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導入部は面白そうなのにすぐ腰砕け 『変な家』

3月15日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 動画クリエイターの「雨男」こと雨宮トオルは、マネージャーの柳岡から一軒の中古住宅の図面を見せられる。購入を検討しているが、その是非を知り合いの建築家に相談してほしいというのだ。

 雨宮は図面を建築家の栗原に見せるが、彼は「買わない方がいい。自分なら買わない」と即答する。いったいなぜ? それは図面に不審な所があったからだ。1階キッチンのすぐ脇にある奇妙なデッドスペース。2階の子供部屋にと独立したトイレと二重扉があり、まるで中に誰かを閉じ込めるような作りになっている。

 1階と2階の図面を重ね合わせると、1階のデッドスペースは2階の子供部屋と浴室を結ぶように存在する。ひょっとすると、これは子供部屋と浴室を結ぶ秘密の通路なのではないか。これは浴室に誰かを招き入れ、殺すために作られた家なのかもしれない……。

 そんな栗原の「妄想」に震え上がった雨宮は、最近すぐ近くでバラバラ死体が見つかったことを知る。

■感想・レビュー

 ウェブライターでYouTuberでもある覆面作家・雨穴の同名ベストセラーを、間宮祥太朗主演で映画化したサスペンス・ミステリー映画。建築家の栗原を演じるのは佐藤二朗。脚本は『七つの会議』や『大名倒産』の丑尾健太郎で、監督は『エイプリルフールズ』『ミックス。』の石川淳一。

 原作未読でコミカライズ版なども読んでいないのだが、映画はあまり面白いと思わなかった。人を殺す目的のためだけに作られた家というアイデアはユニークだが(宇都宮の釣り天井など前例がないわけではない)、そこから先の展開は無理で無茶で現実離れしている。

 例えば問題の家を主人公たちが調べる場面があるが、これは完全な不法侵入。売りに出ている家なのだから、仲介する不動産業者に連絡すれば中を案内してもらえるのに、なぜそうしないのだろう。前住人が退去した後は不動産会社の担当者が室内を一通りチェックしているはずで、手で簡単に動かせる家具の下にある秘密の抜け道など簡単に見つかってしまうはずだ。

 他にも主人公たちが他の家を訪ねた際、人がいないのをいいことに勝手に中に入ったり勝手に撮影するなど、やりたい放題なのは気になってしょうがない。

 物語の背後にある「仕掛け」に文句を言うつもりはないが、背後に隠されていたおどろおどろしい物語の虚構をリアルに見せるためにも、平凡に見える日常描写は徹底してリアルに描き、穴をふさいでおいてほしいのだ。この物語が「住宅の見取り図」という平凡でリアルなものを入口にしているのはアイデア賞だが、その先がまったくリアルでなくなってしまうのは残念だった。

 映画の序盤で画面がやたらと暗いのも気になる。室内シーンだけでなく、ピーカンの屋外でも画面が薄暗いのだ。こうした絵作りに何らかの意図があるならそれでも構わないが、僕にはその意図が最後までまったくわからなかった。配役はすごく豪華だが、それもあまり生かされていないのだ。

ユナイテッド・シネマ豊洲(10スクリーン)にて 
配給:東宝 
2024年|1時間50分|日本|カラー 
公式HP:https://hennaie.toho.co.jp/
IMDb:

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