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古賀春江『海』を見てみる

数年前からずっと、これは何なんだろう? と思いながらも知ろうとしなかった絵。
中学校美術の教科書を見比べてたら、どの教科書にもその絵が載ってた。

気にはなるけど、何も理解できなかったらどうしようってこわかった絵。
今がちゃんと見るタイミングなんだろうな。

ひとまず文章はまだ読まずに、フレームワーク的に2つの言葉で掘り下げて、このウェブページを読んでみてから改めて発見があるか見てみる。



①この中でどんなことが起きてる?

妄想1:海の中には深い世界が広がっている。それは、潜水艦とかの色んな機械が発達して分かるようになったぞ! 見えるものが増えたけど、それまで信じてきた世界と混ざり合わない。断片的につぎはぎされて見える。世界は新章に突入した。

妄想2:明るい未来へ向かっていく灯台、その象徴として美しい女性が立っている。しかし油断しちゃいけない。潜水艦や工場のようなもので外の国からひっそりと侵略されつつあるぞ・・・!

②どこからそう思う?

共通すること:女性・機械・海の中(魚)が印象に残る。空が四角く切り取られている。機械の断面が見えることと女性のポーズが変。

妄想1:海の中がたくさん描かれてる。下の方には格好いい魚。上の方にいる魚とは違った雰囲気の魚。近くに断面がよく見える機械たち。メリハリの効いた機械の描き方は、格好良さを強調しようとしてるように見える。空が急に切れてて、世界にまたがるように女性がいる。

妄想2:女性の奥に灯台のような建物がある。灯台に、道しるべや希望のようなイメージを持ってる。女性のポーズが自由の女神やスーパーマンのようなヒーローっぽさがある。女性が作り物のようにきれい。貼り付けたような空が広がっているけど、海と地続きだったら確実に沈んでる位置にある。などの理由で「こんな希望に満ちた世界虚構だぜ」みたいな雰囲気を出してる。あと海の底の色が暗い。機械の色が無くて無機質。



分からないけどとりあえず書いたので、解説を読んだ。

③もっと発見はある?

(10)鑑賞のポイント
生物と機械、空と海、丸と四角、垂直と水平、立体と平面、硬質と軟質、不変と可変、新と旧、白と黒、明と暗、内と外など、対極のモチーフを拡大縮小を考慮しながら対比させ、画面に複数の視点が共存する構造をつくっている。

https://artscape.jp/study/art-achive/10021471_1984.html

どうやらこの中で物語が綴られてるわけではなさそう。
女性・機械・海の3つが印象的だったけど、対になるものがたくさんあったみたい。そう思ってみると確かに海の生き物だけじゃなくて空を飛ぶ鳥がいる。飛行船も、潜水艦と対になってたのかな。

古賀にとって理想的な社会像をいくぶん楽天的に描いている。

https://artscape.jp/study/art-achive/10021471_1984.html

理想的な社会像を虚構とか言ってごめんねって思ったので、明るい気持ちで再度見た。それなのに、飛行船は少しだけ下を向いているし、女性以外の殆どの色がちょっとずつ濁ってる。

もともと引きこもりながら自分にとっての美を追求していた古賀が、友達付き合いとか、社会のなかで、“社会についてやらなければ駄目かな”と思いながら無理して描いたのが《海》。これがこの時代を象徴するイメージになったのは皮肉といえば皮肉。

https://artscape.jp/study/art-achive/10021471_1983.html

さてはその社会にそんなに乗り気じゃないね?

理想的な社会像の文章の直後にも「機械文明の進歩を肯定しているのか否定しているのか、簡単にこうだとは言えない。言ってしまうとどちらも間違いになってしまう。」って書いてある。


「無理して描いた」の一言でいろんな違和感がする~っとほどけた。
友達付き合いで描いたってわかったら一気にこの絵が好きになっちゃった。

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