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出帆「英語のそこのところ」第131回


【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2017年3月30日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 4月から社会人という方もいらっしゃると思います。今回はNative English Speakerと我々Native Japanese Speakerの仕事に関する責任感の違いにびっくりした話です。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

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映画や小説の台詞を英語にして英語力を鍛える「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル16」発売中!

 English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト(全10巻)で、英文法を網羅しましたので、「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル7」以降では、様々なコンテンツの名言、名台詞を英語するより実践的なトレーニングをやっています。
 この「ドリル16」ではレイ・ブラッドベリの「華氏451度」 を題材に英文を作っていきます。

古典ものは切り詰めて、十五分のラジオ番組に当てはめる、それをさらにカットして、二分もあれば目が通せる分量に縮め、最後はぎりぎりに短縮して、十行か十二行の辞書用梗概となる。
おれたちの人生は、今や大きなサーカス、軽業の演技場だよ。
わかりません。僕たちが幸福でいられるために必要なものは、一つとして欠けていません。それでいて、ちっとも幸福になれずにいます。
それには何かが欠けているに違いありません。。
考えてみますに、僕たちの手からなくなったものと言えば、この十年か十二年の間、僕たちの手で焼き続けてきた書物だけです(華氏451度)。

英語でどう言うのでしょうか? 
このテキストを使えば、きっちり身に付きます。お試しください。

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大好評! Kindle で一日500ページビュー 「English Sentence Maker」シリーズ

 English Sentence Maker は、あなたの感情や意見、思っていることを伝えるためにはどの時制や助動詞、文法事項を選ぶべきかがわかる実践英語・英会話力養成テキストです。

 著者の主宰する英会話スクール「英語・直観力」の企業向けテキストから、契約企業様向けの問題文などを差し替え、一般向けに手直ししました。

 7年間で100名以上のビジネスピープルを単独での海外出張や海外赴任ができるスキルを持った国際ビジネスピープルにした実績があります。

 ぜひ、この実績あるテキストを完全マスターしていただき、世界を相手にビックディールを成し遂げ、人生を愉しんでください。このテキストはその扉を開くカギになります。

 実践英語・英会話力養成テキストEnglish Sentence Maker は、3つの特色を持っています。

 ひとつ目は、能動的な学習だということ。
 English Sentence Maker は書き込み式のテキストです。各Lesson ごとの解説を読み、そのあとに掲載されている日本文をご自身のノートもしくはkindle のノートブックなどに英語にして書き入れてください。その際に、知らない単語は調べたりせずに、日本語のまま英語の文の位置においてください。そうすることで、知っている単語、知らない単語を区別し、身に着けるべき単語を浮かび上がらせることが出来ます。

 ふたつ目は、どの文法事項を使うかの判断基準を身に着けられるということ。
 小・中・高校と長い間英語を学ぶために、多くに人々は英語の現在形、過去形などの文法事項を知っています。しかし、残念ながら、その文法事項をどういう場合に使えばよいかという判断基準を身に着けていません。

 たとえば、ここ何ヶ月かフットボールに夢中になっているということを伝えたい場合に使うべき時制は、現在形でしょうか? それとも現在進行形でしょうか? 迷われると思います。
 この知ってはいるけれども使い方に迷ってしまう文法事項を使う判断基準を各Lesson ごとの解説でくわしく説明しています。それを理解することで、英語を使う際に十全にあなたの感情や意見、思っていることを伝えることが出来るようになります。

 みっつ目は、英語を英語で考えることが出来るようになるということ。
 English Sentence Maker は日本語を英語にしていくことで、英語を習得していくテキストです。しかも、どういうときに、どういうことを言いたいときに、どの文法事項を使えばよいかという判断基準が出来ていくために、日本語の文字面を英語に移していくのではなく、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを英語にするというスキルを身に着けることが出来ます。頭の中のイメージから英語を作ることが出来るということは、そこに日本語は介在しません。つまり、英語を英語で考えることが出来るようになるのです。

具体的には、

私は彼が来るだろうことを知っていた。

という日本語を英語にする際には、日本語の文字面を英語に移していくと、

I knew that he will come.

と、しがちです。「知っていた」なのでknew、「来るだろう」なのでwill comeというわけです。
 しかし、よく考えてください。「彼が来るだろう」というのは、「私が知っていた」過去の時点のことです。であれば、「彼が来るだろう」と書いてあっても、過去から見た未来のwould を使って、would come としなければなりません。日本語をその字面のまま英語にしてはいけないのです。しかし、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを、判断基準をもって英語にすることが出来れば、問題はなくなります。頭の中に時の流れのイメージがあるために、

I knew that he would come.

という英文が難なく作れるようになります。 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。

☆「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト」および「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル」で使っている英文はすべて、Native English Speakerと協同で製作したものです。安心して、Native English Speakerの自然な英語を知り、習得してください。

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【本文】

 私が新卒で就職したのは94年の4月でしたから、もう20年以上前のことになります。いわゆるバブルを大学生の時に経験していて、新宿のスナックでバイトしていたときは、仕事場のお姉さんたちや、お客さんのお姉さんたちからのバブルのおこぼれに与っていました。今では考えられないことですが、大学生のインチキバーテンダーにポンッと、
「かわいいわねぇ、大学生? この時間じゃもう電車ないでしょ? タクシー代にして」
 なんていって、一枚くれたりする。
 一枚ったって漱石さんじゃなくて、諭吉さん。タクシーに乗って住んでた吉祥寺まで帰ってもおつりがくるし、なによりまだ終電前の時間で充分帰れる。
「あ、いや、ご好意は嬉しんですけど、まだ終電前の時間なんで、大丈夫です」
 今から考えると野暮天も野暮天なんですが、そんなことをいっちゃって、横にいたママさんや先輩のバーテンダーさんからウケが取れたりする。
 一枚出したお姉さんは、ムッとするどころか余計にうれしそうな顔をして、
「いいのよ、もらっときなさいよ。バカね」
 なんていわれる。
 はて? なにがバカなんだろう? と思いながら、どうももらっといた方がいいのかなと思ってポケットに収めるんですが、だからといって、あとからそのお姉さんに何か対価を要求されることもない。さっぱりしたものでした。
 お金があり余っていたんでしょうねぇ。そうじゃなきゃ、普通の大学生の私のところまでなんか回ってくるはずがないですから。
 なので、就職したときもまあまあの金額を初任給でいただいていて、ああ、社会ってこういうものなのね、と今から思えばずいぶん傲慢なことを思ったものです。まぁ、その初任給の金額が上がることもなく、退職するまでずっと同じ額でしたけど(笑)

 初めに就職したのは「進学塾」でしてね。
 バブルを経て、終身雇用の崩壊なんてことはいわれていましたが、この社長さんが昔気質というか昭和というか、うちに就職したからには最後まで面倒見てやる的な侠気のある方で、部下のミスはおれのミス、部下の成功はそいつの成功、尻拭いはしてやるから思いっ切りやれという方針でした。
 できて10年ほどの会社でしたけど、当然終身雇用のつもりで従業員を雇っている。きちん退職金制度もあって、そして、「塾」にはめずらしいバイトがいない会社だった。
 ご存じない方がおられると思いますので、説明させていただくと、基本的に「塾」というのは一支店に社員は多くても1人か2人なんです。3人いる支店だとかなりの大箱で生徒数は500人を超えるのが普通です。そんな人数の生徒を3人でどうさばくのかって疑問に思われるでしょうけど、社員は基本、授業をしないんですね。授業は「大学生」や「社会人の講師」のバイトにやってもらう。社員はその講師陣の管理が仕事です。

「うちは、バイトを雇わないんだ。授業は社員が全部まかなう方針にしている。なんでかわかるか? とく」
 碇肩で、首のない、ゴルフ焼けしたオールバックのヤクザみたいな社長にいわれて、業界の常識を知らなかった私はきょとんとしましてね。たぶん、社長は自慢したかったんでしょうけど、これまた、野暮天で、暖簾に腕押し、襷に長し、わかりませんって答えちゃう。襷は関係ないですけど。
「お前、ほんっとうにバカだな」
 とここでも言われる。
「バイトなんてな、責任感がないんだよ。その時間だけ適当なことを子供たちにいって、テキストやらせてそれで時給をもらえればいいと思ってんだ」
「まぁ、そうですね」
 実際、私もスナックでバイトしているときそうでしたからね。ああ、今日はお客さんが来ないなぁ、ラッキーってなもので、お茶を挽けると嬉しかった。
「でも、飲食みたいな業界と違って、この業界は年に一回責任を問われるんだよ」
「受験結果ですか?」
「バカの割には気がつくじゃねぇか」
 口の悪い社長でしてね。バカな私だって、それぐらいは想像がつく。
「バイトの講師なんてのは会社に帰属してないだろ? 授業してたって進路指導もしないし、生徒たちが不合格になったって関係ない。あんたの担当した生徒が不合格になったから時給を減らしますなんていわれたら辞めて、バイト先を変えればいいぐらいに考えてやがる」

「なるほど」
「でも、社員ならそうもいかない。会社に帰属してれば、その会社に迷惑かけられないってだけで責任感が生まれるし、結果が出なければ会社は大きくならない、自分の給料も上がらない。それが不満で会社辞めたって、次がそれ以上の給料って保証もない。だから、社員でまかなってるんだよ」
 そのときの私は確かになって思ったものです。本当に、そのときの「進学塾」の成績はすさまじくって、一学年80名の中から、中学受験は早慶は楽勝で開成・櫻蔭を初めとする御三家、高校受験は早慶の附属や国立高校に合格者を輩出していたんです。申し訳ないことに、定員以上の生徒は受け入れなかったから入塾をお断りもしていたし、成績が下がると退塾もさせていました。
 でも、確かになって思う一方で、「ああ、やばいなぁ、社員になるって大変だなぁ。お気楽極楽な大学生に戻りたい」なんても思っていたのですが、それは後の祭り、就職して2年間はほんとに寝る時間がなく業務と英語の勉強に追いまくられて、3年目にはまあまあ人に会社員ですっていえるぐらいにはなっていました。

 その後、いろいろあって私は10年後出版社に編集として転職するんですが、そのとき思ったのは最初の「進学塾」が稀有な昭和な会社だったんだなってことでした。
 出版社の次に就職した「英会話スクール」は、「ベンチャー企業」を標榜していたんで、大切なのはまずその場の売り上げ。営業成績が上がらない社員はすぐ退職させてましたし、スタッフのミスはスタッフのミス、マネージャーはそのフォローもしなければ、スタッフを守ってやることもしない。退職金制度もありません。嫌ならいつでもやめてください。でも、給料はいいでしょう? というわけです。

 初めは、「昭和な会社」と「ベンチャー企業」の違いにびっくりしましたが、時代の流れなのか英会話スクールでカウンセラーとしてお会いする受講生の方々の多くは「ベンチャー企業」型で、自分を『やっぱり古い人間でござんしょうかね』と苦笑いしながら、冷酒を呑み『今の世の中、右も左も真っ暗闇じゃござんせんか』(By鶴田浩二)と嘆いたものです。
 それは冗談として、世の中にはいろいろな経営方針やマネージメントの方針があるもんだなと思ってたんですが、その中でどうしても納得がいかなかったのは、Native English speaker 講師が登録制だったことです。
 それに関して、入社してしばらくしてマネージャーに食ってかかったことがあります。

「もし、受講生の英会話スキル向上の保証をするという宣伝をするなら、講師は登録制じゃなくて、社員にしないと上手く行かないんじゃないですか?」
 徳田がマネージャーの赤崎に食ってかかった。赤崎と徳田のいる会社は登録した講師に受講生を紹介してレッスンをしてもらうという形式をとっている。そして、その多くがアシスタント・ランゲージ・ティーチャー(ALT)を学校でやっていたり、他の英会話スクールで講師をやっていたりする連中だ。つまり、この会社は、バイト未満の責任感しかもっていない講師たちをお客さんに紹介しているのだ。
「う~ん。徳田さんはそういうけどね。社員にするとビザの関係とかで経費がかさむんだよ」
「それは判ります。でも、こういう風に必ずスコアが上がりますって宣伝するなら、責任感を持った社員にしないとお客さんに『嘘』をつくことになりませんか?」
 徳田は、受講生の成績向上に関心がない無責任な講師たちをお客さんに紹介するのは騙すことだと思っている。そんなことに関わるのはまっぴらだった。気持がにごるのは御免だ。
「? 徳田さんが気にしてるのは、講師の責任感ってこと?」
 赤崎が徳田が心配している中身を知ってそう確認する。
「そうです。私の経験ですがバイトの講師なんて、ぜっんぜん責任感ないですよ。あんたの担当した生徒が不合格になったから時給を減らしますなんていわれたら辞めて、バイト先を変えればいいぐらいに考えているんですから」
 徳田は遠い昔にいわれた言葉をそのまま赤崎にぶつけた。少々状況は違うが。
「ああ、そういうことね。それなら、大丈夫だよ。Native English speaker と日本人は仕事に対する感覚が違うから」
「?」
「Didoに訊いてごらんよ。徳田さん、驚くから」

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