見出し画像

皆さんエイサーってご存知ですか?

ハイサ〜イ!!!

突然ですが、私は沖縄の伝統芸能である「エイサー」が大好きです。
そしてソーラン節や阿波踊りくらいポピュラーな伝統芸能にしたいという野望もあるのですが、やはり知名度がいまひとつであることは否定できません。

そこで、エイサーの布教をすべく簡単にエイサーについて紹介したいと思います。
(書き終わった後見返したら全然簡単じゃなかったです)

もし興味を持ったいただけたら、毎年1月に東京ドームで行われる「ふるさと祭り」や7月に行われる「中野チャンプルーフェスタ」「新宿エイサーまつり」などを見に行ってみてください。夏の風物詩として海馬に刻まれてあっという間に虜になります。というか虜になってください。

それではめくるめくエイサーの世界へご招待いたします。



エイサーとは?

簡単に言えば『沖縄版盆踊り』です。

ただ本土の夏祭りのような感じでなく、伝統芸能として組織化されており、盆踊りよりも複雑です。

今回エイサーとはなんぞやを知ってもらうにあたって、何を知っていただきたいか考えた時に「如何にエイサーの姿をイメージできるか」を考えました。
そのため、今回は「場所」「組織」「パート」「道具」「時期(由来)」「見せ方」をお伝えしたいと思います。

エイサーをやっている場所

場所については『沖縄版盆踊り』と一言でお伝えしましたが、実は沖縄全土どこでもやっているかというとそうではなく、地域によってはエイサー団体がない場所もあります。

しかし、この地域は絶対にエイサーをやっていると自信を持って言える地域があります。
それは沖縄県中部(宜野湾市・沖縄市・北谷町・うるま市など)です。

特に沖縄市は2007年に「エイサーのまち」宣言をして、観光資源としてエイサーを盛り上げています。

そのため、もしエイサーを見にいきたいとおもった方は沖縄市に行くのをお勧めします。(もちろん他の地域にもエイサー団体はありますが、中部に比べて数が少ないです)

青年会

場所をつらつらとお伝えしましたが、文中にあったエイサー団体という言葉。もちろん団体ならば組織化されています。
エイサーの団体は基本的に「青年会」という名前で組織されており、地域に関わらず沖縄全土地域名をとって後ろに青年会と名づけています。(もちろん全部が全部そうではないです。ただ基本的にはということですね)

青年会という名前なので、もちろん主要メンバーは若者(下が中学生や高校生、上が20代から40代くらい)がほとんどです。
また、壮年や初老のベテランが参加していることもあります。これについては踊り手の種類の項で触れます。

さらに青年会の特徴として、自治会の下部組織であることが挙げられます。

そうすると地域で行う活動にも積極的に参加することになります。地域の清掃やボランティア、婦人会や老人会の手伝いなどですね。

伝統芸能の組織はその伝統芸能を継承する目的で結成されることが多いと思うのですが、エイサーは伝統芸能というより「民間芸能が広く大衆化、形式化した」と言えるため、普段の生活に密接に関わっていることが特徴と言えます。

そのため道ジュネーの項で詳しく触れますが、地域を練り歩き地域の人にエイサーを見せることも青年会の活動の一つです。
毎度大きな広場で大勢の人の前で踊っているわけではないんですね。


それでは青年会という組織について触れたところで、青年会を構成するメンバーについても紹介いたしましょう。

踊り手の種類

エイサーは全員が同じ踊りをする訳ではなく、それぞれのパートに分かれてその団体独自の型で踊ります。
※地域によってパートそのものも変わってくるのですが、ややこしいので沖縄県中部を元に紹介していきます。(下図)

地方(ジカタ)

(※地謡(ジウテー)とも言います)
三線を弾きながら、代々団体に伝わる歌を弾き語り踊り手を導くパートです。踊りを極めたベテランがなる場合が多く、歴史ある団体だと高齢の方が担当されていることもままあります。
地方の歌い方や熟練度で踊りの雰囲気がかなり変わるため、とても重要なパートです。

チョンダラー

(※サナジャーとも言います)
エイサーの隊列から離れて少数で自由に動き回っている人たちです。白塗りでふらふらしているため、ひと目見ただけでは何をしているかわかりません。
しかし、実は隊列を整理したり、旗頭をサポートしたり、観客に手拍子を求めたり、滑稽な動きをして笑わせるなどなど、エイサーを盛り上げるために縦横無尽に駆け回る縁の下の力持ちのような役割なので、ベテランしかなれません。
また団体によりますが、踊りを始める前にチョンダラーだけで場を清めたり会場を盛り上げるために踊る場合があるなど、チョンダラーに注目するのも楽しみの一つです。
ちなみにチョンダラーの由来は諸説あるのですが、エイサーにおいては妖精のような扱いであるため、自由に動き回っているという説もあるそうです。チョンダラーはチョンダラーで調べてみると面白いので、別記事にて書いてみたいと思います。

旗頭

基本的に隊列の先頭で団体名が書かれた大きな旗を持っている人です。見た目から想像つきますが、かなり重たいので力がある人じゃないと旗を持ったまま踊り切ることはできません。
旗頭によっては旗を投げたり回したり、アクロバティックな持ち方をする方もいるので、魅せるパートの一つです。
力持ちがやるパートであるとはいえ、風の強い沖縄で、体に紐を括り付けたりせず腕力だけで持っているので旗頭の方も結構きついと思います。(筆者も経験はありますが、風が少し吹いただけで倒れそうになりました。重労働です)

大太鼓

踊り手の(旗頭を除いた)先頭にいる、面が直径30cmはあるんじゃないかと思われる大きな太鼓を持った人たちです。私は勝手にエイサーの花形だと思っています。
後述する締太鼓やパーランクーを経て、経験を積んだ人が大太鼓になることが多く、団体の会長が大太鼓を持っているイメージがあります。

締太鼓・パーランクー

小さな太鼓を振り回して大きく魅せるパートです。一番人数が多く迫力があるので、初めてエイサーを見た方は締太鼓に魅了される方も多いと思います。
また、上図にはありませんが、パーランクーという手持ち太鼓(道具の項参照)がエイサー団体に入った人が最初に持たせてもらえる太鼓である場合もあります。

男手踊り(イキガモーイ)

手踊りという道具を持たずに踊るパートです。空手の型をモチーフにした踊りである場合が多く、力強く魅せることを求められます。
動きの基礎を覚えるために太鼓を持つ前に手踊りから始めさせられることがほとんどであるため、エイサーをやっている人は所属団体の手踊りを覚えています。
※余談も余談ですが、団体によっては男手踊りがない場合もあります。特に本土で独自に踊りを作ったエイサー団体は男手踊りがないことが多いです。

女手踊り(イナグモーイ)

女性オンリーのパートです。男手踊りと違い、しなやかさを求められるエイサーの華です。
女性オンリーなので衣装も絣や浴衣が主で団体によって太鼓隊よりも違いが出てきます。エイサーを見て太鼓隊の衣装を見てもわからない時に女手踊りの衣装を見て判断するみたいなことがあったりします。完全に個人の主観ですが。

また、余談ですが女手踊りは完全女性だけのパートで、一昔前までは女性がエイサーに参加する際は女手踊りしかできませんでした。しかし時代が変わり、今は女性でも地方を担当したり、締太鼓や大太鼓、チョンダラーを担当されている方もいらっしゃいます。
男性は女手踊りとして参加することはできませんが、踊りを全て覚えているベテランのチョンダラー(男性)が女手踊りの隊列に加わって踊ってたりしています。

以上が基本的なパートです。
エイサーを見ていくうちに推しパートみたいなものができてきて、その沼にハマってしまうこともあるかもしれません。

道具

パートの項で役割についてお話しましたが、パートごとに使う道具が異なるため代表的なものを紹介したいと思います。

大太鼓

和太鼓より小さいサイズですがそれでも6~10kgほどあります。

締太鼓

手作りである場合が多いです。大体面が15~20cmほど、胴が縦15cmほどの大きさです。大きく振り回す、上に下に動かすなど、音で魅せる大太鼓と違い動きで魅せます。

パーランクー

こちらも締太鼓と役割は似ていますが、迫力よりも息を合わせて踊ることを是とする団体が多く使っているイメージがあります。

パーランクーはあまり聞き馴染みがないと思いますが、手持ちの太鼓で「ポンッ」という軽い音がでます。小学校などで総合学習の時間にエイサーをやったことがある方はこちらの方が馴染みがあるかもしれません。

以上の三つが主に使われる太鼓の種類です。

それではその他の道具を紹介しましょう。

鉦(しょう)

聞き馴染みがないと思います。それに使っている団体もほとんどいません。ただ個人的にとても古式ゆかしい音だと感じています。(私が知っているのは沖縄市池原青年会と同登川青年会です)

三線

沖縄で伝統芸能や音楽をやる時は必須と言っても良いアイテムです。基本地方の道具ですが、たまにチョンダラーが弾きながら隊列の横を歩いていることもあります。しかしあまり見かけません。

四つ竹

カチカチ音を鳴らす道具です。主に女手踊りが使います。音はよさこいで使う鳴子に似ています。団体によっては四つ竹を使わずに扇子を使っている場合もあります。もしくは両方使っていることもあります。

クバ笠、クバ扇

沖縄でクバと呼ばれるヤシの一種(一般名称はビロウと言います)を用いて作った笠や扇のことです。主に笠は地方とチョンダラー、扇はチョンダラーが使います。

時期と由来

ここまでで、エイサーの姿形についてはなんとなく想像がついたかと思われます。ここで少し掘り下げてエイサーの中身について説明いたしましょう。

エイサーは季節行事として主に旧盆(一般的には8月盆)に行います。
旧盆という言葉自体本土では馴染みが薄いのですが、沖縄だと旧盆には旧盆の慣習があります。
ではなぜ旧盆にやるのでしょうか。

元々エイサーは踊る目的が先祖への供養だったとされるからです。
実際に現地でウンケーとウークイ、間のナカビの三日間にそれぞれの地域の団体がエイサーを街中で披露します。
意味合いとしては本土の人が迎え火や送り火を精霊馬を作って行うことと大差ありません。

ということは「エイサーは仏教儀礼として始まったのか」と思われるかも知れません。
実際仏教に通ずる歌を用いた踊りもエイサーには存在します。

ただこれについて明確な解答を記載することができません。
なぜなら「由来がわかっていない」からです。


時期は伝統的に決まっているのに由来がわからないというのもおかしな話ですが、実はエイサーはどこで生まれ、どのように伝承されてきたかについては全体から支持される学説がまだ存在しません。

一応有力な学説はあります。仏教由来、エイサーよりもポピュラーだった「組踊」という舞踊が民間に伝えられて変化したなど色々です。

もうここから先は学術論文の世界になっていくので掘り下げません。
個人的に調べたこともありますが、一年かけても結論が出ず深淵にさらに潜り込む結果となりました。
なので、なんとなく「エイサーってこの時期にやってるんだな〜」ってことがわかっていただけたらそれで十分です。
(ここまで掘り下げておいて終わらせるのも申し訳ないのですが、真面目に書くと5万字を超えそうなので)

なのでそろそろエイサーの見せ方についてフォーカスしていきましょう。

固定演舞と道ジュネー

エイサーは二種類の見せ方があります。
一つはオーソドックスに広い会場の真ん中で集合して踊る「固定演舞」(個人的にこう言っているだけなので現地の人は違う言い方をしているかもしれません)。
これは戦後「全島エイサー祭り」が行われるようになってからよく見られるようになりました。(というより戦前はエイサーを祭りとして人を呼び込んでやることはしていませんでした)

そしてもう一つは「練り歩き」です。

阿波踊りや花笠踊り、よさこいと同じように大通りの真ん中を封鎖して行うこともあるのですが、こちらはお祭りとして体系化された後の姿です。

そして↓が本来のエイサーの練り歩き。

(エイサーの音はありませんが場面が想像しやすいので採用しています。うるま市はセンスがありますね)

おもっくそ民家の隙間や近くの公園みたいなところでやってますね。
この練り歩きが本来のエイサーの姿です。
エイサーとしては「道ジュネー」といいます。


※余談ばかりで申し訳ないのですが、この「道ジュネー」について、なぜやるのかというところに少し面白いと思うことがあるので紹介させてください…

道ジュネーですが、やる理由は色々あるみたいです。ただわかりやすいところで言うと、資金集めや打ち上げ用のお酒集めです。

青年会という組織は非営利なので、自治会や地域の人たちの寄付で成り立っています。
(ただ沖縄から本土に遠征する団体が遠征記念と銘打って色々グッズを作って売り、遠征資金にしていることもあります。なんなら以前の遠征の時作ったグッズを売り続けている場合もあります。私は「新しいグッズだ!!」と確認せず何度か同じ物を買いました。私の浅はかさもさることながら疑問が湧きますね。非営利とは・・・?)

そのため、お祭りなどで集合して踊るエイサーをよく見ますが、エイサーをやる方からすると道ジュネーの方が地域への顔見せ、文化の継承などを含めて本分であったりします。


完全に個人の感想が入った余談でしたが、気を取り直して固定演舞と道ジュネーの魅力について紹介いたしましょう。

固定演舞で言えば「隊形があること」です。
以下の動画を見てもらえばわかると思いますが、大きな会場の中で円になったり、集団で移動しつつ踊っているのがよくわかります。

上から見ると動きが合っているとかなり美しく見えます。エイサーの醍醐味の一つです。

一方の道ジュネーの魅力は何かというと、「長い時間リラックスした状態のエイサーを見られる」ということだと思います。
基本的に道ジュネーは所属団体の地域を時間をかけて練り歩くことがほとんどであるため、固定演舞が20分~30分なのに対して道ジュネーは数時間エイサーをやりっぱなしです(もちろん曲の切れ目や交差点を渡る時など小休止はあります)

ずっと踊りっぱなしなので、途中で踊りながら水を飲んだり、仕事の関係で遅れてきたメンバーが合流してきたりとかなり自由です。

また固定演舞ではしないような曲順で踊ったりすることもあるため、「そこからその曲いくの!?」という驚きもあります。
ある程度エイサーを見ている方は道ジュネーを見ると面白いのではと思います。


あとがき

エイサーの魅力までお伝えできたところで、私が思うエイサーの知っておくべき基本情報を全て書き切ったかと思います。
もっと詳しく書けることもあるのですが、あまり長いと読みたくなくなってしまうと思ったので少し短くしました。(それでも長いとは思ってます)

noteを始めて、「好きなことを布教したい」という想いから勢い余って書いた文章ですので稚拙な書き方になってしまいましたが、もしお時間があるという方に読んでいただき、エイサーはこんなに面白そうなんだよ、ということがわかっていただければ幸いです。

もし、時間ができたらもうちょっと踏み込んだことも書いてみたいと思います。
●エイサーの由来検証〜袋中上人とえさおもろ〜
●エイサーの歴史(近代現代編)
●全島エイサーコンクールと全島エイサー祭りについて
●好きな青年会とおすすめポイント
など…

エイサーの魅力を多くの方に知っていただきたいと思っておりますので、引き続き色々書いていきますがお付き合いのほどよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?