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累計調達2.5億円超えベンチャーのストラテジーファイナンス

実はこの度弊社の調達額が累計で2.5億円を超えました。
昨今のベンチャーであればそれなりに大型の資金調達をすればプレスリリースにて配信したりするものですが今まで一度も公表していませんでした。
せっかくなので僕らがやってきた財務戦略を簡単に紹介するとともに、スタートアップしようとか起業しようとか思っていらっしゃる方に少しでも参考になればいいなと思った次第です。
ちなみに経営者の方からしたら当たり前でしょって話ばかりなのでそういった方はスルーで。。

ファイナンス戦略の重要性

めちゃくちゃ当たり前のことをまずお伝えすると企業を経営していくにあたり「お金」は超重要です。結構経営者が出版される本ではお金じゃないよね的な事が書かれてることが多いのですが、そもそも本を出版されるレベルの人の話なので大概は既にお金に困っていないorそういいつつもしっかり座組が出来てるのいずれかです。100%真に受けて起業したての人がお金はそこまで重要じゃないと言ってる経営者はマジで信用されないので注意してください。

さてお金にも種類があります。大きく分けると「売上」と「運転資金」かなと。本当はこんなもんじゃないですがざっくりこんな感じです。
サービス先行型のスタートアップ企業はユーザーがついてきてマネタイズがしっかりできて黒字化するまで時間がかかります。それまでは毎月赤字です。メンバーの人件費やオフィスやPCのお金やツールのお金など個人の時では考えられないぐらいのお金が法人化すると掛かります。試算表を作って毎月のキャッシュアウトを計算して、それを×赤字月が運転資金になります。
一方で割とすぐに売上に繋がるモデルがあります。それがクライアントワーク型です。企業に依頼された仕事をこなして売上とするパターンです。この場合は営業が必要だったりしますが、赤字期間は極めて少なくて売上も立てやすいのでこのモデルの場合は計画通りにいくことも多いです。
いずれのパターンでも売上と運転資金は起業したてばかりだけではなく、常に考える必要があります。

昨今のコロナウイルスでもろに影響を受けた業種でもしっかり運転資金を確保していた会社は売上が減しても潰れないですし、逆に現金があまりなかった会社はすぐに倒産するしかなく、破産申告など最近はニュースが賑わっています。

多くの人が履き違えている倒産の定義とネガティブイメージ

これは僕も元々は間違った認識をしていました。弊社の外部CFOに色々教えてもらったのが数年前なのでそこから意識は変わったというのが実際の話でほぼ受け売りです。(よかったらCFO紹介します)

多くの人は赤字=倒産であったり借金=ヤバい会社といったイメージを持っているかもしれません。しかしながらこれは大きな間違いです。
実は多くのサービス先行型のスタートアップは赤字経営です。先程も言ったとおりマネタイズまで時間が掛かります、単月黒字化するまで数年を費やすところもあります。それでもどうして倒産しないのかっていうと現金を持っているからです。会社を潰さないためには現金を持っておく必要があり、逆に現金を保有していたらいくら赤字を出しても会社は潰れないのです。

また少し話は変わりますが借金=ヤバいというのはあくまで個人の負債かなと思います。事業主でもない人が借金をする理由というのはギャンブルとかに溺れてしまったり、返せるアテはないけど生活のために借りる、などを繰り返していくようなことが多いのかなと。しかしながら多くの人が働いて収入を得ている中であれば、収入が翌月から突然無くなりますといったことは非常事態を除いてはマイノリティなのかなと思います。
会社及び事業主は違います。そもそも赤字の会社は借金すら出来ません。個人に置き換えてもらうとわかるのですが、例えば飲み会などで友人にお金を貸す(立替える)シチュエーションになった時、普段からお金がないっていう人にお金を貸しても返ってくる可能性って限りなく低いですよね。その人が仕事をしていなかったら余計に。取り立てるにも体力がいるしプラスになることなんてありえません。その点、きちんと働いていてお金は持っている、でもその時の飲み会で持ち合わせがない友人だったら信用して貸せますよね。
なので会社の場合でいうと金融機関から借り入れができる会社は信用があり黒字で健全な経営をしていると言えるのです。

エクイティとデッドファイナンス、調達方法の違い

調達方法には大きく2種類あります。エクイティ(株式)による調達とデッド(借入)による調達です。
単純に言うと他の投資家に頼んで出資してもらい上場または売却を目指していくのか、金融機関から融資してもらうのかの違いになります。
サービス先行型のスタートアップは事業単体で黒字化するのはかなり先になることが多いので資金調達は前者しか出来ないことが多いです。メリットは人脈を持っている投資家に入ってもらうことで事業を一気にグロースさせられたり、調達金額が大きいです。デメリットとしては上場や売却などのいわゆるゴールを目指すことが前提となりますし、自分以外の株主が入ってくるのでハンズオフで経営出来ればいいですがハンズオンの投資家も多く大きな意思決定を共有したり、KPIを追ったり、ある意味主軸の事業以外のことをできなくなります。
クライアントワーク型はしっかり売上を作っていっていれば金融機関から信用が得られやすく、融資してもらえるケースが多いです。売上利益が出てるのに融資をもらう必要ってあるの?って話は次章になります。

数億円規模のベンチャーが2.5億円超えの資金調達をした理由

ここからが本題です。前置きが長くなり申し訳ありません。。
僕たちは売上規模でいくと数億円のベンチャー企業です。そしてこれまでの説明からするとクライアントワーク型のビジネスモデルを主軸としています。

初めて資金調達をしたのは3期目ぐらいだったかなと記憶しています。
自分がジョインしたのが2期目の頭ぐらいだったのですが、この年は事業牽引していく上で売上を上げることで精一杯でした。(1期目は年商3000万円ぐらいで2期目に1億円を目指していた)
3期目に入ってから深く経営に入っていくうちに余裕も出てきてファイナンスの話を代表の門田としているうちに会社の現預金が当時1000万円ぐらいしかありませんでした。
それはこれまでの利益の積み重ねで貯金してきたものではあるのですが、当時の事業規模を考えるとあまりにも少ないと感じたのがきっかけです。
確かに着実に売上利益は出ているけど、新しいことにチャレンジしたりする予算は当時全くなく”なるべくお金をかけない”をモットーとしていました。(今でも企業文化になっているので良いことではありました)

とはいえ1億円の貯金を作ろうとした場合、例えば年商1億円で営業利益が3000万円あったとして、そこから30%程税金が掛かり、純利益になるのは2000万円となります。もちろん売上が高くなって成長していければそんなことないのですが、売上高を高めようとすると人材採用の先行投資が必要だったりして営業利益率は下がります。先行投資をしてレバレッジをかける必要があったりするのに先行投資も出来ない、そして貯金が出来るまで数年掛かってしまう、その間何があるかわからない、、と。
しかしそのタイミングでCFOと出会うきっかけがあり、借入により現預金確保という財務戦略を開始したのであります。
最初は2000万円の借入からスタートしました。もちろん一つの金融機関ではなく複数の金融機関から、少しずつ、合わせて2000万円です。
売上はもともと伸びていたのでその後追加調達や借り換えなどを繰り返して金利のマネジメントと決算時の着地、月次推移などを見ながら約3年で2.5億円超えの調達にいたりキャッシュリッチな会社となりました。

資金調達を公表しない理由

昨今のスタートアップ、テクノロジー系が主にですが、アーリーでもシードでも資金調達のニュースが目立ちます。これも一種の戦略でコーポレートブランディングであったり、採用のためだったりするのかなとは理解しています。
しかし僕たちの考え方として資金調達は決してめでたくないということがあります。いくら調達しました!というニュースは話題になります。会社としての認知も上がるので良いと思います。しかしあくまで「人のお金」であることにかわりありません。エクイティでもデッドでも大事なのは資金調達そのものではなくて、その後の事業をハンドリングすることで自社の売上が上がることだと思っています。そんな考えもありこれまで一度もプレスリリースはしませんでした。

資金調達の用途

勘違いするのは資金調達をしながらキャッシュリッチになって何をしたか、というところです。エクイティで1度に大きな額を調達をした場合は戦略的に採用だったり広告であったり事業拡大に使うべきだと思います。運転資金を垂れ流すだけでは事業は大きくならないので。
しかしながらデッドファイナンスによる調達は返済があります。なので僕たちは使うために調達したのではなく使わないために調達しました。
そうすることで利益を積み上げて貯金をするという考え方ではなく利益を先行投資に回すことが出来ます。フリーキャッシュフローの中で採用や投資をするために保険の運転資金は金融機関で確保して、利益を事業拡大に回すことでクライアントワーク型でも最速でスケールすることが出来ます。

ただし最初から1億円超えの調達はなかなか難しいです。
デッドファイナンスの場合は徐々に金融機関と信頼関係を積み重ねて置くことが大事で、使わずに蓄えておくことで未曾有の危機でも焦ることなく冷静に最適な経営判断が出来ます。

僕たちはデッドファイナンスを選択し、上手く調達は出来ましたがこれは事業によってよく吟味して選ぶとよいと思います。

潤沢な資金による失敗

最後に資金調達における失敗を共有します。

そんなわけないじゃん、とか他人事だと思うと全く共感は出来ないと思いますが事業家で資金調達を考えている方なら決して対岸の火事だとは思わない方が良いです。

数千万、あるいは億を超えるお金が入ってくると普段からお金持ちでない限り個人で扱う金額ではありません。そのため感覚が麻痺します。
感覚で個人が背負えるのはせいぜい1000万前後だと思います。

僕らも派手に使ったわけではないですが、巨額のキャッシュを得たことで正しい用途なのかどうか丁寧に判断しなくなってしまいました。
そのため人材採用において大きな失敗をし、大きな損失を出しました。

これは僕たちの場合は人材採用でしたが、多くのことに当てはまります。
使用頻度が少ないツールであったり販促品、無駄なプロモーションであったり、接待交際費。会社である以上事業に必要なものに対して必要な金額を使い適切なリターンを求め続けなければならないのですが、多くのお金を持ってしまうと「使う」ことに対しての思考が少しずつ薄れていきます。

なのでいくらもっても費用対効果を意識して最適なことに使っていくように徹底して、調達後の方が経理をしっかり強化していくべきかなと思います。

※僕たちはこれで大失敗してヤバいです!みたいな話ではなく、早期に損切りをしたので傷は浅く済みました。それでも全然大丈夫なのは日頃きちんと最適化しているからだと思います。

ストラテジーファイナンスがこれからの事業家に役立つことを祈ってます!

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