アカデミックスキル(3)学術的な主張の組み立て方

論文を書く際に必要なのが、学術的な主張です。この主張がなければ、論文としての価値は著しく低下してしまいます。今回の記事では、その組み立て方に焦点を当てます。

そもそも学術的な主張とは何でしょうか?

よくある誤解は
 1.正しい答えがある。
 2.いつも賛成か反対かの議論する。
 3.話題に関して個人的な感情を表明しなければならない。
 4.結論を導き出さなければならない。
というものです。

しかし、実際のところは
 1.疑問に対する主張、立場、解釈、観点が表明されている。
 2.理由がある。
 3.証拠に基づいている。
 4.異なる観点や立場から考察する。(必ずしも賛成・反対では
   なく、中立の立場もあり)
 5.結論づける必要はないが説得力がある。
 6.論理的な構成に沿う。(=根拠に基づく)

これらが大事です。
上にあげたことから分かることは、学術的な主張というものは絶対正しいと言えるものでは無いということです。
絶対に正しいとされるのは事実(fact)と呼ばれるもので、それと主張は切り離されなければなりません。
学術的な主張は、様々な議論を呼び起こしうるもので、他者からの批評を受け入れうるものです。
逆に言えば、様々な研究者からの議論が巻き起こるようなものが良い学術的な主張ということです。
しかし、その主張も何でもいいわけではなく、しっかりと理由や根拠に基づいたものでなければ説得力が生まれません。
理由と根拠を明記した主張であり、さらに議論を巻き起こす主張、そのような主張を組み立てるのが大事な目標になります。

それでは、実際に学術的な主張を作ってみましょう。
ステップは以下の通りです。

Step1.自分の立場を考える
 講義を聞いたり本を読んだりして浮かび上がってきた質問や疑問に対する自分の立ち位置(賛成・反対・中立)を考えます。自分の最初の反応はどうだったでしょうか?もしかしたら、根拠を集めている内に自分の立ち位置が変わるかもしれません。

Step2.講義や文献に立ち返る
 どんな重要なアイデアが示されているでしょうか?また、そのアイデアの根拠となる理由や根拠は何が挙げられていましたか?

Step3.著者の学術的な主張やタイトルを疑問文に変えてみる。
 著者の主張やタイトルをYes/No Questionに変えてみましょう。その疑問文に答えようとすることで、自分の立場・なぜそう思うのかを考える良いきっかけになります。そして、その疑問文に対する根拠は何か?それは自分自身の疑問とどう関連するだろうか?どう解釈するか?といった質問を投げかけながら、答えを探していきます。
Step 4.他の著者はどう言っているかを探す
 ある主張に対して自分の立場が固まったら、他の研究者がどのような立場にいるか調べます。ポイントは自分の立場と相反する著者の情報を積極的に集めることです。その情報が後に、説得力につながります。  

Step 5.主張に対する根拠は自分にとってどんな疑問を抱かせるか
 自分と反対の立場の研究者があげている、理由や根拠について、どのような疑問を抱くでしょうか?もし、その際に相手の理由や根拠の弱点が見つかった場合、それは、自分が支持する立場の強みになりえます。

Step 6.何を読み手に対して説得させようとしているか
 自分の主張に対する理由や根拠の情報が集まったら、どれが一番説得力があるか考え、優先順位をつけます。一番強いのは自分とは反対の立場の理由や根拠に対して反論することです。他者の意見を引用することで、建設的な議論につながることが期待できるからです。

Step 7.マインドマップで主張に対する理由や根拠を関連付け合う
 マインドマップを使って(真ん中に核となる疑問やアイデアを書き、その周りに関連する答えと、その答えの論拠を書く)、今までのアイデアを整理します。別々のアイデアだと思っていたことが、実はつながっていたということが有りえます。複数のアイデアを一つの理由にまとめたり、反対に一つだったアイデアを二つの分けることもあるでしょう。それらを可視化してくれる有効なツールです。

アイデアがまとまったら、実際に自分の学術的な主張を論文化していきましょう。
ステップは以下の通りです。

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