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(サッカー)2023.11.25_J1_FC東京×北海道コンサドーレ札幌@味スタ


introduction

11月最後の週末を迎え、インターナショナルウィークを挟んで2週間ぶりの開催となるJ1リーグは、今節が第33節。残りは僅か2試合となり、各チームがホーム最終戦を迎える。優勝争いと残留争いがそれぞれ決着のときを迎えようとしている中、そのいずれとも無縁となった我らがFC東京も、この週末がホーム最終戦だ。今節は北海道コンサドーレ札幌を味スタに迎えての一戦である。

昨日までは最高気温が20℃を超える季節外れの暖かさだった東京だが、今日は一転して気温が急降下し、味スタの気温は14℃。スタジアム観戦慣れしていればどうということはない程度の寒さではあるが、ライトなファンがふらっと行くには少し厳しいかもしれない。東京の成績面での興味が薄い状況もあってか、味スタの観客は26,945人。ホーム最終戦で、かつアウェイサポーターの動員力がある札幌相手ということを考えると、ちょっと(かなり?)寂しい数字となった。

東京は勝点「40」で現在11位。昨日、9位の川崎フロンターレが先立って試合を行い勝利したため、9位以上への返り咲きの可能性が消滅。今季はボトムハーフでのフィニッシュが確定した。公式戦では10/1のガンバ大阪戦を最後に3試合勝利から遠ざかっており、ゴール裏からは「このエンブレムと共に勝利を」と、現行エンブレムで戦う間での勝利を願う横断幕が掲出。確かにこのまま勝ち無しでシーズンを終えるのは気持ち悪い。現行エンブレムに区切りをつける意味でも、勝利を願う人は少なからずいるはずだ。今節はエンリケと松木が出場停止、バングーナガンデと俵積田がメンバー外となっており、左SBに徳元、右ウイングに出場停止明けの仲川が入る。トップ下は渡邊が務めるようだ。

一方、今日の対戦相手である札幌は勝点「37」で現在13位。東京にとっては近い順位の相手であり、札幌にとってはこの試合で勝利すれば順位の入れ替わるチャンスである。今季は5月の大型連休中に札幌ドームでリーグ戦を戦っているが、この試合では5-1と札幌が圧勝。東京にとっては苦い記憶となっているだけに、ホームでは嫌なイメージを払拭したい。今節の札幌はボランチの馬場が出場停止で、前節からスタメンを複数人入れ替え。1トップには加速力のある小柏、ボランチに宮澤が入り、GKも夏に補強した高木ではなく菅野がスタメンだ。ちなみに菅野は今日のスタメン出場により、Jリーグ通算600試合出場を達成。横浜FC時代に出場機会を掴んだのがおよそ20年前のことだから、GKとはいえ本当に息の長い選手だなと思う。

1st half 

前半開始早々にチャンスを迎えたのは東京。3分、右に流れて受けたディエゴがハーフスペースに差し込んだスルーパスに原川が走り込んでシュートへ持ち込むが、惜しくも枠の左。対する札幌も6分、裏のスペースに出たボールに小柏が抜け出してチャンスを迎えるが、森重がフィニッシュ寸前でカット。互いに少しバタバタした立ち上がりだ。

14分、東京は森重が渡邊に対してズバッと刺すような縦パスをつけてディエゴのフィニッシュまで持っていく良い形を作ると、ここから主導権を手繰り寄せる。18分には自陣の深い位置に相手のハイプレスを誘い込み、右サイドに開いた木本が裏のスペースへ走った仲川へ絶妙なロングパスを送り込みビッグチャンスに。しかし仲川のシュートは左に外れ、この決定機を生かせない。20分にはアダイウトンが左のアタッキングゾーンに侵入してグラウンダーで折り返したところにディエゴが合わせるが、これも相手のブロックが入ってゴールには結びつかず。

単発の攻撃に終始する札幌に対してなおも主導権を握る東京は、33分にアダイウトンの折り返しをボックス内で仲川が引き取るがシュートまで持ち込めず。36分のアダイウトンのカットインからのシュート、40分には右に流れたディエゴが仲川に繋いで逆サイドへ振ってからフリーで詰めた徳元がシュートとゴール前の局面が相次ぐが、いずれも得点には至らない。

これだけチャンスが続く中で無得点のまま前半終了はさすがにまずい・・・と思い始めた41分、東京はアダイウトンがカットインでゴール正面付近まで持ち込むと、落としたボールにディエゴがダイレクトでプッシュ。これがゴール左隅に決まり1-0。東京がようやく先制に成功する。ディエゴはこれでリーグ戦でのキャリアハイ更新となる15得点目だ。試合はこのまま1-0で前半終了。内容を考えればもっと取っておきたかったが、ひとまずリードで折り返すことがでなかたのはポジティブに捉えたい。後半は更に突き放すか、あるいはクローズに入るのか、判断の分かれそうなところだ。

2nd half

札幌は後半の頭から福森と菅を下げ、中村とスパチョークの2人を同時に投入。開始早々に攻勢を仕掛けてくる。50分、札幌は中央で受けたスパチョークが左サイドの中村にボールを渡すと、中村は裏のスペースへの動き出しを見せた浅野へスルーパス。これが通ってGKと1vs1の局面となり、浅野がシュートを叩き込んで1-1。後半から出場の2人が早くもゴールに絡み、札幌が早い時間帯で同点に追いつく。中村のスルーパスが意表を突くタイミングで出てきたため、東京はマークについていけなかった。

その後も札幌は攻勢を緩めない。55分、左サイドでフリーとなった駒井の折り返しに中央の小柏が合わせて決定機となった場面はオフサイドとなるものの、直後の57分に駒井から左サイドの中村へ展開し、中村が裏のスペースに早いタイミングで送り込んだ低いクロスに小柏が反応。身体を投げ出すようにして伸ばした足に当たったボールがゴールに突き刺さり1-2。ものの10分足らずで札幌が一気にスコアをひっくり返す。

64分、東京は右に流れてボールを受けたディエゴがドリブルでボックス内に侵入し、マークについた2人の間を強引に突破。一気にビッグチャンスとなるが、ディエゴがゴール正面に送り込んだラストパスをアダイウトンがまさかの空振り。大きな嘆息がスタンドから漏れる。66分、東京は原川と渡邊を下げて青木と東を投入。トップ下に入った東は前からボールを狩りに行き、中盤とバックラインをもっと上げるよう身振りで鼓舞しているが、札幌の反撃を恐れてか、全体の反応はイマイチ鈍い。

74分、東京は徳元が下がって白井を右SBに投入。終盤のパワープレイまで見据えるならばロングスローの使える徳元は残すべきだったように思うが、それよりは白井のクロス精度を取ったか。全体的にボールを拾って攻め込むことはできている東京だが、中央を固める札幌の守備が堅い。どうにかできそうな空気もなくはないのだが、悪い意味で淡々と攻めているように見え、メリハリが無く、迫力が薄いように感じる。見せ場といえるような場面がなかなか生まれず、スタンドの応援の雰囲気にも熱が入らない。

90分、左サイドのスルーパスに仲川が抜け出して久しぶりの決定機を迎えるものの、これは菅野が距離を詰めてシュートをストップし、ゴールを死守。一方の札幌は追加タイム4分、自陣からのクリアボールを青木がヘディングで処理したボールが、アプローチをかけていた途中出場の大森にこぼれる。青木がパスを戻すと見込んでいた野澤は前に出てきており、東京のゴールはがら空きだ。大森がセンター付近からすかさずロングシュートを放つと、ボールが放物線を描いてゴールに突き刺さり、これで1-3。これで勝敗の行方は完全に決した。残りの追加タイムもあっという間に過ぎ、このまま試合終了。後半に大逆転を許した東京はリーグ戦4試合勝ち無しでホーム最終戦を終え、ゴール裏からは今日も痛烈なブーイングが飛んだ。

impressions

終わってみれば札幌の完勝だった。シーズンの着地点がほぼ見えている中、順位表のボトムハーフのチーム同士の対戦となったが、そんな中でも違いを見せつける勝利だったのではないか。5月に行われた今季1度目の対戦ではホームの札幌が5-1と大勝しているが、アウェイの立場となっても試合内容に大きな違いはなかったように感じる。対札幌では「ホームで強く、アウェイで勝てない」傾向が見られ、味スタでは2017年に敗れて以来しばらく負けが無かったが、今回は遂に黒星を付けられることとなった。それだけ(札幌との相対比較で)チームが勢いを失っているということなのかもしれない。

札幌は前半は東京に何度も決定機を作られたが、後半の修正が見事に的中した。前半に何度か裏を取られることの多かった福森と菅の左サイドユニットを、中村と青木に変更。これが攻撃面において実を結んだ。中村は後半早々にドリブルで運んでアタッキングゾーンまで侵入し、後半も攻勢を続けたい東京を牽制。そして高い位置取りからアーリー気味の低い弾道のクロスを送り込んで2アシストを記録。ここ数試合、背後のスペースの対応で脆さを見せる東京の守備の泣き所をピンポイントで突いてきた。相手の嫌なところを的確に突いてくるペトロヴィッチ監督の采配に一本取られた形といえるだろう。終盤は押し込まれたが、東京の攻めが比較的単調だったこともあって、概ね「作業」のような感じで守れたのではないか。DFを統率する岡村の負傷交代というアクシデントにも冷静に対応できていた。

東京は前半は良い内容だった。札幌に裏をとられる場面も無かったわけではないが、それよりも積極的に前へ繋いでいく意識が見られた。試合前日に更新されたプレビュー記事で、流動的なポジション取りへのトライに関して触れられていたが、なるほどその通りで、特にDFラインは立ち位置を変えてみたり、積極的に攻め上がったりしていた。攻撃に関与しやすいポジショニングで、実際それは効果的だった。ここしばらく複数得点できていない窮状をなんとかしようという意気は感じられたし、実際それで前半のうちに先制することもできた。

しかし、後半に札幌が戦い方を変えてくると途端に前半の勢いが尻すぼみしてしまった。失点自体は、ここ最近のチーム事情を考えればさほど驚きではない。特に小柏のような一瞬で裏を取れるアジリティのあるタイプの選手には、木本と森重のコンビではちょっと対応が難しい(シーズン前半から露見していたことであるが)。今日のケースでいえば、後半から出てきた中村のような、ボールの出所となる選手を抑えることができなかったのが痛かったといえるだろう。ベンチワークにおいても完敗だった。札幌が後半頭の2枚替えで一気に流れを持っていったのに対し、東京は66分に2枚替えを行ったが、これといった効果はほとんど見られなかった。青木と東の投入でまずは中盤を安定させ、その後にクロッサー(白井)、最後にフィニッシャー(熊田)を入れるのは、手順としては妥当なのかもしれないが、物事はそう上手くは運ばない。投入のタイミングを早めたり、あるいはシステム変更したりといった選択肢は全く無かったのか、疑問が残る。

そしてベンチワーク以上に気になったのは、後半の途中からスタジアムに漂いまくっていた「閉塞感」だ。このサッカーを続けていても、きっとゴールはこじ開けられないだろうな・・・と感じてしまう、あの手詰まり感である。攻めてはいるがそれ以上のものはなく、ゴール裏の応援も単調で、時間だけが淡々と過ぎていき、気がついたら負けている―。外向きには「自分たちのサッカーを貫く」的な聞こえの良いフレーズは並ぶが、その実は悪い意味で「作業化」したサッカーであり、結果が伴わない。いったい何度こんなシーズンを経験してきただろうか。具体的な数値目標を掲げないまま「目指すはリーグ優勝!」と大風呂敷を広げ、しかしシーズンの早い段階で上位争いから脱落し、目標を見失ったチームがどんな結末を迎えるか、我々は2017年や2021年の実体験を以て知っているはずだ。それにも関わらず、同じことが何度も繰り返されている。試合後のホーム最終戦セレモニーでマイクの前に立った森重は「何年か前にも同じことを言ったが、チームだけでなく組織の一人ひとりが考えて行動しなければならない」という趣旨の発言をしたが、結局のところクラブ全体のマインドが変容できていないことが改めて白日の下に晒された。この「停滞」を打破するためにどうするべきなのか。ひとりのファンである自分も含め、クラブに関わる全ての人々が厳しい現実に向き合わされている。

今節の敗戦により、東京は札幌と順位が入れ替わって12位に後退。ここ近年においては最低レベルの成績でシーズン最終戦を迎えることになった。次節はアウェイで湘南ベルマーレとの対戦。湘南は本日同時刻で行われた横浜FCとのJ1残留争い直接対決を制し、1試合を残して来季のJ1残留を確定。最終戦はプレッシャーから解放された中で来季に繋げるためのサッカーをしてくるだろう。東京にとっては、現エンブレムを胸に戦う最後の試合となる。何も成果を出せなかった1年の最後に何を残すのか、クラブとしての矜持が問われるファイナルウィークとなりそうだ。

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