短編小説『もしスノボみたいな板で空を飛べたら』

 中学生の男子が2人、下校している。

「俺さ、スノボするんだけど、たまに映画とかマンガであるじゃん? スノボみたいな板に乗って宙に浮いて空飛んじゃうやつ。あれほしくない?」

「まぁ、あったら便利かもね。でもめんどいよ」

「なにが?」

「そんなのが普及してみ。

 空中で事故起きるじゃん。それで落下して死ぬじゃん。そういうことを未然に防ぐために、浮くスノボの免許も取らなきゃいけなくなるだろうし、免許取るにしても免許センターみたいな施設が必要になるし。

 そもそも交通ルールも必要だな。空中にある信号も必要になる。
 新しい保険も必要になるよ。
 それが窃盗に使われて空中に逃げられてみ? 警察もそれに乗る訓練しなきゃいけないんだぜ?
いたずらで物隠されるようになったら、探す場所が2次元から3次元に広がっちゃうぜ?

 いま思い浮かぶだけでこんなにあるんだから、これに対応していかなきゃいけないんだって考えたらさ、それに伴う事務の多さハンパじゃないよ。経済効果もハンパないだろうけど、仕事量がめんどいよ」

「……誰目線だよマジで。
 たぶんさ、こういう話題出したら『いいよなー』とか『いらねぇわ』とか『スノボ乗るんだぁー意外ー』とか最悪『へー』ってつまんなそうに返してもいいんだよ。
 現実を勢いよく提示してくんなよ」

「でもそっちが理由訊いてきたじゃん」

「それは……あ!
 だからお前のあだ名『リアル』なんだ!」

「俺って『リアル』って呼ばれてんの?」

「……あだ名の由来だけで悲しいのに、上乗せしてくんなよ」


おわり

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