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アラヒフノウタ 〜団塊Jr.〜 #16

16   しんしんと


年に数回降る雪
小学生、中学生と
毎年数回ずつ経験し学んだ

寒いとか交通機関がマヒして厄介とか
もちろん大人の事情で困ることはあるが
基本的に嫌いではない

それは新潟と青森の血が流れていることを
考えれば全く不思議ではない

日中降る雪よりも
未明から朝にかけて
そして昼ぐらいまで続く
そんな降り方の雪が良い

朝目覚める
しんしんと
とはよく言ったものだ

今更であるがアラヒフのオイラは、
諸先輩方の日本語表現の豊かさに
感謝しないではいられない

家は茨城県南部の田舎
交通量が少ないとは言え
ダンプやトラックの抜け道となる県道脇
時折、走り去る車の音が響く

それは普段のことで雪の日は違う
朝目覚めるとしんしんとしているのだ

雪が降っている時は
なんともいえない静けさ

しんしんと降る雪
起き上がり窓のところから
カーテンを開け外を見る

しんしんと舞う雪を見ると
さわりたいと必ず思う
そして窓を開ける

しんしんと降る雪とは
対象的に頬を切り裂くような
冷たい風が通り抜ける

驚きと後悔
でも好奇心が勝つ
無敗だ

一歩ベランダに出る
まだオイラにとって
ベランダの屋根が邪魔だった

さらに一歩
降る雪を触るまで
窓を閉めて戻ろうとも思わない
装いはパジャマのまま

冷たい外の空気が脇をすり抜けると
入れ違いで背後から母の悲鳴が
背中に突き刺さった

オイラの聴力の弱さは
この悲鳴も原因の一つか
それはないか

オイラは無意識に窓を閉めた
そのままオイラはベランダの窓の外

母の何語か分からない叫び声が
かすかなノイズに変わると
オイラは庭へと振り返る
しんしんと降る雪へ

雪がゆるりと漂う
雨の時のような
水の跳ねるような音はなく
しんしんと雪が地にのる

あの静けさ

あの音






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