お大事にぃ。
スーパーにて、背のちっちゃなしわくちゃのおばあさんが、私を見ながらニコニコしていて「なんだろう?」と思いつつ「いらっしゃいませ」と声を掛けてみたら、いきなり私にこう言った。
「飲み屋で知り合った変な男が、さっきココにいたのよ!」
”そのことと私と何の関係あるんだろう?”と当然ながら思ったけど、まぁ仕方がない。これも接客のうちだ。ちょっとおかしな感じのおばあさんだったけれど、話を聞いてみた、今思えば、その異常な満面の笑みからして早く気付くべきだった。飲み屋のママがどうのこうのと、私に取り留めもなく話し始めたのだ。
やっぱり声をかけるんじゃなかった思いっきり後悔した。でも、時すでに遅かった。これは話が長くなるパターンだ。それでも仕方がないので、一応、話に付き合っていたら、案の定、これがなかなか終わらない。
「男につきまとわれていてね、私のお金が目当てなのよぉ!」とまで言い出した。なんだかほっとけない状態になってきた。「まだ店内にいるのでしたら、警察を呼びましょうか?」と聞いてみたが「いいの、いいの、もう済んだから」と笑うばかりでなんのことやらだった。
冗談?それとも・・・なんなのだ?
たぶん、ちょっぴり本当で、実はかなりウソなんだと思う。おばあちゃん、話し相手が欲しかっただけなのかなぁ?それだったらいいのだけど。
店員は、基本的に笑顔でなんでも聞いてくれる(?)ので、ある意味、お年寄りに好かれたりする。それはそれでうれしいけれど、ちょっと困ることも多い。
別れ際に「話を聞いてくれてありがとう」と、私にお礼を言ってくれた。
やっと私は売場の店員であることを思い出し、感謝のつもりでいつものように「ありがとうございます」と言うつもりが、病院みたいに「お大事にぃ」と、思わず変な言い方をしてしまった。やれやれ。
でも、それで本当によかったのかなぁ?
今になって、ちょっと心配になってる。
おばあちゃん、本当にお大事に・・・。
最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一