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スティーヴン・スピルバーグ【フェイブルマンズ】|スピルバーグ映画の記憶と共に

アメリカ映画|2022年|151分|The Fabelmans
アスペクト比:アメリカンビスタサイズ 1.85:1

幼少期に【地上最大のショウ】を劇場で観て、映画の恐怖と快楽に打ちのめされた、或いはとり憑かれた少年サムが、家族と映画とに引き裂かれながらも、映画制作の道を夢見て引き寄せられていく物語。
*【地上最大のショウ】は152分、【フェイブルマンズ】は151分、なんと1分差、だからどうだって話ですが。

■主人公サムが最後に辿り着く部屋と道
スピルバーグの自伝的作品と銘打たれているようですが、どこまでがどうなのかは知りません。
映画にとり憑かれキャメラと共に育った少年サムは、家族の秘密や、友人たちとの自主映画制作や、別離や、移動や、学校での対立や、恋を通過しながら、プロムパーティーのための映画をつくり、失意の最中にパーティーで映写機を回し、作品で観客を湧かせ、彼らの心の奥にふれてしまう。
そんな主人公サムが物語の最後に辿り着くのは、映画を志すものなら、誰もがその線上にいることにならざるを得ないあの人の部屋であり、撮影所内の道。
最後に辿り着く場所が素晴らしすぎて、私は身を乗り出してしまいました。
あの人とは、ジョン・フォード監督です。
あの人が出てきた瞬間、葉巻に火をつける仕草と声ですぐ分かりました。
あの人を演っているのは意外にもデイヴィッド・リンチでした。
なぜなんだろうと思って調べてみると超越瞑想つながりらしいです。
以前からリンチはいろんなところで超越瞑想を薦めていますが、どうやらここ数年スピルバーグも夫婦で超越瞑想を行っているらしいです。

■何を語って、何を語らないか
スピルバーグ映画は好きなのですが、圧倒的に面白いというのがないように感じてます。なにかちょっと圧倒的の一歩前で留まるような、豪華な佳作が多いような感じです。
映画には何を語って、何を語らないかという作法のようなものがあるとしたら、スピルバーグは少々画面が語りすぎではないかと感じることがあります。そのために、シーンが回りくどくなっているような印象をうけるんです。
それでも、場面の転がし方が上手かったり、ヤヌス・カミンスキーの撮影がよかったりして、面白く観れますし、印象的な画面も随所に出てきます。スピルバーグというブランドに求められるものが大きいのかもしれません。
また、職人監督としての早撮りはとてもカッコいいです。
そう考えたらスピルバーグもB級ノワールやニューシネマの系譜であるということでしょうか。

■スピルバーグ映画の記憶
【フェイブルマンズ】はスピルバーグの記憶がベースになった映画ということですが。
80年代の少年期をスピルバーグ映画と共に過ごした私には、スピルバーグ映画の記憶が沢山あります。
あの頃、阪急電車内のロードショー映画の吊り広告には、ほとんどの映画にスピルバーグの名前が刻まれていました。よくみると「監督作品」はなくて「提供」と銘打たれていたものですが、それほどスピルバーグの名前は映画を観に行く理由になったんです。

【バック・トゥ・ザ・フューチャー】はスピルバーグが制作総指揮

■大学生の家庭教師に【太陽の帝国】を推薦した思い出
当時、中学2年生だった私は、大阪梅田の北野劇場か東映パラスか忘れましたが、劇場で【太陽の帝国】を観て感激しました。主役のジム少年のような革ジャンを欲しがったり、マルコビッチがベコベコのフライパンで炒める炒飯を真似したりしたものです。
映画を観てすぐの頃、ちょうど家庭教師の大学生が面白い映画を教えて欲しいと言うので、【太陽の帝国】を薦めました。すると、家庭教師は彼女と連れ立って観に行ったらしいのですが、どうやら退屈だったようで、デートが盛り下がったというのです。
中学生の頃は、映画は一人で観るものと考えていた私は、薦める映画を間違えてたなあと思いました。しかし、面白くなかったというのは仕方ないとして、映画が面白くないくらいでデートが盛り下がるのかと、恋愛などしたことなかった私は不思議だったものです。

ちなみに【太陽の帝国】も151分

■スター俳優を使わなかったスピルバーグ
確か、スピルバーグは自作への出演者にスターを起用することがありませんでした。理由は、制作スタッフよりも出演者の方がギャラが高いことへの反発だったと何処かで読みました。なので、スピルバーグは制作スタッフに正当なギャラを支払うために、出演者をある程度定額制にして、そのギャラで出演してくれる人を起用していたらしいんです。
そんなスピルバーグの考えに賛同してか、共同製作と出演で組むことになったスター俳優がトム・クルーズです。他にもディカプリオやトム・ハンクスもいますが、トム・クルーズは意外に思ったものです。
そんなトムが出演する【宇宙戦争】は、映画館で観ましたが、望遠レンズの効果なのか分かりませんが、大画面で観ることの快楽を感じるダイナミックな画面と、場面転換の巧みさに驚きました。

【宇宙戦争】

Wikipedia【フェイブルマンズ】

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