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古典的オカルト・ホラーの前日譚 『オーメン:ザ・ファースト』

4月5日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 左翼運動が盛り上がっていた1971年のローマ。カトリック系孤児院に、アメリカの修道院から研修生のマーガレットがやって来る。彼女はこの孤児院で働きながら、運営母体である女子修道院で終生誓願を立てることになっているのだ。期待に胸を膨らませるマーガレットは、年長のカルリータという少女と出会う。

 自分自身も孤児として育ったマーガレットは、精神的に不安定な部分があるカルリータに自分自身を重ね合わせる。カルリータと同じように、自分も悪夢に悩まされているのだ。言葉も通じにくい環境に移ったことで、緊張しているからだろうか……。

 だが彼女は、この孤児院の恐ろしい秘密を知らされる。

 戦後のカトリック教会では、社会の世俗化に対抗するため過激な急進派が台頭した。教会から離れた人々も、霊的な恐怖を感じれば教会に復帰するに違いない。そう考えた急進派は、悪魔と処女を交合させてアンチキリストを生み出そうとしていたのだ!

■感想・レビュー

 1976年の古典ホラー映画『オーメン』のプリクエル(前日譚)。『オーメン』は悪魔の子ダミアンの誕生から始まるオカルト・スリラーだが、本作は悪魔の子ダミアン誕生のいきさつを描くことで、オリジナルの『オーメン』に直結する映画になっている。

 『オーメン』は1978年と1981年に続編が作られて三部作になり、その後はリブート気味にさらなる続編が作られているが、それ以外にも2006年にはオリジナル版のリメイクが作られ、2016年には1976年の1作目から枝分かれする形でテレビシリーズ版も作られている。

 今回の映画は2006年のリメイク版ではなく、1976年のオリジナル版につながる物語だ。それは映画の最後に、グレゴリー・ペックの写真が出てきて明確化されている。

 本作の感想だが、正直言って「作らなくてもよかった映画」だと思う。なぜこのような映画の企画が出てきて、今さら作られなければならないのかがわからない。映画はオリジナル版『オーメン』の名場面(?)を引用しながら、全体のアイデアとしては『ウィッカーマン』(1973・2006)をちゃっかり拝借しているような内容。

 アメリカ版Wikipediaによれば、もともとHuluでの配信用に製作がスタートしたが、ハリウッドのストライキで作品供給不足になったため劇場公開に格上げしたのだという。

 映画を観ていて気になったのは、劇中に登場するカトリック急進派が、1950年前後にアンチキリストの誕生を画策する理由だった。戦後に大きな宗教ブームが起きた日本しか知らないので、「社会の世俗化」と言われてもピンと来ない。

 しかしこれはイタリア独自の理由がある。戦争中にレジスタンス闘争の中心になったイタリア共産党は、戦後政治の中心に乗り出して急拡大しているのだ。戦後に共和制となったイタリアの政権を握ったのは、キリスト教民主党、共産党、イタリア社会党の連立内閣だった。

(原題:The First Omen)

109シネマズ木場(シアター7)にて 
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン 
2024年|2時間|アメリカ|カラー 
公式HP:https://www.20thcenturystudios.jp/movies/omen-1st
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt5672290/


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