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中国スパイ天国、ハンガリー(仮題・未完)

英語原文:How Orbán’s Eastern Opening brought Chinese spy games to Budapest
ハンガリー語原文:Kínai kémjátszmákat hozott Budapestre Orbán keleti nyitása

2021年3月14日
パニ・サボルチ(PANYI Szabolcs)@ direkt36

参考情報
ハンガリー首相一覧(民主化以降)
ハンガリー国会

ブダペストのクラシック音楽のラジオ局であるKlasszikラジオのリスナーは2011年6月24日に奇妙な出来事に遭遇した。ヨーロッパのクラシック音楽の放送が突然中断され、中国の音楽とトークショーの放送が始まったのである。中国をテーマとするラジオ放送局の元シニアエディターであるハンコー・ヴィクトル氏は 「放送されていたワーグナーやバッハの曲の演奏が途中で止まり、酷い訛りのハンガリー語を話す中国人ホストの紹介で、泣くような音の楽器(※二胡など?)が奏でる中国の伝統音楽の流れ始めたのです」とDirekt36に語った。

ラジオ局の突然のスケジュール変更は、警察に先導された1台の車が空港からブダペスト中心部に到着するまでの時間と合致していた。元スタッフによると、「リムジンに乗っていた1人の中国人にハンガリーのラジオでも中国の番組が放送されていることを示す」ために中国のショーに差し替えなければならなかったとのこと。その影響力のある乗客は、ハンガリーに到着したばかりの中華人民共和国の温家宝首相であった。中国の首相が前回ハンガリーを訪れたのは24年前のことである

番組を変更する指示は、中国の首相が到着する2日前に、中国政府の国際ラジオ局である中国国際放送(CRI)から電話で届いた。その後、Klasszikラジオは、中国の歴史や中国とハンガリーの友好関係に関する映像を受け取り、適切な時間に放送するようにとの指示を受けた。Klasszikラジオのハンガリー人の経営者は、これを知ったとき、そのようなことを自分が承認するなどあり得ないと述べた。「彼は放送禁止用語を連発し、お互いに放送を指示された素材の内容を知ったときにはショックを受けた」とハンコー氏は続けた。 しかし、最終的には、選択の余地がないという結論に至った。

Klasszikラジオは財政的に中国国営ラジオに依存していた。2010年12月、同局は、CRIのヨーロッパの協力会社の1つであるフィンランド登録で中国人所有のGBTimesと提携し、同社に放送時間の一部を売却した。Klasszikラジオは、この生まれたばかりの中国との提携を台無しにしたくなかった。ハンコー氏によると、CRIからの指示はGBTimesのフィンランドの本社からも念押しされていた。

温家宝首相のために特別に用意された中国のショーは、黒いリムジンの横に座っていた通訳によって翻訳され、同首相は満足していたしていたとのこと。少なくとも、中国のパートナーが後でKlasszikラジオのスタッフにそう語った。この出来事が事実であることは、Klasszikの当時の上級管理者もDirekt36に認めた。

Klasszikラジオの中国のパートナーだけではなく、ハンガリー政府も中国の首相がブダペスト訪問で快適に公務を進められるように努力を惜しまなかった。ハンガリーの警察は、チベット活動家グループが横断幕や叫び声で中国の首相の車列に向かって抗議するのを阻止した。また、ハンガリーの移民局は、訪問当日に国内在住のチベット人数人を召喚した。これは2010年にハンガリー社会党から政権を奪取したフィデスの政策の著しい転換を示している。その僅か2年前にフィデスの有力な政治家数人がブダペストの中国大使館前でチベットの開放を求めて抗議活動を行っていた。

これらの中国首相訪問時の出来事は、その後10年間のハンガリーと中国の関係を示す予兆であった。中国がいかに政治的な影響力を行使するかに、あの6月の晴れた1日が光を当てた。

だが、オルバーン・ヴィクトル(※2010年よりハンガリー首相、二期目)が大量のチャイナマネーを期待して手掛けた「東方開放」政策の結果として中国から実質的な投資が行われることはなかった。一方、ハンガリーにおける中国に対する友好的な環境は、ハンガリーに進出する中国の企業、団体、留学生だけにとどまらず居住者国債保有者をも利用してハンガリーに足を踏み入れた中国の諜報にとっては好都合であった。

Direkt36は、長期にわたる調査、文書やデータベースの分析、60回以上のインタビュー、背景の会話を通じて、ハンガリー政府自体の支援によって過去10年間でハンガリーにおける中国の影響力がどのように強化されたか、そしてどのような予期しない結果がもたらされたかを探究した。ブダペストの中国大使館は、この記事に対するコメントの要請に応じなかった。

第1章 東風吹くや

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2009年12月のオルバーンの北京旅行は、フィデスと中国の関係における大きな転換点となった。「世界地図上でのハンガリーの位置は明らかで、ハンガリーはNATOと欧州連合の加盟国である。これは、ハンガリーは西側の旗を掲げていることを意味するが、こんにちの世界経済では東風が吹いている。それに従って帆を制御する必要がある」とオルバーンは北京からハンガリーの国営通信社に語った。 オルバーンの旅行の企画に携わった情報筋は「その数ヶ月前にチベットの解放ために抗議していたフィデスの政治家達は、統治する準備をしているときに突然外部の資金源を探さなければならなくなった」と言う。そして「旅行の前にも既に、資本、テクノロジー、西側諸国以外の大規模な市場を手に入れる機会は中国しかなかったことは明白にだった」と付け加えた。

オルバーンは、ハンガリーの裕福なビジネスマンの1人であるシャーンドル・デミヤーンの自家用機でデミヤーンとともに中国に飛んだ。 フィデスの経済政策立案者であるマトルチ・ジュルジ(※2013年よりハンガリー国立銀行総裁)も同行した。 目的は、中国共産党の関係を確立し、将来の中国国家主席の習近平と会い、フィデスの以前の反中国発言を償うことであった。 オルバーンと一行は、北京南東部にある中国共産党の立派なゲストハウスでの宿泊を提供され、丁寧でありながらやや計算された扱いを受けた。 しかし、これは以前の反共産主義コメントやチベット支援発言を原因とするものではなかった。オルバーンは自信満々でハンガリーの次期首相として振る舞っていたが、選挙まではあと数ケ月残っていたからである。

この旅行の企画に関与したある情報筋によると、オルバーンの中国側のホストは、マスタークラスのレアルポリティークを実践し、フィデスの以前の反中国発言を不問に付すことにした。

「反政府の立場では中国を侮辱できるが、政権を握ってまったく別の行動を取れば中国は許す」と情報筋は中国の政府指導部の考え方を説明した

オルバーン政府の元外務省高官によると、オルバーンもマトルチ(「東方開放」戦略の信奉者)も「中国を説得する手腕」を隠し持っていなかった。また、中国が提供する機会と財源を利用しようとしたのはオルバーンとマトルチが初めてではなかった。メジェシ・ペーテル(※2002年~2004年のハンガリー社会党政府の首相、無所属)が率いるハンガリーの社会主義リベラル政府は、地域の他の国よりも3、4年早く2003年には中国との緊密な関係を築き始めていた。元外務省当局者によると、2000年代には、オルバーンはシンガポールの権威主義体制により関心を示す一方で、マトルチはより日本びいきであったようである。さらに、オルバーンは2000年にチベットの精神的指導者であるダライ・ラマを個人的に歓迎し、仏教の伝統に従って首に白いショールを巻き付けた。オルバーンに近い情報筋によると、これはオルバーンの非常に反共産主義的な時期ではあったが、オルバーンはチベット問題自体にはあまり興味がなく、後で方向転換することに抵抗はなかったらしい。

オルバ-ンの北京旅行と中国との関係強化の主な目標の1つは「西側市場への依存を減らすこと、この意図は明らかに2008年の金融危機の経験に基づいていた」と中国専門家のスノマール・アーグネシュは説明する。政権交代で国家経済大臣になり、後にハンガリー国立銀行総裁になったマトルチ・ジュルジ自身、経済危機を西側の衰退の兆候として評価し、東側の市場と中国からの資本流入によってハンガリーの経済を安定させ、成長を再活性化させることを期待していた。

オルバーンは2010年に政権を奪取するや否や、欧州委員会、次いで国際通貨基金と緊迫した交渉を行った。欧州委員会も国際通貨基金も、メジェシ政権とジュルチャーニ・フェレンツ(※2004年~2009年の自由民主同盟政府のハンガリー社会党首相)政権中に蓄積された巨額の借金に対処するために、オルバーンに財政赤字の削減と不人気な緊縮政策の通過を迫った。オルバーン政府の元高官の何人かは、この時期、代替の資金源を見つける必要があり、中国の金融の命綱について言及することも西側の債権者を安心させるのに役立ったとDirekt36に語っている。

温家宝が2011年にブダペストを訪問した際に、仰々しい発表が行われた。「ハンガリーは中国から歴史的な支援を受け取った、ハンガリーが着手した経済再編を果敢に進めるには、この後ろ盾がなくてはならない」とオルバーンは中国の首相との会談後の記者会見で述べた。オルバーンは、中国がハンガリーの国債を購入することを発表し、これによって絶大な安心感がもたらされ、中期的にハンガリーの資金調達問題は解決されるであろうと説明した。さらに、中国の首相は、開発プロジェクトのために10億ユーロの特別融資をオルバーンに約束した。

しかしながら、現実には中国からの巨額の資金援助という概念にはさほど根拠がなく、約束が実現されることはほとんどなかった。スノマール・アーグネシュによると、中国が「危機に見舞われたヨーロッパの国への資金調達に直接参入する」ことは一般的ではないとのこと。中国はピレウス港の長期リースでギリシャに多額の資金を提供したが、これも直接的な資金提供ではなく、中国が絶好のチャンスをつかんだという表現の方が適切である。「事実、このケースやその他のケースでも、中国が❝ハンガリーを助けてくれる❞というのはハンガリー側の思い込みでしかなかったかもしれませんが、おそらく中国が実際に援助を約束することはなかったはずです」とスノマールは付け加えた。 2008年から2014年にかけて駐北京ハンガリー大使を務めたクシャイ・シャーンドルは、巨大な中国の融資への期待について、「じかに中国人と会ったことが一度でもある人は、そのようなことが存在しないことを知っている」と述べている。

その後数年間に、ハンガリーが期待通りに中国から資金調達を受け取れないこと、オルバーンの「東方開放」で発表された中国の大規模投資が実現されないことは益々明白になった。最も重要な中国の投資である中国企業による化学原料製造会社Borsodchemの買収、およびハンガリーでのHuaweiの拡張は、2010年よりかなり前に決定されていた。一方、オルバーン政権下では、長期間にわたり、目立った新規取引が成立することはなかった。 元外務省高官は、チャイナマネーと中国の約束を期待するうえでの落とし穴を次のように表現している。

相手にとって中国は最重要パートナーであると信じさせるのが中国の意図的な戦略です。相手はレッドカーペットで歓迎され、高官レベルの会議に招待され、本当に特別扱いなのだと欺かれるのです

第2章 ❝東方開放❞の限界

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2010年9月初旬、厳格な兵士のような中国大使高建が初めてハンガリーに憤慨している姿を見せた。高は、数週間後に行われたダライ・ラマの議会訪問よりも、「中国の密輸業者の問題にひどく動揺していた」とオルバーン政府の元高官は回想する。

2010年9月1日、米国がスパイおよび密輸の容疑をかけていた2人の中国人がブダペスト空港で逮捕された。2人は逮捕直後の朝に直ちに裁判所に連行された。その日の午後までには裁判所が米国への引き渡しを既に決定していた。元オルバーン政府高官は、狡猾でタフな外交官と評されていた高大使の憤慨の理由を「その間、中国領事にも中国大使にも通知されませんでした」と説明する。 政府筋は「中国との関係が一夜にして完全に崩壊した」と回想、同大使は中国政府から相応の対応があると脅迫していた。

ハンガリー政府と中国政府の間に紛争が勃発したのは、オルバーンが首相に就任してからほんの数ヶ月後であった。2人の中国人、Hong Wei “Harry” XianとLi “Lea” Li(ともに漢字不明)は、中国の国営航空宇宙テクノロジー企業のためにと特殊なコンピューター部品(PROMメモリモジュール)を違法に入手しようとしていた。これらのマイクロチップは、英国の防衛会社であり米軍の供給業者であるBAE Systemsによって製造され、米国の中国に対する武器禁輸措置で取引が禁止されていた。 宇宙からの宇宙放射に耐えるように開発されたこれらのマイクロチップは、弾道ミサイルの制御に使用されている。

2人の中国人は、販売業者と「代替輸送手段」を見つけて禁輸措置を回避する方法を交渉するためにブダペストにやってきた。しかし、「販売業者」は実際にはFBIの覆面捜査官であった。米国は、信頼できる同盟として引き渡しが確実に行われる国と見込んでハンガリーに2人の中国人をおびき寄せた。元外務省高官は、「米国は2人が本当のスパイであると主張し、この件は重要であると情報局(ハンガリーの外国諜報機関)に確信させました。NATO加盟国としてハンガリーが中国にスパイを送還しないことは明らかであったという既成事実の状況でした」と説明する。

しかし、オルバーン新政権は、逮捕に至るまでの米国とハンガリー諜報協力の詳細を把握しておらず、スキャンダルが勃発して初めて、その外交リスクに気づき、そのタイミングは悪すぎた。元政府高官は「ちょうど2010年10月の上海世界博覧会へのオルバーンの出席が手配されていたときであり、オルバーンの訪問を脅かす事態となりました」と述べている。

しかし、紛争は数週間で解決した。 ハンガリー政府筋によると、自身が中国の軍事諜報員である高大使が会議で再び微笑み、オルバーンは問題なく万国博覧会に出席することができた。 解決策を見つけたのはハンガリー政府ではなかったが、物語の2人の主人公はある種の合意に達したと元駐中国ハンガリー外交官は推測する。「現実には、2つの超大国の諜報と防諜が第三国であるハンガリーで衝突したということです」と情報筋は説明する。

これは、2人の中国人スパイの弁護士を務めたメシュテル・チャバ氏によって裏付けられた。「われわれは徹底的に身柄引き渡しに抵抗しました。しかし、2人の中国人は突然、もう何もしなくていい、可能な限り早く引き渡しに応じると述べたのです。私は自分の耳を疑いました」と弁護士は振り返った。 この急激な戦略変更は中国政府高官の米国訪問の直後に起こった。「私の個人的な意見では、そのときに何らかの取引が行われたと思われます」と同氏は付け加えた

中国政府の元外交官によると、「この事件はハンガリーが加盟している西側同盟における中国の影響力の可能性と限界を示した」とのこと。2人の中国人は2011年4月1日に米国行きの飛行機に搭乗し、米国で有罪を認め、懲役2年の刑を言い渡された。

身柄引き渡し事件の結果、オルバーン政府はより慎重になり、中国との対立を意識的に回避し始めた。中国の問題にも取り組んだ元外務省高官によると、オルバーン政府は、少なくとも重大な安全保障問題となると、ハンガリーはNATO加盟国であるため、あからさまに中国を支持することはできない。「具体的で厳格な要請があれば、NATOや米国等の同盟側につく」と元外務省当局者は述べ、「しかし、ハンガリーは、団結や共通の立場がない場合、曖昧な領域がある場合には、ドイツに追随する」と付け加えた。

オルバーン政府がドイツに追随する理由の一つは、中国とハンガリーの対外貿易が実際には主に中国とドイツの間で行われていることである。「アウディのエンジンなどの製品がハンガリーの中国への輸出の60%を占めており、ハンガリーの中小企業セクターのシェアはごく僅かです」と中国に精通した元外交官は説明する。 たとえば、ハンガリーのジュール市で生産されたエンジンは、中国北部にあるアウディの工場で車に取り付けられている。ドイツ政府は何年にもわたって見事に中国との対立を回避してきた。中国におけるドイツの大企業の繁栄を妨げないように、アンゲラ・メルケル首相は人権侵害についてはほとんど沈黙している

ハンガリーとドイツの戦術の好例として、2019年初頭の水面下での対立が挙げられる。EUの外交官とブリュッセルの当局者がその詳細をDirekt36に提供してくれた。Red Apollo(APT10)と呼ばれるサイバースパイ活動グループは、何年もの間にわたり、アメリカから日本まで、事実上すべての主要産業からテクノロジー機密を盗んでた。ファイブアイズ諜報同盟(オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、米国で構成)のメンバーは、これらの攻撃について中国を公けに非難した。英国は、2019年4月9日のEU中国首脳会談の前に、同様に非難するとともにデマルシェ(外交照会)を提出するようにEUに説得を試みた。さらに、あるEU加盟国の外交官によると、攻撃を非難することにより、中国に対する将来の制裁への土台が築かれたはずであり、そのためサイバースパイ活動の背後に中国政府が存在することを示すことは意義深い手段だと思われた。しかし、中国は常にその諜報機関が同様のサイバー攻撃に関与していることを強く否定していたため、EUによる共同措置は中国の報復を招いていたであろう。

EU中国首脳会議に向けた準備会合で、英国はオランダ、ポーランド、エストニアなどからの支持を得た。これらの国々は以前にロシアのサイバー攻撃に苦しんでいた。しかし、中国への依存度が高い南部の加盟国は中国の怒りを買うリスクを冒すべきではないと強く主張した。当初、ハンガリーも中国の責任をはっきりとさせることに明確に反対したが、後にドイツのより巧妙な戦略に従い始めた。この対立の詳細に精通しているEU加盟国の外交官によると、ドイツは重要な会議の一つで立場を表明せず、討論でコメントせず、セッションに参加しただけであった。その戦略は、これほど重大な提案は最も影響力のあるEU加盟国抜きでは確実に通過しないというものであった。一方、EUと英国のブレグジットに関する交渉も難航していたため、迅速な決定がなければ中国のサイバースパイ活動に対する外交主導権の勢いが失われてしまうことは明らかで、それは現実となった。共同抗議の提案は3月末には破棄されていた。

ドイツの立場に追随するだけではなく、ハンガリー政府は他の理由で中国のハッカーについてさほど懸念する必要がなかった。ヨーロッパでは「中国は政治的スパイではなく経済的および技術的スパイ活動に従事しているため、ハンガリーはその主な標的ではありません。ハンガリーには盗まれる可能性のある画期的なハイテク技術があまりなく、中国はベーレシュ(ハンガリー有数の製薬会社)の免疫機能強化剤の製造方法には関心がありません」と元防諜担当官でハンガリー憲法保護局運営責任者であるカトレイン・フェレンツは説明する。これは、 EU加盟国の複数の外交官によると当時APT10の中国人ハッカーの標的はハンガリーにはなかったという事実によっても裏付けられている。

それと平行して、ハンガリーは、欧米の利益と見事に対立しているように見える一方で実際にはあまり重要ではない問題において中国との親善を勝ち取ろうとしている。たとえば、ハンガリーは、より軽微なレベルで中国を非難するEUの共同声明に対して拒否権を発動して阻止している。これらは、深刻ではない問題やEUが実質的に影響力をもたない問題についてである。たとえば、ハンガリーは南シナ海における紛争で中国を批判する声明の可決を阻止したが、EUは遠方の地域に対して軍事的または外交的な影響力を持っていない。

「率直に言うと、EUの声明はすべて冗談です。これらは道徳的な宣言であり、中国は重大な結果をもたらさないことを知っています」と元外務省高官は説明し、「これらの拒否権は、NATOの真の戦略的な利益に決して反しないでしょう」と付け加えた。元高官によると、一般的にハンガリーが親中国だとみなされているのは、ドイツは黙って商売をしている一方で、ハンガリーは政治的な発言で盛んに中国を称賛しているからである。

しかし、これまでのところ、それでも飛躍的な進歩を達成するには十分ではなかった。 一見相互に有益と思われる取引でさえ順調に進んでいない。中国の習近平国家主席は、2013年に権力を握ったとき、中国の産業を後押しし、中国の外国での影響力を高めるために一帯一路構想を立ち上げた。そのインフラストラクチャへの巨額投資は、新しいシルクロードとも呼ばれている。この構想の下でのプロジェクトの一つに、ピレウス港から中国製品を輸送するベオグラード・ブダペスト鉄道の再建がある。ハンガリーは一帯一路構想に参加した最初のEU加盟国となった。 しかし、すぐに問題が発生した。その建設の主要な請負業者は中国企業でなければならないと中国が頑なに主張したためである。

「一つの企業グループがすべての同様の公共調達を勝ち取る国で、これについて合意に達することは非常に困難でした。このプロジェクトが中国にとって政治的に非常に重要であるというのはでたらめです。中国はすべてカネのために動きます」と、北京に駐在していたハンガリーの元外交官は、総費用19億ユーロのハンガリーのプロジェクトが何年も計画より遅れている理由を説明した。結局、中国とハンガリーの合弁企業が契約を勝ち取り、中国の国営鉄道建設業者2社が、ハンガリーで最も裕福な実業家でオルバーンの幼なじみでもあるメーサーロシュ・ルーリンツの会社と提携することになった。その取引内容によると、双方はそれぞれ最終的に収益の50%ずつを手に入れることになっている。

これは「東方開放」が結局のところ単なる「ハンガリーの不正利得と腐敗を隠すことを目的とした偽装行為」であることが判明したことも示していると元外務省高官は表現する。ハンガリーの国家経済は親中国の外交政策への転換からほとんど恩恵を受けておらず、政府に近い実業界だけが潤っている。

情報筋は、鉄道プロジェクトに加えて、トルコの実業家が関与する❝商社❞疑惑、イスラエル・ジョージア人の実業家が関与するゴールデンビザプログラム疑惑、そして昨年の新型コロナウイルス人工呼吸器購入疑惑なども挙げている。

しかし、緊密となった中国とハンガリーの関係は、ハンガリーが国家として完全に無視できない脅威を前面に押し出した。それは中国のスパイである。すでにハンガリーの政治家の周囲に群がっており、ハンガリーの対諜報要員は多忙になるばかりである。

第3章 中国の素晴らしいハンガリーの友人

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数人の防諜要員が社会党の国会議員ウイヘイ・イシュトヴァーン(※2014年よりハンガリー社会党の欧州議会議員)のデスクの上に物を置いていいかどうか尋ねた。そして、特殊なX線検査装置を箱から出し、ハンガリーの国会議事堂内にある同議員の事務所に飾られている精巧な短剣や色鮮やかな花瓶、磁器の彫刻の走査を開始した。憲法保護局の防諜要員は盗聴器が隠されているかどうかを調べていたのである。中国と最も広範なつながりのあるハンガリーの政治家の一人であるウイヘイは「彼らは私が何年にもわたって中国人から受け取ったすべての土産を分解するように頼みました」と回想する。同議員は、このシークレットサービスの検査は「2013年頃」であったと述べるだけで、日付は明らかにしなかった。 事務所の他の贈り物の走査も行われた。当時、ウイヘイはハンガリー国会の副議長であったため、政府高官と見なされ、国家安全保障要員は同議員に通常以上の注意を払っていた。

検査中、ウイヘイは部屋の外で待たされた。同議員は、いまだに自分の事務所に盗聴器があったかどうかを知らないと言う。しかし、終了すると、防諜要員は、必要があると判断した場合は同議員に連絡するとだけ告げた。 2014年頃、防諜要員は再び同議員の事務所を訪ねた。ウイヘイは「彼らは問題視されている中国人が何度か議会に私を訪ねてきたと述べ、もうその人と連絡を取り続けないように私に通告しました」と説明し、その指示に従ったと付け加えた。 同議員は、国家安全保障上の利益に有害である可能性があるとして、この中国人の知人についての詳細を明かすことを拒否した。何人かの元防諜高官が、これを要求するのは通常、敵対的な外国のスパイと接触したときだとDirekt36に語った。当時、防諜要員はウイヘイに頻繁な中国旅行についても質問した。

ハンガリーの国家安全保障要員が高官レベルの中国人とのつながりのあるハンガリー人を監視しているのは偶然ではない。中国のスパイ活動は欧州のスパイ活動とは異なり捉えにくい。中国人は「中国人以外を信用せず」、重要なスパイ活動は中国人にのみ任せる。さらに、「中国人は西側で従来のタイプの諜報員ネットワークには近寄らず、中国の白人の友人を採用するのです」とハンガリーの元諜報員は説明する。中国の諜報機関は、このような「友人」を利用して諜報情報を収集したり、中国の立場を強化する。これは募った人材の任務なのである。だが、このような関係は通常の形態に比べてはるかに緩く、非公式である。多くの場合、これらの人材は中国の諜報機関によって採用されたことに気づいてさえいない。また、中国人が何年にもわたって融通、単発の仕事、中国への無料招待などで恩を着せて無害に信頼関係を築いてから見返りを求めるのは典型的な手法である。

ウイヘイは2000年頃から中国に惚れ込んだ。主に文化、教育、観光の分野で中国とハンガリーの協力を深め、欧州議会議員となった後もブリュッセルで欧州レベルで同じことを続けた。「私は2箇所目の孔子学院をハンガリーのセゲド市に設立し、そこで何千人もの学生が中国語のスキルを身に着けました。私は自分のプライベートのつながりを通して働きかけました」と誇らしげに語る。ウイヘイは後にペーチ市とミシュコルツ市での孔子学院の開設にも奔走した。「それがコーシャ・ラヨシュ(※フィデスの議会議員で1998年~2014年はデブレツェン市長)の羨望の的になり、デブレツェン市にも開設されることになった」とウイヘイは言う。

2004年以降、中国政府は中国文化を振興する孔子学院の国外展開に資金を提供してきた。世界中で1,000箇所以上が開設されたが、近年、いくつかの国で追放が始まった。たとえば、2019年末にデブレツェン市に孔子学院が開設されてから数週間後にブリュッセルの孔子学院が閉鎖された。その孔子学院の理事がスパイ活動を行い、情報提供者を募っていたことをベルギーの防諜当局が突き止めたからである。2020年には、スウェーデンのいくつかの大学で中国語の教師が中国共産党政府のプロパガンダを広めていることが明らかになり、スウェーデンはすべての孔子学院を閉鎖した。 米国でも閉鎖の波が発生し、今年3月までに71箇所が既に閉鎖され(または閉鎖を命じられ)、国家安全保障上の理由から孔子学院を規制する法律が可決された。

ウイヘイは、孔子学院がプロパガンダを広め、中国のスパイ活動を隠蔽している可能性があると考えるのはナンセンスであり、冷戦時代のような妄想だと言う。しかし、中国とハンガリーの関係の形成に関与していたいくつかの情報筋は異議を唱えた。これらの情報筋がDirekt36に語ったところによると、これは世界中の他の国と同じようにハンガリーにも当てはまるはずだが、ハンガリーはまだこれに対処しなければならない。元駐北京ハンガリー大使のクシャイ・シャーンドルは、中国との関係を発展させるための政治的決定が下されたのであれば、中国語と中国文化の知識のある専門家も必要だと説明する。しかし、ハンガリー政府はそのような専門家を訓練するためのコンディションを提供できなかったため、孔子学院が必要となった。

「文化の浸透は、中国にとって政治的な影響力を高める上で重要な役割を果たしています。欧州で地位を確立するためには、最初に大きな文化的相違の橋渡しをしなければなりません」とハンガリー憲法保護局の元防諜担当官は説明する。

元防諜担当官によると、これは孔子学院の役割でもあるため、中国の最大の標的は西洋の学者、大学教授、学生、専門家、ジャーナリストである。「知識人は中国にとって重要です。なぜなら、知識人は文化の振興を促し、一帯一路のような巨大プロジェクトに対して好意的な世論を生み出すことができるからです。これは賢い。後背地を征服すると戦闘の半分に勝ったも同然であることを中国人は知っています」と元防諜担当官は付け加えた。

孔子学院に加えて、上海の復旦大学も文化を振興するための優れた手段である。中国のエリート高等教育機関の一つである復旦大学は、2024年にハンガリーにヨーロッパ初のキャンパスを開校する。このプロジェクトは、中国の習近平国家主席自身も大々的に紹介し、賞賛している。このキャンパスは5,000~6,000人の学生と500人の教職員で運営される予定である。

「北京の清華大学が中国のハーバード大学であれば、上海の復旦大学は中国のエール大学であり、世界最高峰の大学の一つです」とクシャイ氏は説明する。 しかし、復旦大学は単に一流大学であるだけではなく、中国共産党にとって重要な人材源でもある。2016年に漏洩された党員データベースとDirekt36の分析によると、教職員と学生の4分の1以上が中国共産党の党員である。

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さらに、復旦大学の国際問題研究院は長年にわたり中国の諜報機関と協力しており、2011年には復旦大学が独自のスパイ養成校を立ち上げた。2019年には「思想の自由」と学術研究における独立性に関する文言が復旦大学の憲章から削除され、中国共産党の指導部への忠誠の誓約に置き換えられた。 それにもかかわらず、ハンガリーが中国の専門家を養成したいのであれば、孔子学院と同じようにマイナスの側面も受け入れなければならないが、ハンガリー政府は安全保障上のリスクも確実に軽減させなければならないと元駐北京ハンガリー大使のクシャイ氏は注意深く付け加えた。

しかし、ハンガリーでの復旦大学の拡張の背後にある主な原動力である人物はまったくリスクを感じていない。中国共産党は復旦大学の「自由な思想と研究の自由にいかなる形でも影響を与えなかった」とホルヴァート・レヴェンテはインタビューで主張している。ハンガリー国立銀行の現総裁であるマトルチ・ジュルジの主任顧問として、ホルヴァートは復旦大学の拡張の公式コーディネーターを務めている。ホルヴァートは、インタビューの中で、復旦大学は2週間の兵役義務をブダペスト校に導入するすることはないとも付け加えている。「いずれにせよ、学生達は兵役義務をサマーキャンプのようなものと考えており、そこでは多くの親友関係が築かれています」とホルヴァートは述べている。

現在30代前半のホルヴァートは、個人的な経験から語っている(ホルヴァートが中国で育ったことについてはqubit.huの記事で詳しく説明されている)。ウイヘイに加えて、ホルヴァートの例は、中国が国外で足場を築くのを左派と右派の両方の中国ファンのハンガリー人が支援していることを示している。外務省がホルヴァートをハンガリーの上海総領事に指名したとき、ホルヴァート自身が中国の国家奨学金によって復旦大学で勉学していた。この組み合わせはいささか問題であった。ホルヴァートは中国が資金提供した研究を終えるまで公式の外交官承認を得ることができなかったと元外務省当局者は言う。

以前の慣例では、中国籍の同級生と結婚したホルヴァートは外交官のポストに就くことはできなかった。ハンガリーの法律は外交官が受入国の国民と結婚することを禁止してはいなかったが、2010年までハンガリーの防諜はセキュリティクリアランスの身元調査を行う際にこれをリスクと見なしていた。特に一党制の場合、外国人の配偶者は直接または家族を通じて地元の諜報機関に任務を強要される可能性があった。しかし、オルバーン政府はこの慣例を廃止した。モスクワの元ハンガリー大使館員であるキシュ・シラードは悪名高い例である。キシュのロシア人のパートナーはロシアの諜報機関と関係があり、そのためキシュは2回の身元調査を通過できなかった。それでもキシュは大使館員として勤務を続けることを許された。

ホルヴァートは数年以内に上海の総領事を辞任し、兄の勧めでハンガリー国立銀行に入行し、すぐに総裁マトルチ・ジュルジの右腕となった(兄はマトルチのもとに長年仕え、以前は個人秘書、次に首席補佐官となり、現在は国立銀行の取締役の一人である)。ホルヴァート・レヴェンテは現在、マトルチ側近としては唯一の東アジア地域の専門家であり、中国のプロジェクトの管理を担当していると国立銀行に詳しい情報筋は語った。ホルヴァートは、大学時代から復旦大学の上層部とハイレベルの個人的なつながりを持っているだけではない。復旦大学の同窓会の副会長を務めている間、復旦大学がハンガリー政府からリソースを獲得する手助けも始めた。Direkt36はホルヴァートに何度か連絡を取ったが、ホルヴァートはコメントを拒否した。国立銀行は「噂についてはコメントしない」と回答した。

「ハンガリー政府内では、ハンガリー国立銀行が最も親中国の立場にあり、シイヤールトー・ペーテル外相(※2014年~)とオルバーンはそのすぐ下の地位にあるだけです」と中国の専門家はDirekt36に語った。また、中国と定期的に連絡を取り合っている国家機関の長によると、外務省やその他の政府の下位レベルでは、中国に対してだけではなく、中国で学んだハンガリー人に対しても疑惑が広まっている。「行政の他の関係者は、我々と同じことを経験しています。中国で長い時間を過ごしたハンガリー人は既にハンガリー側ではなく中国側についています」と情報筋は述べ、「我々は意識的にこれらのハンガリー人を遠ざけている」と付け加えた。

しかし、以前に国立銀行総裁の周辺に勤務していた当局者の総裁と中国の親交についての説明はより微妙であった。「マトルチは中国の影響力の高まりを認識しており、用心深く対応しようとしていました。また、ハンガリーは中国に騙されてはならない、中国に注意を払うべきだと一度か二度言いました」と情報筋は語り、国立銀行総裁は確かに中国のスパイ活動を示唆していたと付け加えた。しかし、結局のところ、マトルチは、この地域のすべての国が中国への玄関口になることを希望し、「ハンガリーが先回りしなければ、この役割は他国に奪われる」とまだ信じていると情報筋は語った。

第4章 市民諜報

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ある若い中国人女性がゲッレールトの丘のイベントに遅れて到着し、すぐに注目を集めた。 キラキラのスニーカー、ジーンズ、派手なピンクのプラスチック製のハンドバッグという出で立ちで、身なりのよい外交官、政治家、政府関係者の聴衆の中で浮いていた。2019年4月25日、外務貿易研究所でNATOが直面している課題に関する講演が行われていた

その女性は携帯電話を使ってゲッレールトの丘の建物の来賓を絶えず撮影していた。これにはオランダの元国防相、ドイツの元NATO中将、米国大統領ドナルド・トランプの特使が含まれていた。ある参加者は中国人女性の行動が奇妙であることに気づき、後ろの席に移動した(後で全容をDirekt36に説明)。この参加者は、中国人女性が撮影した写真を講演内容のテキストレポートに添付し、中国語のメッセージングアプリで何者かに送信していたことも目撃した。

Direkt36は参加者のリストを入手し、イベントで撮影された写真に目を通すことでこの女性を特定できた。中国人の大学生であった。そのハンガリー人の大学教授の一人によると、この中国人女性の研究内容は防衛や安全保障の問題とはまったく関係がなかった。長い間、この女性と教授が政治について会話することは一切なかった。しかし、しばらくして、この女性は西洋で勉学するには中国共産党に入党する以外に方法がなかったことを告げた。また、これが理由で、ヨーロッパ人には常軌を逸しているようなこともしなければならないと詫びるように説明した。たとえば、毎日、世界の出来事についての考え方を唱える最新の共産党プロパガンダビデオを自分の携帯電話で見なければならない。その間、携帯電話のカメラは、この女性がこのようなイデオロギーの講義に細心の注意を払っているかどうかを監視している。この教授は、これについて言葉を交わすことは一切なかったと前置きした上で、これが上記のような任務を遂行した理由でもあると信じている。また、この女性の研究分野とは関係がないにも関わらず、どういうわけかいつも中国に関連する会議に出席していることに以前から気づいていた。

国家安全保障の保護下にあるハンガリーの国家機関である外務貿易研究所の高官は「中国人は色々な意味で西側に関心を寄せていますが、これは他の諜報機関にも当てはまります」と言う。憲法保護局の元防諜担当官であるカトレイン・フェレンツによると、中国の諜報機関は西側に渡来する中国人の学生やビジネスマンを多数雇用している。「これらの中国人は何万人もいるので、その助けを借りて小さい情報の断片を集めることができます。最初は取るに足らないと思われる情報が報告されることがよくありますが、大量に届くため、北京の本部でそれらをリンクすると、何か意味のあるものになる可能性があります」とカトレインは中国の方法を説明する。前述のイベントで撮影された一見無意味な写真にも、特定の会場またはイベントの現場でレポートが実際に作成されたことを監督者に証明するという周知の機能がある。

2017年に可決された中国の新しい国家情報法は「すべての組織と市民が法律に従って国家情報活動への支援、補助、協力を提供し、認識している国家情報任務の機密を保護しなければならない」と規定している。しかし、あるハンガリーの諜報専門家は、法の支配の発展とともに、中国は既に実践されていた慣例を成文化しただけだと考える。

「これはいわゆる市民諜報(人民情報)です。学生、友人、配偶者を問わず、国外に赴いて政治、経済、テクノロジー、軍事機関と接触するすべての中国人が確実にレポートを提出しています」と諜報専門家は説明する。

これはヨーロッパに到着するすべての中国人がスパイであるという意味ではまったくない。しかし、中国の諜報機関は、民主国家と比べてはるかに簡単に、役に立ちそうな情報にアクセスできると思われる中国の市民に協力するように説得することができる。通常、この協力の動機は愛国心や金銭的利益であるが、圧力や強要によることも多く、ときにはそれが中国に住む家族や愛する人々に向けられることがある。

中国の市民諜報のもう一つの特徴は、国家安全保障機関がより単純で機密性の低い任務を外部委託していることである。以前中国に住んでいたブダペストのコルヴィヌス大学のハンガリー人学生がその典型的な例を説明してくれた。この学生が中国人の女子学生と緊密な関係を築いた後、「彼女がお金を稼ぐ絶好の機会を見つけたばかりだとさりげなく言いました。それは電話での会話を翻訳する任務でした」とハンガリー人の学生は回想する。中国人の女子学生は詳細も明かした。その任務は北京から割り当てられ、音声資料(あらゆるトピックの英語での会話)が中国のWeChatモバイルアプリで送信されていた。まず英語の音声を単語ごとに文字に起こし、次に北京語に翻訳するという作業であった。音声映像には、中国に住む外国人が電話で話している様子が映っていた。

「彼女はこれがスパイ行為や他人のプライバシーの侵害であるとさえ感じていませんでした。彼女は雇われた諜報要員ではなく、単純な学生バイトのようなものだと考えていました。いずれにせよ、これはそのように募集されていました。彼女は自分の仕事について罪の意識もなく、無邪気に、まったく普通のことだと思って私に話しました。また、英語を話す多くの学生が同じ仕事をしていると言いました」とハンガリー人の学生は付け加えた。きわめつけは、女子学生の唯一の不満がオーストラリアのアクセントをほとんど理解できないことであった。

「2016年から2017年にかけて、中国の諜報機関は明らかにロシアの諜報機関に追いついており、近年、ハンガリーではその存在が非常に深刻になっています」とハンガリー議会の国家安全保障委員会の委員であるモルナール・ジョルトは述べている。モルナールは2010年から2018年まで委員長を務め、10年以上にわたってハンガリーの国家安全保障機関の活動を綿密に追跡してきた。モルナールによると、中国のスパイ活動が台頭する主な理由の一つは、中国がハンガリーで増え続ける中国の市民や企業を諜報活動に利用できることである。

中国の留学生の流入はオルバーン政権下で始まった。オルバーンの「東部開放」政策を支援するためにハンガリー政府の奨学金プログラムの対象が徐々に多数の中国人学生に拡大されていったというのは部分的な理由である。主な理由は、政府がハンガリーの高等教育機関に資金を提供していないことであった。ハンガリーの大学は授業料を全額払う中国人学生の誘致を余儀なくされた。ハンガリー中央統計局のデータによると、ハンガリーの中国人留学生は2013年には446人であったが、2019年には2,776人に増加していた。これは、ドイツに次ぐ規模になったことを意味する。

同様の理由で、ピンテール・シャーンドル内務大臣と同大臣の監督下にある憲法保護局は、ハンガリーの「ゴールデンビザ」制度についても懸念を抱いていた。2012年に開始されたいわゆるハンガリー永住権国債プログラムは、外国の諜報機関や組織犯罪に関係のある個人を侵入させるリスクをもたらした。数年にわたり、約2万人の外国人がゴールデンビザを購入し、ハンガリーの永住権とシェンゲン圏のビザを手にした。その80パーセント以上(約16,000人)が中国人であった。一方、ハンガリーの防諜当局が個々の国債購入者の身元調査を実施できる期間はたった30日間であった。憲法保護局の元高官のカトレイン・フェレンツ氏によると、同大臣と同局はこれを不可能な任務とし、非常に危険な状況であると考えていた。中国とロシアの「違法」または潜伏スパイの展開の可能性についてカトレイン氏は特に懸念していた(Direkt36、444.hu、およびNovaya Gazetaは後にシリアの独裁者バッシャール・アル=アサドの経済政策顧問ロシアの対外情報庁長官セルゲイ・ナルイシキンの息子などの国債購入者もハンガリーのスクリーニングをすり抜けたことを突き止めた)。

憲法保護局は別の奇妙な現象に気付いた。中国人、そして程度は低いがロシア人がブダペストの不動産を買い漁り始めた。たとえば、政府の記録によると、2019年にはブダペストの約3,000軒の不動産が外国人によって購入され、その半数以上が中国人であった。永住権国債プログラムの開始前は中国人の不動産購入者の割合は10%強であった。議会の国家安全保障委員会の作業に詳しい情報筋は「ブダペストの中心部では不動産が非現実的な高値で購入されることが多いという追跡可能なパターンが見られます」と憲法保護局の以前の年次報告書の一つを引用した。ハンガリーの防諜当局によると、ブダペストの中心部(5区、6区、7区)でのこのような奇妙な不動産購入の財源は中国政府である、つまり取引が中国の諜報機関と関係していることは否定できない。しかし、これらの購入の潜在的に違法な目的については議論されていない。

2020年の終わりに、ハンガリーの民間および軍の防諜機関は再び年次報告を密室で開催した。このような会議に精通している情報筋によると、国家安全保障機関の上層部は中国のスパイ活動の増加、ブリュッセルとブダペストでの中国の諜報攻撃について話し合いは行ったものの、特定の作戦については詳述しなかった。しかし、それまでに、中国の活動の一部は文字通りブダペストの路上で行われていた。

第5章 友情の代償


米国のある国際関係の専門家は中国の諜報機関によって監視されることに既に慣れていた。デバイスのハッキングの試みだけではない。見知らぬアジア人が自宅の前に現れ、窓から覗いて写真を撮ろうとしていたこともたまにあった。この専門家は、ワシントンDCの有力者とのつながりを通じて、中国共産党政府の人権侵害に対する責任を追及するロビー活動を展開している。これが中国の諜報機関の怒りを買うことは覚悟していた。しかし、2018年1月のブダペスト訪問中にも尾行されていたことについてはさすがに驚いた。

この専門家がブダペストのヴルシュマルティ広場のパティセリーに入るや否や、アジア人の男が近くのテーブルに座り携帯電話で専門家の写真を撮り始めた。セントイシュトヴァーン広場のワインバーやブダ側のビストロなど行く先々で同じことが起こった。「これはまったく新しい現象で、それまでハンガリーで発生したことはありませんでした」とこの専門家(以前にハンガリーを何度か訪れた)に近い情報筋はDirekt36に語った。

この専門家は、ブダペストではとりわけハンガリー政府高官やその他のフィデスとつながりのある権力者と会談していた。アジア人の尾行者達は、その行動から、この専門家がカフェやレストランで誰に会い、何について話していたかを記録しようとしていたようである。専門家は憤慨し、自身も尾行者達の写真を撮り始めたところ、尾行者達のほとんどは写真を撮るのをやめた。専門家はブダペストで起こったことを米国FBIに報告し、撮った写真を提供した。FBIは、専門家が至る所でアジア人の観光客に出くわしたのは偶然ではなく、確かに中国政府による監視であったと返答した。

2019年のブダペスト訪問でも同じことが起こった。「ハンガリーは、スイスやオーストリアのように、罰を受けずに行動できる典型的な第三国、諜報活動の現場です。ハンガリーでは、中国は主に米国と格闘しています」とハンガリーの諜報専門家は述べた。しかし、この地域の他の国でも中国は同じ手法を使用している。2018年後半、チェコの諜報機関が中国のファーウェイの国家安全保障上のリスクについて警告を発した後、その長官がプラハで尾行され、同じようにあからさまに監視されていた

中国の諜報機関がハンガリー政府の上層部についても情報を収集していたことがすぐに明らかになった。これには公然と親中国を表明する政治家も含まれていた。 2020年9月に深圳鎮華データ情報技術という中国の企業によって編集されたデータベースが流出した。これには米国からヨーロッパ、オーストラリアにいたる300万の個人と組織に関するデータが含まれている。このリストには710人のハンガリー人の名前が記載されており、これにはオルバーン・ヴィクトルの子供やタルローシュ・イシュトヴァーン(※2010年~2019年のブダペスト市長、市長選ではフィデスの支持を受けたが無所属、現在はオルバーンの首相委員)など、ハンガリーの政治的および経済的支配層の有名なメンバーや血縁者が含まれていた。「私の子供はフェイスブックさえ利用していません。おそらく、ソーシャルメディアのプロフィールに加えて電話や電子メールで間接的に私の情報を入手したかったのでしょう」とタルローシュはDirekt36に語った。

鎮華データは民間企業だが、中国政府、人民解放軍とも提携している。2020年10月27日に、軍事国家安全保障局の非公開会議で、ハンガリーの軍事シークレットサービスはデータベースの委託が中国の諜報と関連があることを確認したと同局の活動について知識のある情報筋がDirekt36に証言した。同局の上層部は、オンラインのオープンソースから主に人工知能の助けを借りて収集されるこの種の大量データ収集が中国と米国の両方で完成され、日常的に使用されているという事実についても語った。また、ファイブアイズ諜報同盟の一参加国が中国のデータベースの取得と漏洩に背後で関与していた可能性があると述べた。つまり、これは米国と中国のもう一つのスパイゲームのエピソードである可能性がある。

2018年から、ハンガリーと中東欧地域は二大国間の衝突ゾーンとなった。米国が中国の5Gテクノロジーの第一人者であるファーウェイに照準を定めたのはそのころであった。同社は中国のシークレットサービスと協力していると非難され、その幹部の一人である創業者の娘が米国の要請でカナダで拘束され、米国政府も同盟国に自国の5Gモバイルネットワークからファーウェイの機器を排除するように説得し始めた。この大々的な圧力には「クリーンネットワークイニシアチブ」という固有名詞も与えられた。

2021年までに、EU加盟国の大多数が中国の5G機器の制限について何らかの前向きな姿勢を示し、米国の圧力はすべてのEU加盟国で成果をあげたが、見事にハンガリーは例外であった。それまでに、ファーウェイはハンガリー政府と緊密な関係を築いており、ハンガリーの重要なインフラストラクチャに機器を提供する契約を勝ち取っていた。また、ファーウェイは、この地域の5G基地局へのサプライヤーとして中国国外では最大の生産能力も確立しており、昨年はブダペストに新しい地域研究開発センターを開設した。昨年、シイヤールトー・ペーテル外務大臣は、ファーウェイからの外科手術用マスクやその他の防護具の寄付について感謝の意を表明すると同時に「ファーウェイは間違いなく国内の5Gネットワークの展開に参加できます」と述べた。

しかし、ハンガリーのシークレットサービスは、米国がファーウェイに世論の圧力をかけるキャンペーンを開始するかなり前からファーウェイに警戒していた。すでに2010年代前半には「東方開放の時点で、ハンガリーの国家安全保障局の要員は熱烈なオルバーン支持者でさえ中国の影響力の高まりを非常に懸念していました」と大規模な通信企業の元幹部は述べた。この幹部は、サイバーセキュリティと防諜のテクノロジーの側面を担当する国家安全保障局に定期的に指導を求めていた。たとえば、情報筋によると、「ボーダフォンにファーウェイがきわめて深く根を下ろしている」ことが国家安全保障局のセキュリティ要員の深刻な懸念事項になっていた。しかし、これらの要員はセキュリティ違反については一切言及していない。その後、2019年2月26日のファーウェイに関する国家安全保障委員会との会議において、ハンガリーのシークレットサービスの上層部もハンガリーにおける同社の存在のリスクについて詳しく説明しなかった。しかし、「NATO同盟国に忠実な方法で」ファーウェイに対する米国の措置を提示したと当時の会議の内容に詳しい情報筋は述べた。

これらの不特定の懸念はハンガリー政府には説得力がなかった。Direkt36に対する声明の中で、外務貿易省はファーウェイがリスクをもたらすことを証明する情報を得ていないと主張した。ファーウェイのハンガリー子会社の政府関係・広報部長を務めるゲチェ・マリアン氏は「ハンガリー政府関係者は、ファーウェイとの会議で米国側から強い圧力を受けていると公然と述べました。シイヤールトー外相は問題を理解しており、公正です。ハンガリーの政府高官は無責任な約束をせず、交わした約束は守ります」と証言する。同部長によると、同外相が頻繁に繰り返すハンガリー政府は国籍に基づいて企業を差別しないという主張は非常に重要であった。中国の企業はこのメッセージに耳を傾け、それはインパクトを与えた。

実際、オルバーン政府は約束を守り、ハンガリーの2社(3社中)の携帯電話会社が5Gネットワークの展開に中国のサプライヤーを採用することを妨げなかった。 チェコとハンガリーが所有するテレノールは中国国営のZTEと提携し、英国のボーダフォンは長年のサプライヤーであるファーウェイと契約した(同社はこれを公表していない)。米国のロビー活動は多大な成果を挙げたため、ファーウェイはこの地域で新しい顧客を獲得することはできなかった。これには残り1社のドイツが所有するマジャルテレコムも含まれる。そうでなければ、ハンガリーの5Gネットワークの100%が中国の機器で運用されていたであろう。

逆説的には、ハンガリー政府と中国の関係がここまで緊密になったのは、中国政府よりも米国トランプ政権に負うところの方が大きい。

米国は中欧地域に声明を出すこと、何らかのかたちで立場を示すことを強要した。そのため、ハンガリーは中国を取った。中国が最大の対外貿易相手国になりつつあるからである。昨年のハンガリーへの新規外国投資は中国からが最大であった。「中国共産党政府はハンガリーから追い出されることはないだろうと信じ始めているため、長期的な計画を立てることができます」と5Gネットワークをめぐる闘争の結果についてゲチェ・マリアンは説明する。

しかし、中国との良好な関係には、西洋の同盟の加盟国であることと同じように代償が伴う。そして、オルバーン政府は実際にその報いに直面した。

A few days after the daughter of Huawei’s founder was detained at U.S. request in Canada in December 2018, China also arrested two Canadian citizens on suspicion of espionage. The two countries mutually accused each other of making illegal and arbitrary arrests, and Canadian Prime Minister Justin Trudeau said China simply attempts to force a prisoner swap. However, the Hungarian government also got involved in the case. It turned out that one of the two Canadians, Michael Kovrig, an ex-diplomat who later worked for the International Crisis Group, was a Canadian-Hungarian dual citizen.

The man was walking the streets of Beijing one Monday night when Chinese police, without any precedent, approached him and hauld him away. Yet a few weeks earlier, on September 25, 2018, Michael was still meeting with his Hungarian friends in Budapest’s party district. “Let’s go to the Szimpla Kert!,” he suggested to one of his old acquaintances. After some wandering around, they finally ended up in a restaurant near Király Street instead of the well-known ruin bar.

Michael Kovrig’s family fled Hungary from the communist dictatorship. Born in Canada, he moved back to Budapest for some years in the 1990s, where he worked as an English teacher and journalist for Budapest Week, and also sang in a punk rock band called Bankrupt. His grandfather, János Kovrig, also traveled China as a journalist in the 1930s, and was later arrested and interned in a labour camp during the communist takeover of Hungary in 1946. Michael’s father, Bence (Bennett) Kovrig, became a well-known historian – it was under his influence that Michael discovered his Hungarian roots, learned Hungarian and acquired citizenship, his Bankrupt bandmate Balázs Sarkadi told Direkt36.

As protecting its own citizens is one of the most basic responsibilities of a state, Canada and Hungary consulted each other on Kovrig’s case, an official familiar with the matter from the Canadian side told Direkt36. According to the source, foreign minister Szijjártó assured the Canadian government of his support and claimed he was personally following Kovrig’s case. At that time, Hungary had several high-level diplomatic meetings with the Chinese, and Szijjártó’s colleagues claimed that the Kovrig issue was always included in the preparatory briefing materials – however, it is not known whether they were actually raising the issue at these meetings with the Chinese.

Michael Kovrig is “considered by the Chinese authorities to be exclusively a Canadian citizen,” Hungary’s foreign ministry replied to our request. According to the ministry, this made it impossible to “conduct a Hungarian advocacy process.” Based on their response, Hungary treated Kovrig’s arrest as plain consular matter. Global Affairs Canada spokesperson Christelle Chartrand responded to our questions by saying that they cannot comment on confidential diplomatic discussions, also adding that “Canada is grateful to everyone who has also expressed concern about China’s actions”.

However, the Orbán government has never once expressed anything in public about Kovrig. In addition to an EU joint statement, several EU member states also demanded the immediate release of the ex-diplomat separately. Hungary’s government, however, remained silent. Later in February 2021, Canada brought together a coalition of 58 countries condemning the practice of hostage diplomacy because of Kovrig’s case. The only EU member state not listed among the participants was Hungary. According to Hungary’s foreign ministry, they joined as an “EU member state” – the statement is indeed supported by the European Union as such, but all other EU member states have endorsed the initiative on their own behalf as well. Kovrig’s employer, the International Crisis Group, told us that they have no information regarding Hungary’s involvement in the case.

Historian Mátyás Mervay is researching the history of the Kovrig family as well as other Hungarians with Chinese ties. According to him, Michael Kovrig, who has been sitting in a heavily-guarded Chinese prison for more than two years, has already been imprisoned longer than his grandfather was in a communist internment camp.


固有名詞のカタカナの発音(限界あり):原語・ラテン表記
ハンコー・ヴィクトル:HANKÓ Viktor
オルバーン・ヴィクトル:ORBÁN Viktor
フィデス:Fidesz
シャーンドル・デミヤーン:SÁNDOR Demján
マトルチ・ジュルジ:MATOLCSY György
メジェシ・ペーテル:MEDGYESSY Péter
スノマール・アーグネシュ:SZUNOMÁR Ágnes
ジュルチャーニ・フェレンツ:Gyurcsány Ferenc
クシャイ・シャーンドル:Kusai Sándor
メシュテル・チャバ:MESTER Csaba
アウディ:Audi
ジュール:Győr
アンゲラ・メルケル:Angela MERKEL
ベーレシュ:Béres
カトレイン・フェレンツ:KATREIN Ferenc
ピレウス:Πειραιάς / Pireás
メーサーロシュ・ルーリンツ:MÉSZÁROS Lőrinc
ウイヘイ・イシュトヴァーン:UJHELYI István
憲法保護局:Alkotmányvédelmi Hivatal(AH)
セゲド:Szeged
ペーチ:Pécs
ミシュコルツ:Miskolc
デブレツェン:Debrecen
ホルヴァート・レヴェンテ:HORVÁTH Levente
キシュ・シラード:KISS Szilárd
シイヤールトー・ペーテル:SZIJJÁRTÓ Péter
ゲッレールト:Gellért
外務貿易研究所:Külügyi és Külgazdasági Intézet
ドナルド・トランプ:Donald Trump
コルヴィヌス:Corvinus
モルナール・ジョルト:MOLNÁR ZSOLT
ピンテール・シャーンドル:PINTÉR Sándor
バッシャール・アル=アサド:Bashar al-Assad
セルゲイ・ナルイシキン:Сергей Нарышкин / Sergey Naryshkin
ヴルシュマルティ広場:Vörösmarty tér
セントイシュトヴァーン広場:Szent István tér
ファーウェイ:華為 / Huawei
タルローシュ・イシュトヴァーン:TARLÓS István
軍事国家安全保障局:Katonai Nemzetbiztonsági Szolgálat
ファイブアイズ:Five Eyes
ボーダフォン:Vodafone
テレノール:Telenor
マジャルテレコム:MagyarTelekom

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