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ドニー・イェン主演の武侠アクション映画 『シャクラ』

1月5日(金)公開予定 全国ロードショー

■あらすじ

 宋代の中国。幼い頃より少林寺で学問と武芸を学び、若くして江湖(ごうこ)の丐幇(かいほう)で幇主(ほうしゅ)として人々を束ねていた喬峯(きょうほう)は、ある日、まったく身に覚えのない罪で江湖を追われることになる。

 副幇主の馬大元が何ものかに殺され、馬夫人の康敏がその犯人として喬峯を告発したのだ。この際、喬峯が漢民族ではなく、契丹人であるという事実も暴露された。いずれも喬峯にとって身に覚えのない話だったが、喬峯はかつての仲間たちに追われて丐幇を去る。

 出生の秘密を知るため故郷に戻った喬峯を待っていたのは、両親と師父を殺し、少林寺から経典を盗み出したという新たな濡れ衣だ。彼は現場で教典を持っていた若い女を捕らえて追っ手から逃げるが、その女・阿朱は戦いの中で瀕死の重傷を負っていた。

 彼女を助けられるのは、薛(せつ)神医のみ。だがそれは、喬峯にとって敵の真っ直中に飛び込んでいくことを意味した……。

■感想・レビュー

 武侠小説の巨匠・金庸(きんよう)の代表作のひとつである「天龍八部」から、侠客・喬峯のエピソードのみを再構成し、ドニー・イェン主演で映画化した武侠アクション大作。

 「天龍八部」は人気のある小説で、過去に何度も映画やテレビドラマになっている。今回の映画でほんの少ししか出てこない人物にもいちいち字幕で人名などが説明されるのは、原作のファンに対して「あなたの好きなキャラがここに出てきますよ」と示す意味があるのだろう。

 正直この映画だけでは周辺人物の扱いが未整理になっている部分も多いと感じるが、これを省略したり整理してまとめたりしてしまうと、原作のファンには不満の多い作品になってしまう。

 結局本作には原作の大きな物語世界がそのまま持ち込まれ、原作を良く知らない僕のような者からすると、次から次に曰く付きの人物が現れては消えていようだが、その人物が何者なのかよくわからないという不思議な映画になっている。

 それでもこの映画が楽しいのは、アクションの純度が高いからだと思う。おそらく中華圏の人たちに広く親しまれている物語だから、ドラマの枠組みが太くてしっかりしているのだ。だからそこでいくら荒唐無稽なアクションが行われても、物語の軸がまったくぶれない。喬峯はひたすら強く、しかも義侠心に富んでいる。

 裏切ったり出し抜いたり過去の因縁があったりという周辺の筋立てを除いてしまえば、中心にあるのは喬峯と阿朱の悲恋メロドラマ。周辺状況がダイナミックに動いていく中で、この二人の関係は純度を増して深まっていく。それがプラトニックな関係であり、言葉にせず強く思いを深めていく関係であることが、その純度をより高めていく。

 CGやワイヤーアクションなどVFXを使ったシーンも当然多いのだが、広大な荒野や草原を馬が疾走していくなど、ロケーションを使ったシーンも要所に挟まれて世界観が広がる。これはなかなかの佳作だと思う。

(原題:天龍八部之喬峰傳 Sakra)

109シネマズ木場(スクリーン4)にて 
配給:ツイン 
2023年|2時間10分|香港、中国|カラー 
公式HP:https://sakramovie.com/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt22488024/

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