のアンドリュー・オンドレジャックは米国で活躍するパフォーマー。↓インスタです。

https://www.instagram.com/andrewisamerican/

地味な実験さすなよ。。。


◆冒頭のシャーマンの儀式◆
アルタイシャーマンのよる葬式と死者復活の儀式である。
国:アルタイ共和国(モンゴルとロシアの間の国)
地方:シベリアの Kosh-Agach 地区のシャーマンの一族。

儀式朗読
ヴィアチェスカフ・チェルトゥエフ VYACHESLAV CHELTUEV
Altai Shaman

※ヴィアチェスカフ・チェルトゥエフとアルタイシャーマンの資料動画

※ヴィアチェスカフ・チェルトゥエフの生い立ち

その他、映像に映ったアルタイシャーマンたち。

Altai Lans
STEPAN VRCHIMAEV

Altai Folklore Story Teller(アルタイ共和国民間伝承者)
ARZHAM KEZEREKOV

Altai Singer
NIKOLAI SHUMAROV

※解説。DAU退行の冒頭で行われるシャーマンの死者の復活の儀式。
ブリノフの電磁装置とシャーマンの儀式の融合によって
科学と伝統を融合させ復活させようとする実験。


◆第9章の合唱団◆
【第54番学校の生徒が革命51周年を祝うために来訪】
第9章に登場。
生徒の構成はピオネールとオクチャブリャータからなる児童
※オクチャブリャータ
7歳から9歳までの児童組織をオクチャブリャータ
※ピオネール
ソ連邦における10歳から15歳までの少年少女を対象とする児童組織
 ※歌われた「科学こそ真実」は実際にある歌で本作のため提供された訳ではない。

児童合唱 指揮者
Children`s Choir Conductor ALEXEY KOSHMAN 
Children`s Choir VIKTOR MISCHENKO
Children`s Choir ALEXANDER KARBUEV

この方が作詞作曲した。
何処となくドクオクに似ている。

【施設の科学者たち】


ドミトリ・カレージン (ドミトリー・カレディンDmitry Kaledin) 数理物理研究所所長
第1章~第9章まで登場。

第5章ではアジッポ所長に対して「資本主義ではなく社会主義国が拡大していくためには国家はどうするべきか?」の答えとして「情報社会のオメガ起点」を解く。オルガと不倫という中で結婚に踏み切れない。第9章では妊娠を知り父になれる喜びを表す。またトリーフォノフ所長が退任する際にも事実確認を行ったり、映画の中では良心的にポジションで描かれる。※このオメガ起点の話は資本主義、社会主義どちらの世界にも第三の波として情報産業が拡大していき新しい資源として価値を得て国の産業を支えていくという話。
資本主義においても、ソ連においてもそれは同じ事であるという。
筆者作成のカレージン教授の経済繁栄のオメガ起点を参考してください。

※実際にカレージンはハーバード大学での教鞭経験があり現在も教授職にある。オルガとは実際のパートナーとなっている。
参考資料↓実際のカレージン教授の授業

※実際のカレージンはネオ・ユーラシア主義(世界の中心はロシア)の代表的思想・政治家のアレクサンドル・ドゥーギンを一時的に崇拝していためDAUプロジェクトマネジメントにおいてアドバイスを行っている。
アレクサンドル・ドゥーギン↓



ニキータ・ネクラーソフ Nikita Nekrasov 主任研究員 理論物理学者 第1章~第3章

カレージンとは方向性で熾烈な議論を繰り広げる事がある。
物理の可能性を示唆するニキータと物理ではなく無形が世界を広くすると考えるカレージンの間は第1章のラビとの会話で繰り広げられる。
多宇宙の存在など次元の存在と、有機無機に問わず関係性が選択される世界を志している。
自身の「ストリング理論」は別名ストリング理論、宇宙ひも理論、弦理論と呼ばれ素粒子からなる10次元はそれ自体がまた別の素粒子とひもで結ばれるている。という考え方で、ニキータはそれらに数学定式を用いて物理的に考えている。物理を無ではなく有と考えるこの方法はカレージン教授としばし対立する考えであり(カレージン自身は物理の物体定義にあきているため)映画の中でも二人は相性が悪い。その際たる屁理屈は「男性も女性も夫婦以外でも男女関係を結んでいいストリングセオリー」を立証するためやたらと不倫をしている。
一夫多妻制主義のため研究所内では単身赴任しているため所内の複数の女性と関係を持つ。
同じ行動をしているトリューノフ所長から治安見せしめのためその不倫関係を問いただされ、自ら退任していく。カレージンは一夫多妻制ではなく一夫一妻制を好む。この点でも思想的には反にある。

ニキターとカレージン。
とにかく仲が悪い。

※第一章でコモンソールの学生に講義していたのはシンプレティック多様体という数式の展開講義。このシンプレティック多様性もまた、次元と次元の空間はヒモで結ばれているので集合体としての次元は、結局のところ1つの次元に融合されている。という講義である。
クリストファー・ノーランが聞いたら喜びそうな話である。

シンプレティック多様体 
数式の展開講義

※実際のニキータも物理博士である。
DAUシリーズではその女関係と数学的関係を描いている。
天才とは一方で性的欲求の強い存在として描かれる。
実際のニキータは一夫多妻制主義ではない。
実際のニキータ↓(サイモンズ幾何物理物理センター)


ゾヤ・ポポワ 学術登録官 Zoya Popova
ニキータとは不倫関係にある。ニキータの結婚に踏み込んでこない進展しない仲にあきらめを感じている。トリューノフからニキータとの不倫関係を問いただされ叱責を食らいニキータとともに研究所を去るが、トリューノフ自身がレイプや不倫をしている事実を警備班に密告し証言者として見事失脚させる。


※トリューノフ所長は自分の不倫の事をカモフラシージュするためゾヤとニキータを利用し報告書として提出。自分の仕事への評価としてまた情報漏洩を防ぐための粛清を行っていたという構図。

ニキータとゾヤ この関係もヒモ理論の1つ。


アレクセイ・ブリノフ 実験部部長 物理学 Alexei Blinov
第1章~第9章

施設が開設当初からいる主任研究員で、伝送装置およびそのエネルギーに対する物理的機械を通じて人体実験への研究を行う。各実験における機械は彼が設計し動かしている。
第9章におていは、マキシムとの対談でマキシムが「魂はなくなるものであるが、再生されるもの」という「フュードロフの宇宙航方法理論」を用いて自らの思想である「熱核融合による葬式」を補足して話を展開した。
性格がよく頼られニキータ、カレージンの対立の際には仲裁として間にはいる。
※プロローグでシャーマンを通じた死体蘇生及び、魂の粒子化を行うために作れた巨大電磁等はこの魂を電磁の送電によって覚醒させるという実験。これ自体は、「フュードロフの宇宙航方法理論」と「熱核融合によね葬式」の目的に近いものがある。

※実際のブリノフは物理学博土でパフォーマめでもあり移動空間の電磁利用を研究していた。
↓ブリノフ博士のインタビュー


アリーナ・アレクセーバ 実験部長補佐 ブリノフの助手。Alina Alekseeva
第1章~第9章まで登場。

個人的にタイプです。

酒癖も悪くブリノフとは酒飲み仲間でもある。マルケンビッツの脅迫にも立ち向かう勝気の強い性格。バイセクシャルのため、女性とのキスやブリノフとのキスも酔ったついでに行う。ウエイトスレのヴィーカに興味を注いでいる。研究員として有能で記録に基づく展開以外は認めない。


フョードル・ソフロノフ 音響研究所所長 Fedor Sofranov
第1章~第9章

アレクセイ・ブリノフとともに研究所に長年勤めている。音の周波と伝送についての専門。コモンソールが来た時には「若者の革命」を説教するがマキシムたち被験者たちが来た時には革命の話はしなかった。音の周波による専門。※音の超音波を武器としたメーサーの研究を専門としている。メーサーは音の周波数が一定の数値を超えめと超音波となり可視化されると鋭い刃物と同じように物体の切断が可能となる。余談だが「ガメラシリーズ」のギャオスの殺人光線、「ゴジラシリーズ」の怪獣対策のメーサー光線車、「砂の器」小説版における超音波による殺傷はこの事である。つまり音を軍事兵器として使用可能かの実験を行っている。※DAUシリーズの「DAU. CONFORMISTS」にて体制側での圧力を経験しているからと思われる。


マリア・シュティルマーク 通訳者 (ソフロノフの妻)  Maria Stilmark
第1章~第9章

ソフロノフの妻として幾度とくなく夫の「革命」話の後にお説教をする。通訳は専門分野であればカレージンが担当し、外交目的であればマリアが担当する。若い時のダウの通訳の助けとなっていた所以で施設に務めている。


マリーナ・アブラモヴィッチ 解剖学客員教授 Marina Abramovic
※実際のマリーナ・アブラモヴィッチはパフォーマーとして活躍。
第一章ではチンパンジーの実験の被験者として実験に参加する。
TED においてのマリーナ・アブラモヴィッチ


チンパンジーとマリーナの鏡の実験。


⑧ロメオ・カステルッチ ボローニャ大学人類学教授 Romeo Castellucci第一章でチンパンジーと助成被験者の実験を行った人物。実在のロメオはイタリアの舞台監督をしている。※宮沢賢治を題材としたロメオ監督による舞台↓

※ロメオ監督の舞台とプレゼン 

左側がカステルッチ


【コムソモールからの施設へ派遣され実習生】

第1章~第4章に登場。
コムソモールとは内定・スパイ・密告者の養成機関である。

エドゥアルド(エジック)
リンゴ・スターにそっくり容姿なのはソ連から離れて欧米諸国で働き自由に研究をするための象徴として描かれる。
後半、アジッポの規律のもと坊主頭にされショックをうけるもすぐに元気になる。

※ソ連の若者たちの理想と自由の象徴として描かれる。
坊主頭にして外見のショックから早く立ちなれるのは
彼らがまた学問は容姿で決定すものではないという判断によるもので
若いから成せる前向きな姿勢でもある。

アンドリー・シェフチェンコ 散髪屋さん ANDREY SHEVCHENKO
生徒たちの頭を刈った床屋

1968年代のバリカンにも注目


【研究施設 食堂職員】

食堂職員は第1章~第6章~第9章と各章に随時登場するため個々の登場節は割合とする。


ヴィーカ (ヴィクトリア・スキツカヤ) ウエイトレス Viktoria Skitskaya

料理長のイワンとは相性が悪く、イワンが食事を作らないため接客担当のヴィーカが常にお客から怒られるという不条理を課せられる。
自分の年齢も重ねて伴侶が欲しいがソ連の不自由さが嫌で施設職員になるも出会いはなく自暴自棄となる。
施設人からきた若手(学生や人体実験被験者たちと関係をもつ事が多いのはそのため)


オルガ・シュカバルニャ 食堂長 ウエイトレス Olga Shkabarnya
第1章~第9章
1958年から勤務。当時食堂長だったナターシャ(DAUナターシャ)と喧嘩した彼女も本作1968年には上長となっている。

ドミトリ・カレージン博士と恋仲であり第9章では妊娠に対しての不安と希望を告白している。

※実際のオルガとカレージン教授はこの映画を通じて夫婦となり現在、ロッククイラマー・実業家として活躍している。
経歴としてはポルノ女優からスタートし本作では主要人物の俳優として出演している。
Face book

③ 
イーラ (イーラ・ヴェルノバ) ウエイトレス Irina Belova
イワン料理人に酒飲み、セクハラの相手にされる。ウエイトレスの中で一番若い。

左のおっさんがイーラではない

※余談であるが、本作の設定から10年前であるDAU.ナターシャで描かれたナターシャも同じ心境で当時、若かったオリガと喧嘩をしている。オリガもまたヴィカーと相反する状態である。オリガもまたナターシャと同じように外部からの人材と関係を持つ。
歴史は繰り返されるという意味で描かれる。


イワン(プロトレンコ・イワン) 料理長 Ivan Protorenko 

とくにかく仕事をしない。タバコと酒を飲み、セクハラをし、愚痴と怒鳴りチラシで各職員をパワハラしまくる。女性を一つしたの存在として見ており、女性の指令には絶対にきかない。バールイチの性器が28センチもあるという戯言を振りまきついにスリップドミノにてその性器を目撃しののしまくる。


スタパーノワ (ライサ・ヴォロシュチュク) カフェの掃除人 Raisa Voloshchuk

施設成立当初から勤務する。しかし仕事はほとんどしない。
酒を飲み休憩室にいる事が多い。


ワーシャ 料理人 

施設成立当初から勤務する。仕事中にお酒イワンから飲まされたりパワハラの相手。


フォーキン 食堂管理部長マネジメント DMITYR FOKIN

年配が多い厨房において上長であるが彼の実質的な身分は低く帰宅させるim一苦労の管理職。アジッポのその管理能力を指摘される。


【理事・創設者・家族関係者】



レフ・ランダウ (ダウ)物理学者 2代目研究所所長・創設者の1人。
本作で老ダウを演じるのはYURIY ALEKSEEVという舞台俳優。
それまでのシリーズは、若いころのダウをテオドール・クルレンツィスTeodor Currentzisが演じているレフ・ランダウは1958年までのダウである。

ダウのトレードカラー赤色。

本作におけるレンダウ博士は、アナーキーストであり逮捕者であり、英雄であり、治外法権の強い研究所の創設者と1代目所長である。
交通事故により不随の体となったが、ソ連への反体制と自由主義がDAUシリーズにおける一貫した性格である。
※実在したレンダウ博士のエピソードをもとに本作は作られた。


デニス (ダウの息子) 演じるはニコライ・ヴォロノフ Nikolaj Voronov

人事部長パールイチのデニスの珍しい連弾

ダウの長男でピアニスト。生まれてから施設に住んでいるため外の世界のソ連を知らない。自由奔放で思った事を口にし、かん高い声で笑う。ソ連では古典音楽のみが芸術として認められているが、デニスは生まれながら研究施設の自由主義の中で育てられているため、音楽の調律はデタラメかつ斬新であるが被験者チームのマキシムにそこを指摘されている。
※パールイチとの連弾は、酔っ払いっているパールイチと新自由主義のデニスがともに連弾しているが、酔っ払いと新しい音楽は同じ意味である。という皮肉なっている。

※実際のデニスもピアニストPOP歌手として活躍している。
↓演奏姿のヴォロノフ

↓ザ・オーディションにでたときのヴォロノフ


ノラ (ダウの妻) 演じるは Radmila Shegoleva

母親リディアの厚毛のコートは着るノラ。母親と葛藤あっても母親としての自分のリディアを重ねている。

ソ連の全体主義によって抑圧された世界でチョコレート工場の行員として働き始める。(DAU.EMPIRE)騒乱の中、偶然にも知り合ったダウの熱烈なラブコールにより身分の差別などを得て結婚する。
 研究所に移り欧米諸国の自由主義の中、デニスを出産。母親のリディアとの新旧の女性の価値観と葛藤や(DAU.NORA MOTHER)、外遊した先のダウの愛人との喧嘩でも自分がダウの一番であると主張する(DAU.THRE DAYS)の人種にある女性通しの対立が他のシリーズで描かれる。アジッポによって支配下された研究所から脱退する事を目論むがアジッポによって阻止される。


アンナ・ヴォルコワ ダウ家のメイド。Anna Volkova

第4章~第9章で登場。
研究所施設内にあるダウの住居の世話をしている。
デニスとは恋仲になりつつある。
天真爛漫な性格だが、デニス同様に知能障害の気がある。
トリーフォノフによってD1(職員・学生・監視員の総合宿舎)に移動させられそうになる。

【外部から召喚された被験者たち】

※KGBと閣僚評議会 (ソ連) によって委託された特別な実験グループのメンバー。前歴は主だって肉体的に優れたメンバーを集結し、犯罪歴、学歴、業績は問わずに選ばれているが共産主義に忠誠を誓っている事が条件。


マキシム・マルケンヴッツ Maksim Martsinkevich
第5章~第9章

人体実験を行うために派遣された人物で犯罪歴があり。映画では「白人優位主義」「優性思想」に卒倒しており研究所内のありとあらゆる人種を毛嫌いしている。アジッポとの会談にて「研究所の人々に影響を与えてれ」との指示を受諾し率先して遂行していく。古典的な絵画、音楽を芸術とし保守性から離れたサロンに飾ってある現代絵画やダウの息子デニスの音楽など新派は必要ないと切り捨てる。おしりで現代アートを書き塗ったりと侮蔑と挑発をする癖がある。神や死ついては、ブリノフと会談を挑み「フュードロフの宇宙航方法理論」を解く。※映画の中では、殺人事件すら起こしそうな雰囲気があり暴力で制圧する見失ったナショナリズムを体現している。※実際のマルケンヴィッツもネオナチの組織員として幾度も逮捕されテレビ出演をしてもヒトラー式敬礼で登場したり生中継中に口答えした番組スタッフをボコボコにしたり暴れている。↓以下参考映像 暴力的に映像多数につき注意。


帽子はかわいくないか?

※問題の豚の屠殺シーンについて。「アジッポによる直接関与のない粛清」の指示を主張し豚の屠殺を通じて研究所を統制していく手段にでる。監督も了承しているが出演者には知らされておらず彼らは目の前で起きた惨劇に実際恐怖の表情を見せる。※実際にネオナチの犯罪として収監されており、獄中で自殺したとなっているが作られた事実であるという見方が大半でありその死を疑う者が多い。


アンドレイ・チュエンコフ Andrey Chuenkov
リベラルな社会こそ今後のソ連に必要であると考える。
制裁については経験はないものの社会悪をつぶすためなら必要とする。


アレクセイ・カシッチ Alexey Kasich
被験者メンバー。

その他のメンバー。
第9章の追加されたKGB団も含む。ALEXANDER KOGUTALEXEY KASICMMAXIM MAKIENKOROMAN VOZNYUKVYACHSLAV KOGUTALEXANDR BEKSHAEVALEXANDR FILYUSHKINALEXANDR GAMOVALEXEY ABARAMKINANDREY FYODOROVDENIS FURLETOVDMITRY TSELISHCHEVLEONIO STROGANOVMIKHAIL BURMISTRENKOSERGEY ANDREEVVLADIMIR PAVLOV

◆研究施設 役所職員◆



ウラジミール・アジッポ 3代目研究所所長 Vladimir Azhippo 
第1章~7章 第9章 に登場本作の実質的主人公。別途下記に解説。

何処となくキング・ピンに似てる。


トリーフォノフ 2代目研究所所長 (アレクセイ・トリフォノフ) Alexey Trifonov
第1章~4章まで登場。
元・ソ連最高代議員(政治家)

何処となくクリストフ・ヴァルツに似ている。似てないか。

1960年より6年に渡りダウ研究所をとり仕切ってきた。
ダウ研究所の治外法権特区を利用し施設の経費横領、諸外国との違法物取引、秘書への権力をたてにセクハラなど数々の容疑をKGBに提訴されるが、全職の国会議員の根回しを利用しもみ消してきた。しかし、第4章でアジッポの施策によりわずか5分で失脚する。
仕立てたスーツとベストをひけからす癖がある。甘党。

※本作では欧米などの自由社会の堕落した象徴として描かれる。
対してソ連の社会主義は規律を模範とした理想社会であるため、
治外法権化した権力者の悪は一方によっては、社会主義が正しいのではないかと思わされる。


リュボフ・カイチェフスカヤ  LYUBOV KAICHEVSKAYA

何処となくカトリーヌ・ドヌーブに似ている

前所長のトリューノフの秘書。幾多のセクハラに耐えてきたが、レイプ未遂のトリーフォノフを訴えるため研究所を退職するが、ウラジミール・エルモレンコ セキュリティ副所長によって事実は揉み消された。


クリスチーナ 所長秘書 (クリスティーナ・ヴォロシナ) Kristina Voloschina

何処となくペネロペ・クルスに似ている。

リュボフの退職に伴い新たに雇われた。
前所長のトリーフォノフ、後進のアジッポと秘書を務める。
トリーフォノフの時代には愛人兼秘書として
アジッポの時代には秘書として活躍する。
※どの時代にも生き抜く柔軟さと愚かさの象徴として描かれる。本人はその君主に合わせ笑顔にも無口にもなる。自らの意思はないようにふるまっている。


パールイチ (アナトリー・パールイチ アナトリー・シドコAnatoliy Sidko) 人事部長

何処となく、誰にも似てないけど、印象に残る

常に仕事にやる気はなく、常に料理長のイワンと仕事裏で酒を飲む。
1917年 十月革命に参加しおりことあるごとにその話を持ち出す。
28センチの性器をもつと豪語していたが、ストリップドミノの罰ゲームによって裸にされその正体を披露する。
共産主義であるが、自由経済や文化を気に入っているため宴会などにも頻繁に顔を出す。


アレクサンドル 副署長

何処となく大滝秀治に似ている。

施設副所長を数十年に渡り務めてきた。主な仕事は集会の司会だけで、トリューノフが使いやすいだましやすい人材として配置したものと思われる。理想もなく、波風たてずただいるだけの役人で事なかれ主義。ストリップドミノに参加した事から更迭されるがトリューノフの時のように監視はなく自由にできた時代とアジッポの規律と監視では、ストレスがたまりアジッポとの相性も悪い。


クリスチーナ 司書 (クリスティーナ・バビッチ) 25歳 Kristina Babic

何処となくエマ・ワトソンに似ている。

第1章から第9章まで登場。1968年に研究所の司書として登用。
コムソモールの外部学生、人体実験の被験者マルケンビッチのチーム等とその都度、親しくなりまた肉体関係を行う。
 ※天真爛漫である女性像はDAUシリーズの女性の描き方を簡潔化している。他方で型に収める(理想に憧れる少女趣味、憧れからの肉体関係、性的被害などの男性優位の悍ましさ)ので描き方は1960年代かつ共産主義を模範しているからといって許すべきなのか疑問ではある。

◆研究施設 警備職員◆


パベル・ゴルディエンコ Pavel Gordienko 特別管理部門 (KGB) の責任者
第1章~第9章に出演

何処となく 
国際謀報局のマイケル・ケインに似ている

研究施設に常駐しているソ連との報告を行う外交兼報告を担当する。執行手続きはできないので、閣僚評議会 (ソ連)との連絡を行い命令によって動く。トリーフォノフ所長への警告は無碍にされたためアジッポを通じて失脚させる。難しい話は苦手のようで講演・研究に参加しても寝ている事が多い。

(寝たら罰則とかないのか?)

立場上はKGB出身のアジッポの部下に当たる。
※他のDAUシリーズでは、彼が体罰をとことん与えるシーンがありアジッポ同様武闘派である。


ウラジミール・エルモレンコVladimir Yermolenko セキュリティ副所長
第1章~第9章

何処となくウォルター・マッソーに似ている。

パベル・ゴルディエンコとともに施設を警備する。
同時に情報操作による隠ぺい工作も多々行う。パベル・ゴルディエンコの武闘派と違いブレーンとしてアジッポの工作面でサポートを行う。(過去に研究職員を袋叩きにして経歴があるため。DAUシリーズ DAU.Brave Pepoleより)
警備関係に関しては執行手続きをとれるため、警護名目であれば暴力もできるが治外法権の研究所内ではやはりその他の事に関しては執行手続きが必要となる。またトリーフォノフのセクハラ事件を散々もみ消している。
アジッポ提案である被験者チームの粛清には賛成しておりアンドレイ心理学博士を暴行しようとしたマキシムたちの事件をもみ消した。

※第9章でウラジミール・エルモレンコが虐殺されたがエルモレンコが逃れたのはもみ消しの名人。マキシムたちをかばった温情などが推測されるが設定では、虐殺されていない。
カレージンの情報戦略とエルモレンコの情報工作の仕事をアジッポが評価している可能性が高い。



ウラジミール・アジッポVladimir Azhippo  元KGB少佐 警備監督→3代目研究所所長。 本作の実質的主人公。第1章~第9章に登場。

迫力がケタ違いすぎる。

本作はDAU.アジッポという題名にしていいほど映画の中心的人物である。カリスマ性と魅力を備えているヴィランであり「退行」の引き金を作り上げるに相応しい。(私が知る限りこんな地味な攻撃と最大効果を発揮するピカレスクは見たことない)
第1章~第3章まではモブとして常に研究中・講演に出席してはメモだけを取る行動をして表情をくずさず目立たない。
   第4章では全く話を聞き入れないトリーフォノフ所長を「結果ありき理解させ、自ら辞職へと行動させる」コミュニケーション不和を逆手に取り恐怖を考えないほどの威圧の取り方と悟らせる事で威圧を完成させ失脚させる。 
   どの状態・状況でも相手に「私は味方である」と納得させ現場や現状に遭遇しても「まあ仕方ない」と説得し、その裏で虎視眈々と報復を用意するが一貫して「手をださない」
    また、自らは「父親のように温かくありたい」という体裁を同じ共産主義の保守的価値観をもった警備・被験者たちに服従させる。そして命令であれば親友であれ恩義のある者であれ消し去ることも問わない。
    思考は常に弁証法を使い、中立的立場を保ちながら虎視眈々と相手を披露させ観察し、反面で確実に計画を執行させるための手段は暴力であれ思想による歪んだ統制であり択ばない。

※地獄の黙示録のカーツ大佐、パットマンにおけるジョーカーなど名だたるカリスマヴィランの1人に入るだろうアジッポはこの映画におけるハイライトの1つであるが6時間を通して1時間程度の出演時間である。
   本作の行動を記述するより、彼の名言を載せておく。

-----------------------------------------|
アジッポマネジメント語録

第4章

アジッポ「ノックをせず、入ってすまない。」
トリーノフ「5分待ってくれ。(着替える)」
アジッポ「1分だけ待ってやる」

トリーノフ失脚の際に取りそろえた言葉。
「今日私が来たのは、あなたと議論をするためではありません。」
「議論は無益ではないでしょうか、あなたにとって面白い話ではありません」
「時代が時代なら銃に玉を一発込めて渡すが幸いにも時代が違う」
※選択肢などないと諭す

「私も長年の付き合いで心苦しいんです」
(同情と自分の立場をくみ取りさせる)
「(書類を)書くのを手おうか?」
※恫喝しつつフレンドリーに接する。

所長所信表明
「こういう場に不慣れですまない。研究と警備体制は相反するものであったが
私は中間を見出したい。私も努力するし、研究所の皆も協力してほしい」
※聴講している研究所のげぇぇぇ。という顔が笑える。
※体制批判をしてきたダウからしたらげぇぇぇぇという感じである。

痴気騒ぎの現場を押さえるため
「ここいた者のリストを書いてくれ」

私は立場上、
皆の父親のような存在でなければならない
※所信表明とおまえらが殺人の諭す指示。

ジェームズ・ファローン教授とのディスカッションにて。
「一番驚いたのは施設の外側と内側にいたという事だ」

「もう少し、謎めいていたい」

「そう、仕事でやった。」
※椅子にしばりつけ、股をさき、歯をヤスリで研ぐ拷問も一言で片付ける。拷問は過去の出来事なので特に気にしていない。

第5章
ルミャンツェフ教授とのディスカッションにて
「それでは私はナチスと同じかな?」
※ルミャンツェフは現在も極右政治家としてまた、極右活動家としてネオナチ主役の映画に出演しているが、本作で登壇および採用された理由には、ルミャンツェフに「ナチス以外の価値はあるのか?」を語らせる事にある。

被験者チームとボクシングを通じて
「昔を、思い出すな!」

被験者たちのディスカッションに対して
「社会の未発達分子ついては後で話そう」
「実際には殺したことは?」

パールイチの取り調べに対して
「君は賢いから後者を選ぶはずだ」
「またこの施設のためにも助言をくれ。いつでも歓迎する。」
※追い込むのではなく結果を受け入れろという意味。この後、安い釣り竿とラジオを長年務めた友として退職祝いを渡している。

第7章
(オメガ起点を見て)
「まだ到達していないな。」
※本当は理解していない。

第9章
ダウの家にて
「ここはゴミが多すぎる」
※ど直球すぎる嫌味

マキシムへの命令に際して
「細かいことは言わない。あと行間を読んで理解しろ。」
「何より重要なのは人を消し去る事」
「女も老人も全員始末しなければならない」
「なにに線引きするかで迷ったからこうなった」

※部下になっているマキシムが常に思っている事を自らの口にしてその同情を示し、また虐殺の指示に迷いがないように誘導するマメジメント。第5章で被験者の愛国心とそのゲームのような監視体制に興奮を覚えさせるための動的意味付けにしかならない。

1958年11月 研究施設にてある女性の取り調べに対してはなった言葉。
1968年11月 研究施設にてマキシムとの最後の言葉。

「悪い夢はわるいままにしておこう」
「すでに決まった事だ。変えられない。」

     -ウラジミール・アジッポ-

※果たしてアジッポがマキシムさせた虐殺命令は本当に閣僚評議会 (ソ連)が決定した事だったか?本作では語られていない。

【吹き替え】

DAU.退行 フランス語吹き替えバージョン|CAST
DENIS LAVANT ドニ・ラヴァン
TAHAR RAHIM  タハール・ラヒム

ドニ・ラヴァン
タハール・ラヒム

DAUシリーズは一作につき、諸外国の俳優による吹き替え(全てその俳優が声を宛てる)ボイスキャスト版が存在します。
DAU退行は、レオス・カラックス映画でおなじみのドニ・ラヴァンとタハール・ラムヒがキャスト全ての声をあてています。
収録はしてあるものの、DAUシリーズのリリースは現在このバージョンの公開はしておりません。

ちなみに、DAU.ナターシャは
シャーロット・ランプリングとウイレム・デフォーが当てています。

ウイレム・デフォー
シャーロット・ランプリング



【今回の登場人物の作成を通して理解できたDAU.退行のこと】


読んで頂き誠にありがとうございました。
 
このように、調べれば調べるほど極右と理想が介在できない世界感が研究所を通して体現している作品である。
ラビが言っているとおり「破壊することで進化する」という矛盾は、研究所の人間たちには理解しがたく、理想と資本の自由によって何もしなくなり退行する場合と、共産主義による行き過ぎた極右の果てに破壊活動があるという人類の幾度なく繰り返してきた衝動である。
 
特に言及されていない人物の背景を調べ、メイン登場人物たちの実生活や仕事における立場や情報を加味するとユダヤ人であるフルジャノフス監督が地球上の矛盾を描いている。
アジッポの立ち位置は、映画の前半はまったくモブであるが、後半は淡々と誰にも読まれることなく退行のシナリオを進めていくが、その上で「暴力」を行わない試作とその結果得られる友好と情報を利用して自ら優位に確実に仕留めていく。
 
DAU.退行は研究所の退廃と虐殺によって退行するということより
DAUアジッポという題名にしても差し支えはない。
カレージン教授の「オメガ特異点」は情報を制した者が世界の支配者となるテーマで語られるがこれを既にアジッポはメモを取ることで個人の情報を得て、所長になり権力としての情報を展開していく。
カレージンの特異点との違いは「情報はとにかく広げる」ことにあるが、アジッポはその事を把握して情報(未来)を閉鎖し自らが使いやすいようにつぶしていく。
 
本当にKGBが下した命令で虐殺されたのか。真実を知るにはアジッポしかない。
ソ連体制批判を描いている。という趣旨をよく聞く。映画をなぞればその部分は間違いないのだが別にテーマがあるとおもえる。憶測の域を出たくないので1年かけて資料を探し作成してきたが、それはまた別の機会にしようと思う。それはまだ出してない資料もあるという事で情報はこの程度に一旦しておこうと思います。

おわり。
2022.10.22 著作 ngiさん @eiga2022 Twitter連絡先です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?