読書 - 経済学という人類を不幸にした学問

昨今、NYダウなどでサーキットブレーカーが発動するレベルで世界的にマーケットに影響を与えている新型ウィルスであるコロナ。感染力が非常に強いことから社会的にリモートワーク推奨など、人の動きが制限されていることから、景気の先行きが不安視されている。個人的な印象では、景気が下向きになり始めると経済学の話が注目される気がする。公共事業を増やして需要創出をするケインズ経済学、量的緩和といわれるマネーサプライを増加させることで需要を喚起するマネタリストの経済学。このコロナショックを機に経済学を復習しようと思った矢先にこの本を本屋で見つけたため、手に取ってみた。本書は、経済学会で傲慢な発言をしてきた自由貿易を推奨するポール・クルーグマンの考えの過ちを紹介している本である。

クルーグマンの過ち・自由貿易の副作用

クルーグマンが推し進めた自由貿易によって、ハイパーグローバリゼーション(あらゆるものが規制なしに自由に取引になること)を引き起こした。このハイパーグローバリゼーションにより、アメリカ国民を不幸に陥れたという。国民は、消費者の観点だとより安くていいサービスに群がるが、その利益は生産者側(資本主義経済だと経営者)の手に利益が渡る。つまり、生産者利潤と消費者利潤を同義に捉えてしまっていたが、生産者利潤>消費者利潤となってしまい、貧富の差が拡大したということである。生産者利潤>消費者利潤が起きるカラクリはこうだ。製造は安い労働力の国へ移す。それを関税のない自由貿易の制度下で本国へ輸入する。それを本国の消費者に購入させる。そうすると、財・サービスが売れるので生産者の利潤は増えるのだが、実際の生産者は安い労働力の国であり、その労働者たちが賃金を受け取る。本国の人間という意味では、その采配をしている経営者のみである。従って、アメリカ本国の所得という意味では、経営者のみである。これが、貧富の差が拡大する仕組みである。伴って、GDPは増えるが雇用者は減少する。
また、アメリカ経済学者は、国際貿易が増えると収入格差は増えると想定はしていたが影響は小さいと考えて問題にしてなかったのである。彼らの分析で貿易と労働の関係を見ていたのだが、90年代当時のデータ量はあまりに少なかったし、時代が昔ということもありデータの取得に1年以上も費やす。つまり、分析データが数年古かったということである。また、特定の部分にフォーカスする分析的手法をとらなかったのもある。

見方を変えれば、財の成り立ちは単純労働と高付加価値労働に分かれ、単純労働は安い労働力の国へ、高付加価値のみ先進国の本国に残る。そのため、本国の単純労働者の労働人口が減り、本国での生活が困難になることを意味するとも解することが可能ではないか。

上記の通り、自由貿易に弊害あるため、トランプ大統領のような時刻保護主義(保護主義)が台頭してくる。しかし、ここ何十年かは自由貿易を前提に様々なシステム組んでるので、できることとやろうとすることは逆行してしまうため、現実的なことをしていくのはかなり厳しい。と語る。

様々な経済学

マーシャル、フィッシャー、ケインズ、ヒックス、マルクス、ピケティの6つの式が紹介されているが、以下の考えに帰結する。

Y=M
Yield :ある国全ての経済活動GDP 実物経済、財物市場
Money supply :お金の総量、貨幣経済、金融市場
<マーシャルの方程式>
M=kpY
M :Money supply
p :price
Y :Yield
k :マーシャルのk (左辺と右辺の調整)
<I・フィッシャーの交換方程式> = マーシャルの方程式(Y=pQのため)
フィッシャーは貨幣数量説で考え、貨幣の流通量で景気や物価水準を人工的に操作可能と考える論。具体的には、インフレターゲットのように貨幣を増やせば景気回復する論。(後々大きな間違いとなるのだが。。。)
Mv = pQ 
M :Money supply
v  :verocity (貨幣流通速度)
p :price
Q :quantity
<ケインズの有効需要の原理> = (C + I = Mのため)
貨幣の流通量ではなく、需要が世界を作っている考える論。面白いのは、数式の裏に隠れているのはコストと知能であり、マルクス経済学に通ずる。
Y = C + I
C :Consumption ( = Cost = 設備投資&無能な社員)
I :Investment ( = intellect = 有能な社員)
<ヒックスの方程式> = ( I・S = Y  ,  L ・ M = M)
何を示したいのかよくわからない式。ヒックスがケインズの理論から勝手に作った式。現在は、煙たがられる理論のようである。(インチキ経済学)
I ・ S = L ・ M
I :Investment
S:Saving
L :ligudity (=流動性選好)
M:Money supply
<マルクスの基本定理> 
会社に置き換えると、
「会社の儲け」=「工場や設備と、労働者の経費」+「有能な労働者が生み出す剰余価値」
X = C + N
   = C + I = Y (=ケインズ)
X :商品の価値
C:生産性 (=不変資本 = 固定資産/備品/コマとしての従業員)
N:労働 = 剰余価値 (=可変資本 = 流動資産/R&D)
CはYの関数である。そのため会社の利益は、搾取率(有能な社員の剰余価値)と同等となる。この考えが中国に広がり今の中国があるとのことである。中国の優秀な人間は資本論を頭にたたきこんでいる。
参考書籍:今の巨大中国は日本が作った (置塩信雄の式)
<トマス・ピケティ> 
資本増加率が経済成長率を常に上回る。つまり、金持ちはより金持ちになる理論。
r > g
r :資本成長率 ( = M)
g:経済成長率 ( = Y)

マルクス経済学

マルクス経済学は以下の3つの骨格から成る。

1 資本の生成過程(仕入、製造原価)= C
2 資本の流通過程(商品の販売、販売代金の回収)= C
3 資本家的生産の総過程(利益分配)= N

3の分配は地主/銀行/企業で分配するため、労働者への利益分配はない。
労働者の賃金は、1にしか含まれない。
つまり、労働者の賃金は製造原価に含まれるってことになる。

最後に

自由貿易がうまくいなかったのは、比較優位性が崩壊していたからである。つまり、絶対的な安さがグローバル競争で勝ち抜く術になってしまったこととある。
これが何を意味するかというと、設備投資の威力でてなく労働集約に依存した生産といことである。
だから、後進国の労働の安さであるアジアに製造の軸足移動させる。
→アメリカの労働市場の空洞化を招く。
→旧来の理論であれば、生産増大されて失業が減り、商品が売れなければ賃金半分・又は利益がなくなれば解雇が机上の話だが、実際にはここまでの施策は会社として打てないため。
セーの法則もケインズが非難、供給に伴って需要は有り得ない。全くの逆であると唱えていた。上記の通り、ケインズは、有効需要あってのマーケット。有効需要を強制的に増加させる施策が政府の資金投入(公共事業等)である。

自由貿易の弊害を軽んじてしまい自由貿易を押し進めてきたクルーグマンの過ちについて記載されているが、古典派経済学などキーとなる経済学の解説もある。マーケットのマネーサプライを増加させることで景気をそこあげするようなマネタリスト的考えも現代では有効に機能しなくなってきている。これは現代の経済において、ケインズ経済学でいう乗数がマイナスになっているためと記載されている。また、中国がここまで成長したのはマルクス経済学を現代の仕組みにきちんと落とし込んだことによるのが記載されていたりするのでより興味がわいた方は是非手に取ってほしい。

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