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(サッカー)2023.10.21_J1_横浜FC×FC東京@ニッパツ


introduction

この週末を控えた金曜日はかなり早い時期から会社の都合で出張の予定が入っており、ホテル宿泊を経て土曜日の朝に仙台で解放。週末の予定が無ければ、そのまま仙台付近で時間を潰してから帰京するところだが、今回はそういうわけにはいかない。今週は3週間ぶりとなるJ1リーグ開催の週末であり、我らがFC東京の試合がまさに本日行われるためだ。対戦相手は横浜FC。会場はアウェイのニッパツ三ツ沢球技場である。キックオフは14時となっており、これに間に合わせるには午前中に仙台を撤収しなければならない。10時過ぎに上りの東北新幹線に乗り、車窓に見える蔵王や安達太良の山並みを眺めながらゆったりと時間を過ごした。

新幹線を上野で下車し、駅構内のうどん店で早めの昼食を済ませてから上野東京ラインのグリーン車に乗って横浜へ。そこからは路線バスに乗り換えである。バス乗り場は相変わらずのカオスな混雑だが、三ツ沢グランドの停留所を経由するバスは山手線並みの高い頻度でやってくるので、適当な列に並んで入線してきたバスに乗ってしまえば充分だ。道路の渋滞で少し時間は掛かったものの、試合開始30分前には三ツ沢に到着。指定席を確保してあるメインスタンドのアウェイ寄りの座席に腰を落ち着ける。アウェイゴール裏とメインスタンドのアウェイ側半分は東京ファンで埋まっており、横浜サポーターと比べても数では負けていない。

10月に入ってからはインターナショナルウィークの影響で3週間ゲームが無く、リーグ戦は久しぶりの開催。リーグ戦は残り5試合となっている。東京は現在勝点「39」で10位。昨日にゲームを行った9位の川崎フロンターレが勝利して勝点を「42」に伸ばしており、上の順位を狙うのであれば今日の試合では勝点3がなんとしても必要な状況だ。今日は仲川が出場停止のほか、スウォビィクや長友もメンバー外。特に事前の情報は聞いていないので、コンディション不良だろうか。そのため、U-22日本代表のアメリカ遠征から帰国したばかりの野澤とバングーナガンデがスタメンに入り、松木はベンチスタートである。FWの控えが熊田1人しかいないのが懸念材料か。

一方の横浜FCは、現在勝点「23」で18位。昨季のJ2で2位に入り、降格から1年でのJ1返り咲きとなったが、今季も再び苦戦を強いられている。しかし今季はJ2への自動降格の枠は1チームのみであり、最下位さえ免れればJ1に残ることができる。17位の湘南ベルマーレとの勝点差はわずか1ポイントであり、現実的にはまだ充分逆転可能だ。とはいえ、残り1,2試合になってから勝利がマストになるような状況下に置かれると厳しいはず。せめて早い段階で17位には浮上しておきたいところだろう。横浜は9/29に行われた前節の浦和レッズとの試合でアウェイながら1-1のドローに持ち込んでおり、今日のスタメンはその前節と同じラインナップのようだ。

1st half

前半に良い入り方をしたのは横浜。3-4-2-1というやや守備寄りのシステムではあるが、中盤で東京からボールを奪い、あまり手数をかけずに前線にボールを供給しようとしてくる。1トップを張るマルセロヒアンは1人で局面を打開することのできるアタッカーで、注意が必要だ。11分にはそのマルセロがボールを収めたところで森重の対応が曖昧になり、裏のスペースへ走ったカプリーニへラストパスを通される寸前で小泉がファウルで止める。小泉には警告が出るが、これはもう仕方がない。

散発でカウンターを撃たれる立ち上がりとなった東京はリスタートのタイミングで一旦間を入れるなど、落ち着いた入り方をしようとしているように見えるが、ミドルゾーンでのプレスでボールを失う場面が多い。横浜はあまり手数はかけず、しかし確実な選択肢を使いながら地上戦でゴール前まで運んでくる。どうにか跳ね返すことのできている東京だが、インテンシティの部分ではホームチームの方が上回っており、受けに回る時間が多い。

33分、横浜は中盤で前を向いたカプリーニのパスを半身で受けたマルセロがワンタッチで裏のスペースへ走った井上へパス。これに抜け出した井上はフィニッシュへは行かず、ドリブルでゴール正面へカットインを試みる。この間に東京の最終ラインが戻り、助かったと思ったのも束の間だった。角度を作ってから井上が左足を振り抜くと、シュートコースに立っていたエンリケの足にボールが当たって軌道が変わり、ゴール右隅に転がり込んで1-0。ここまで裏のスペースを生かした攻撃を見せていた横浜が先制する。

39分、横浜はセットプレイの流れからゴールネットを揺らすがオフサイドフラッグが上がってノーゴール。東京は終盤にバングーナガンデがアタッキングゾーンまで侵入して攻撃に絡む場面を作りだしたが、決定機といえるようなシチュエーションを作るまでには至らず、前半終了のホイッスル。ホームチームが1点をリードしての折り返しとなる。横浜の攻撃がほぼ狙いどおりにいっていたことを考えれば、このスコアは極めて妥当。難しい試合になったとはいえ、まだ1点差であり、同点はもちろん、逆転勝利もまだ射程圏内だ。東京はどこかで攻撃のスイッチを入れたい。

2nd half

後半に入り、東京が先に攻勢を仕掛けるかと思いきや、前半と同じような緊張感を見せてきたのは横浜。中盤でパスコースを切る堅実な守備を続行し、東京に隙を見せない構えだ。東京は出しどころが無いとはいえ、前半と大きく変わらないゆったりとした入り方。まだ1点差ではあるが、このままのペースで大丈夫なのか少し不安になってくる。

57分、東京は右サイドのハーフウェーライン付近で白井が裏のスペースへボールを入れると、アダイウトンがこれに反応して抜け出し、GKと1vs1のチャンス。しかしアダイウトンのシュートはGK・永井がビッグセーブ。これまでにほとんど見られなかった裏のスペースへのパスが相手の虚を突いた形だったが、横浜がピンチを脱出する。東京にとってはこの試合ようやく訪れた決定機だったが、これを生かすことができない。

64分、東京は俵積田と白井を下げ、東と松木を投入。中盤で主導権を全くといって良いほど握れていないため、そこを強化する狙いだろう。東は中盤の底で組み立てに関与し、松木はトップ下に入って狭いエリアでボールを受ける役割をこなすが、依然として横浜の守備がしつこく、中央になかなか割って入ることができない。せめてクロスの数を増やしていきたいが、サイドの崩しの場面も決して多いとはいえず、ボールは持てていても横浜の守備のブロックに淡々と跳ね返される場面が続く。時間が経つにつれ、アタッカー陣は前線で張り付きっぱなしになり、組み立てを担うバックラインは出しどころがなく、かといってラフに蹴ることもできずに横パスが増えてくる。

82分、横浜は攻撃を牽引したマルセロを下げ、東京との古巣対決になる三田を投入。中盤でボールを持てる三田の投入は良い采配だ。直後の83分、東京は右サイドのタッチライン際で渡邊がボールを残したところから小泉がハーフスペースに侵入してゴール前にクロスを入れるが、松木と塚川が味方同士で重なってしまいシュートを撃てず。せっかくのチャンスでも運が無い。87分、東京がようやく最後の交代カード。ロングスローの使える徳元と、今日の控えメンバーで唯一FW登録の熊田が入る。交代策としては妥当だが、残り時間が10分を切っているような状況での投入は少し遅すぎる印象だ。

後半ATに入り、何がなんでもゴールをこじ開けに行かなければならない状況であるにも関わらず、なおバックラインで横パスを回しながら出しどころを窺う東京に対し、ゴール裏はもちろんのこと、メインスタンドのファンも遂に痺れを切らして「早く上げろよ!」の罵声が飛び始める。しかし何かをするにはもう遅すぎた。ほどなくしてタイムアップのホイッスルが鳴り響き、試合終了。1-0で横浜が逃げ切りに成功し、J1残留に向けて大きな勝点3を獲得。久々の勝利に湧くホーム側のスタンドに対し、アウェイ側のスタンドは不満を示す大きなブーイングが飛んでいた。

impressions

端的にこの試合の東京を評価するならば、「問題外」の一言に尽きるだろう。前節の試合を終えてから約3週間のインターバルがあり、この間にチームの好調が途切れなければ良いが・・・と思っていたが、どうやらその懸念は当たってしまったようだ。J1残留という明確なターゲットに向け、特に守備をしっかりと遂行してきた横浜に対し、90分間のほぼ全てにおいて、全くといって良いほどソリューションを示せなかった。それらしいチャンスは白井のアイデアでアダイウトンにパスを通した57分の場面のたった1度だけで、チームとして一体どういうサッカーをやりたいのか徹頭徹尾分からなかった。チームの狙いが分からなければ、もはや良し悪しを論じる以前の話である。

ホームの横浜は、しっかりとした狙いを持ってこの試合を戦いきった印象だ。具体的には、立ち上がりから裏のスペースを意識したボールを入れていた。1トップのマルセロだけでなく、中盤の選手も積極的に裏を狙ったランニングを仕掛けて短いタッチ数で崩すことを意識していた。先制点に繋がった井上の動き出しはその典型例といえるだろう。後半は基本的に守備に時間を割く形となったが、対応としては中に入ってくるボールを跳ね返すだけで良かったように見える。セカンドボールの回収も出来ていた。いくらJ1で最下位に沈むチームとはいえ、相手の攻撃が単調であれば守りきれるだけの力は充分に備えている。最後まで集中を切らさずに戦いきったという点は、残りの試合に向けて大きな収穫だったのではないだろうか。

東京はスローな入りとなったが、それ自体は理解できなくはない。勝点が欲しいのは何より横浜の方であり、アウェイでの試合ということも考えれば、まずは無理にゲームスピードを上げず落ち着いた入り方をするのは定石のひとつではある。しかし、裏のスペースを執拗に突かれ、特に森重がマルセロに対して明らかに手を焼いていたにも関わらず、具体的な対策を見いだせないまま時間を過ごしてしまい、そのマルセロが関与する形で先制点を許してしまった。これにより、ホームチームには「1点を守り切る」という選択肢が生まれ、特に後半はその狙いが顕著となった。一方、東京はどこかで攻撃のスイッチを入れる必要性が生じたが、そのトリガーが何なのか明確でないまま時間だけが過ぎていき、遂に最後までスイッチはオフのままだった(ように見えた)。

前述したように、チームとしての狙いや、選手個人に与えられているであろうタスクが、一体どのようになっているのかが分からなかった。ウイングが内側のレーンを意識して攻め込まなければ攻撃が手詰まりになるのは既にこれまでの試合で明らかなとおりだが、結局今日も同じことが繰り返された。かといって、サイドからのクロス機会も乏しい。これではゴール前に迫力が出ない。ライン間の距離が遠すぎるのも問題だ。トップ下にはここ最近渡邊が入ってはいるが、実際のところは最前線のディエゴと並んで張り付きになってしまっており、中盤との距離が遠すぎる。狭いエリアでも前を向けるのが渡邊の良さなのだから、今のシステムではウイングに置いた方が良さが出るのではないか。「やれること」はいくらでもあるはずなのに、実体を掴めない「やりたいこと」だけが先行して自分たち自身を苦しめているのは、スタンドから観ているだけでもしんどいものがある。

ベンチワークに関しても疑問が残った。前半の内容だけを見ても、後半の早い段階で手を打つべきなのは明らかだったように感じるが、この試合で最初の交代は64分。中盤が支配できていなかったので、松木と東の投入自体の意図は分からなくないが、結果としてこの2人の投入で試合内容が改善したかといえば、答えは「否」だろう。塚川を投入してもなお流れは変わらず、結局今日のベンチスタートの中で唯一現実的な「ゴールを取りにいくカード」でもあった熊田を入れたのは試合時間も残り少ない87分だ。熊田に与えられた時間が少なすぎたのも疑問であるし、せめて俵積田とアダイウトンのどちらかは切り札としてベンチに置いておくなど、スイッチを入れられる選手を交代カードに残しておくべきだったように感じる。まるで「追いかける展開なんて全く想定していなかった」かのようなメンバー選考、ベンチワーク、試合運びには、ちょっとがっかりさせられた。

他会場では17位の湘南ベルマーレが勝利したため、横浜は最下位脱出はならなかったものの、16位の柏レイソルとの勝点差が詰まってきてJ1残留争いはがぜん面白くなってきた。一方、東京は10位の川崎との勝点差を離されることになり、前節までの2連勝で望みが出てきつつあった順位表のトップハーフは再び遠のいた。今のチームが何を目標としているのかはよく分からないが、少なくともただ漫然と残りの試合を戦うのは、これまでの経験からしても非常に危険だと感じるし、スタンドに挨拶する選手たちの呆然とした表情を見て、改めてその思いを強くした次第だ。

次節は再びホームゲームとなり、1週間後にサンフレッチェ広島を迎えての試合となる。今季の残り試合で唯一、順位表のトップハーフにいるチームとの対戦であるだけに、気を引き締めて試合に臨まなければならない。クラブとしても設立25周年記念マッチの最後の1試合となるだけに、観客の期待を裏切らない試合内容を強く期待するばかりだ。

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