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【全文公開】スタンフォードMBAに合格したエッセイを、5年経った今振り返ってみた(後編)~なぜ当時描いていたゴールを捨てたのか~

前編はこちら

2018年10月23日(火)。
ランサーズに入社して数カ月が経った時。フリーランスの「つながり」の場を作りたくて、千葉県での1泊2日の合宿を企画した。
選考を経て集まってくれた6名のフリーランスは、それぞれスキルも違う、経験も違う、性格も違う。そんなメンバーで、2日間かけて、お互いの好きや得意を見つけ合い、セルフブランディングについて考えてみよう、というのが合宿の目的だった。

「私は、多趣味なライターです」

そんな風に自己紹介してくれた女性がいた。シャイなんだけれど、一瞬にして好きになってしまいそうな、そんな風貌のTさん。

「なんで私がここにいるのか未だに分からないんです、他の皆はめっちゃすごい人たちなのに…」

そう早口で話す彼女とペアになったのは、女性ウェブディレクターのIさん。その二人の会話で起きた出来事が、のちに私自身の人生に大きく影響を与えてくれることになった。

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今、もう一度スタンフォードのエッセイを書くとしたら、オープニングはこんな感じになるかなあと思います。

5年前に書いたバージョンを前編の記事で公開したのですが、実は、これを読み返していたときに、気づいたことがあったんです。
What matters most to you, and why? という問いに対する答えが、私の中でガラリと変化、いや、進化していたんです。

そこで、後編となる本記事では、
・この5年間で自分自身の「答え」がどう変わったのか、と
・なぜ変わったのか、
について考察をしていこうと思います。

「お前の話はもういいわ」と聞こえてきそうですが、私は、自分自身のこの変化を考察することで、たとえMBAや留学に興味がない方であっても "What matters most to you, and why?" について考えることが、一歩前に出るためのキッカケになるんじゃないかということを伝えたい。
そんな思いで書いています。もしよかったら是非、お付き合いください。

今、書くとしたら?私のエッセイ2.0

5年前に書いたエッセイのキーワードは「つながり」でした。
それは今の私にとってもいまだにとても重要であることは間違いありません。でも、今は、その「つながり」の先にあるものが見えるようになった、というのが一番大きな変化です。

ここで、先ほどのTさんの話に戻し、エッセイ2.0の続きを書いてみます。

「ライターとして毎日必死に目の前の仕事をこなしてるだけです。」
そんな風に話していたTさんだが、Iさんとペアで話していく中で、趣味がなんとイラスト、写真、ギター、ウェブデザインなどと、ものすごい多岐にわたっていたということが判明した。
そんな彼女のイラストを見せてもらったIさんは、思わずこう言った。

「え、これ、普通にプロレベルじゃない?仕事にすればいいのに!」

この言葉だ。
この言葉を聞いたTさんは、生まれて初めて、「趣味を仕事にしていいんだ」ということに気づいたのだった。

それから数週間後、彼女は肩書を「ライター」から「マルチクリエイター」に変更した。持っているスキルは何も変わらないけれど、仕事の幅は大幅に広がっていた。キッカケとなったのは、Iさんの一言。それによって得られた「気づき」が、彼女を大きく変えたのだ。

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今の私にとって、もっとも大切なもの。

それは、「人の可能性が開花する瞬間」です。もう少し正確にいうと、そんな瞬間を生み出すためのきっかけを提供することで、開花した瞬間をその人と共有できていること。
そして、そんな瞬間を生み出すために必要な「きっかけ」になるのが、人との「つながり」、そしてそこから得られる「気づき」なのです。

Tさんは、Iさんとのつながりを通じ、趣味や得意なことを仕事にしていいんだということに気づくことができた。そしてその気づきの瞬間こそが、彼女を「マルチクリエイター」へと変身させたのです。

オリジナルのエッセイで書いていたエピソードも、実は同じことがいえます。
折り紙のおかげでイギリスの同級生たちとのつながりを作ることができた私は、それによって、「自分はここにいていいんだ。日本人でいていいんだ」という気づきと自信を手に入れました。
また、英語ができないからとビジネスチャンスを逃し続けていたクライアントさんは、自分たちで書いた英文メールで新規取引先を見つけることができた瞬間に「僕らでも海外の会社と取引していいんだ」ということに気づきました。

当時の私の思考は「つながり」だけで止まってしまっていたけれど、実はその先にある「気づき」と「可能性の開花」こそが、自分のワクワクの源泉だったのです。

もう一つの「進化」

実は「つながり」以外にももう一つ、大きな変更点があります。それは、「教育」というゴールについて。

当時は、日本と世界とをつなげるための英語教育を改革したいという想いを書いていましたが、留学生活の中で気づいたことがいくつかありました。

「英語」じゃない。英語を勉強する以前に、そもそもなぜ英語を勉強したいのか?なぜ世界に出たいのか?と思わせる「キッカケ」のほうが大事だなということに気づきました。(もっというと別に英語が必須だというわけじゃないなとも)

「教育」でもない。教育はもちろん、超大事です。でも、気づいてしまったんです。子供たちの目はキラキラしているのに、その親であり先生でありロールモデルであるはずの大人たちの目が輝いていないのではないか…?ということに。私は、まずは、大人が生き生きとするための活動をしたいと思うようになりました。

そういった気づきを経て、もともと描いていた「英語教育」というゴールは一度捨てることにしました。そして、そのさらに深いところにあるゴールを目指す決心をしたわけです。

なぜ、進化したのか

What matters most to you, and why?に対して、より深い答えにたどり着けた理由。それはとてもシンプルで、5年間、色んな経験をしたからです。

教育ビジネスについてのあらゆる授業で勉強したり、ペルーの教育系NPOやミャンマーの学校やサンフランシスコの教育系ベンチャーでインターンをしたり、シリコンバレーの最先端ハイテク教育現場に視察に行ったり、異言語教育の取り組みをしている機関や学生との交流の場に足を運んでみたり。

そしてその一つ一つの経験の中で、「ワクワクするかな」とか「ここで働きたいと思うかな」とか「目指してるビジョンに共感できてるかな」とか、そんなことを(無意識に)考え続けていたんだと思います。その結果、「英語じゃない」「教育じゃない」という気づきに至ったわけです。
(こうした一つ一つの行動を通じて自分のやりたいことを見つけていく作業のことを、私は「人生のプロトタイプ(=試作品)」と呼んでいます。これについてはまた別の機会に記事を書いてみようかなと思います。)

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でも、実をいうと、スタンフォードを卒業する時点では、何がしたいのかが全然定まっておらず、めちゃくちゃ焦っていました。
周りが皆「起業する」とか「VCに入る」とかって進路をどんどん決めていく中で、私は「英語教育をやりたいわけではないということは分かった。でも、じゃあ、何をしよう…」という状態だったのです。

結果として、その後マッキンゼーに復職したわけですが、実はそれがキッカケでランサーズを知ることになり、「これだ」と思える仕事である「新しい働き方LAB」を立ち上げることができました。人生、いつどんなチャンスが降ってくるか分からないものですよね。

こうして、5年かかってやっと、"What matters most to me, and why" のVersion 2.0 が出来上がったというわけです。

ゴールを仮置きする、というススメ

振り返ってみて思うのは、あの時、スタンフォードのエッセイのために考えて考えて考え抜いて、「日本の英語教育を変革したい」という仮のゴールを設定していたからこそ、その後ありとあらゆる場に足を運ぶことができたんだろうなということ。

仮のゴールがなくて、漠然と「なんか頑張ります!」というだけだと、そもそもどこから手を付けていいのか分からないし行動するにもしようがない。

スタンフォードでは、「英語教育」「教育」というキーワードに引っかかるものはすべてチェックするようにしていたし、「教育と言えばEikoだよね」という風に認知されることで、色んなところに誘ってもらったり声をかけてもらえたりしました。授業選びも、インターン選びも、「英語教育」になるべく近いもの、という基準があったので、悩まなくて済みました。

でも、結局英語教育を辞めたんだから、無駄だったじゃん!と思いますか?

とんでもない。あの時にあれだけの経験をしていたからこそ今の自分がいます。そうじゃなかったら、未だに、なんとなく教育やりたい気がするなぁ~なんてつぶやきながら、マッキンゼーにいたかもしれません。(もちろんそれはそれでもしかしたら超充実していたかもしれないので、何が正解かは分かりませんが。)

つまり、ゴールを仮置きすることで、行動しやすくなるんじゃないか。そして、その行動の結果として、新たな道が見えてくるのではないか。
そんなことに、気づいたんです。

「キャリアゴールは何ですか?」
「5年後、どうなっていたいですか?」

面接のよくある質問TOP5に入るであろうこの質問。

なんだか将来を今決めなきゃいけない気がして、窮屈な質問だなと思っていたのですが、「少なくとも仮のゴールがある方が行動しやすい」という観点でみると、むしろ結構良い問いなのかもしれないです。

強調したいのは、「仮」でいいんだよ、ということ。

だって、考えてみてください。
5年前の2015年に描いていた2020年の未来予想図と、実際の2020年。
計画通りの人生になってますか?

なっている人なんて、ほとんどいないですよね。

人は、色んな経験を経て、変化するもの。進化するもの。
だから、まずは行動しやすくするための、仮ゴールをつくっちゃえばいい。そして、経験値を増やすごとに少しずつ、ゴールを変えていけばいい。

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What matters most to you, and why?

最後に伝えたいのはやっぱり "What matters most to you, and why?".
仮のゴールを考えるうえで、大きなヒントを与えてくれるのが、この問いなんじゃないかなと思うからです。

What do you want to achieve?(達成したい夢は?)とか
What are you passionate about?(パッションをもっているものは?)
ではなく、そのもっともっと深いところにある一番大切なもの。

スタンフォードの合格者の中には、堂々と「家族」と書いている人もたくさんいました。趣味、人、テーマ、課題、などなど、何を書いてもいいんです。でも、結局はそこが、自分らしく生きるためには一番大事なんじゃないかな、なんて、最近すごく思うようになりました。

私自身、このnoteを書くプロセスを通じて、改めて自分の軸が明確になってきた気がします。すごい威力なんです、この問い。

皆さんも是非、考えてみてはいかがでしょうか。

1. What matters most to you, and why?
(あなたにとってもっとも大切なものは何ですか。そして、なぜですか。)
2. Why 〇〇〇〇〇?
(これまで進んだ道、もしくはこれから進みたい道を〇〇に入れてみて、なぜそこに進むのかを考えてみてください)

もしよかったら、考えてみた結果何かが変わったかどうか、シェアしていただけると嬉しいです。(何にも変わらなかった!全然思いつかなかった!というご意見も、遠慮なく。そういう場合どうすべきか、私も一緒に考えたいです)。

前編、後編あわせるととても長くなってしまいましたが、何か皆さんにとっても新しい気づきになったのであれば嬉しい限りです。

ここまでお読みくださり、本当にありがとうございました。

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