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自分由来の「いい」を考える。展示「いいはどこだ。」を経て

2022/02/20に徒小僧のメンバーで「いいはどこだ」という展示を、ギャラリー林檎の木で開いた。開催してそろそろ1年が経とうとしているが、少し振り返ってみる。

01.きっかけ

そもそもメンバーに声をかけた時は、僕から「偽物の本物、本物の偽物」という展示をやりたいと声を掛けたのがきっかけだったと思う。

この時は、「烏兎の痕跡」という写真展をやった後で、『写真って印刷するといいなー』と感情的になっていたのだけれど、ふと時代と逆行しているようで(昔は良かったというジジイになった気分)自分の中に気持ち悪さも感じていた。
印刷した写真がいいんじゃない。印刷しないと魅力が伝わらない力の無い写真しか撮れていないのではないか?今の時代にあった表現の手法があるはずだ。
そう、今を考えると「偽物」のクオリティが上がってきていて本物を超えてしまう瞬間が増えてきているなと感じることも多くなった。
そもそも写真家から言わせれば僕の写真なんて「偽物」である。
あれ?本物ってなんだ。
こんな話を友人たちにしたことから「いいはどこだ」が始まった。

最初は偽物と本物についてぐるぐる思考していたので「偽物の本物、本物の偽物」というタイトルを提案していたが、メンバーで議論するうち僕の問いは「いい」という感覚がどこにあるかが重要では?となり「いいはどこだ」というタイトルになる。
これがこの展示のきっかけ。だったと思う。(記憶なんて曖昧よね)

02.展示内容

さて、そんなこんなで「いい」を探す思考の旅がはじまる。
基本的な展示の方向性は来場した方々が「いい」について再考したくなる空間だ。これがいいと僕たちの感覚を表現するものではない。あくまで考えるためのガイドのようなものを作りたかった。
僕たちは4つの問いをたて、考えるきっかけをアウトプットとして展示した。ここでは、それぞれについての僕の心を共有したい。

Ⅰ.媒体
 見方を変えて、見える世界は同じものか?

最初の問いは、写真展で感じた「印刷するといい」という感覚を疑うものだ。同じ印刷でも紙の種類を変えたり、ディスプレイに投影させたり、自分のスマホで見たり。
みる媒体を変えた時、どこに「いい」と感じるのかを探す。
僕のこだわりは、自分のスマホを使って写真を見れるようにしたこと。
壁にくっついているipadと自分が使っているスマホでは、感じ方が全然違う。良いと思える写真も違うかもしれない。
そんな自分の感覚を探る導入として、媒体を展示した。

Ⅱ.価値
 「モノ」の真価を見極められているか?

次は、価値と演出。
写真に写っているのは、なんてことはないボルトとナットだ。
しかし、台に置かれていたり、布を敷かれていたり、触るときは慎重にと訴えかけてくる手袋が置いてあったり。
なんだか、ボルトはボルトでも素材が違うのか?特殊な用途?そうすると高いのか?などと妄想してしまう。
そんな、価値感覚を揺らし自分の「いい」を不安定にさせる装置として展示した。

Ⅲ.生活
 幻想に馳せすぎて足元を疎かにしていないか?

きっと誰もが使ったことのある、ユニクロTシャツとMONO消しとコーラ。
それ以上でも以下でもない。

なぜこれを展示したかというと、僕らの作るものは、幻想で遠いものだと感じたからだ。
写真は僕らが魅せたい世界を切り取っているから、現実よりも美しく映る。
なんてことないボルトだってなんかいい感じに魅せる。
でもこれらは、僕らの「いい」という世界観を見せられているだけ。
目的と違う。

だから感覚をリセットしたかった。
写真なんて年に1回も印刷しないし、すごく演出されたブランド品だって買わない。
今日もユニクロのTシャツを着て、コーラを飲み、消しゴムで字を消す。
結局、僕らが作ったものじゃなくて、生活に近いものが「いい」でしょ?

Ⅳ.物語
 自分で見つけた解を愛しているか?

ここまでを振り返ると
写真でみんなの中の作家性・クリエイティブをくすぐり、
演出したボルトとナットで自分の「いい」を疑わせ、
生活の品で、感覚をリセットする。
さぁ、最後はみんな自分自身の中の「いい」を見つけよう。

モルタルで作られた大きさや表面の仕上げが様々な立方体の集合。
どこから見ても表情が変わる展示だ。
これを観察し、誰でもない自分が「いい」と思える場所を探す行為。
もしかしたら、ここには「いい」が無いかもしれない。
そしたら君が作ればいい。
僕は見つけたよ。この面が好きだな。

03.おわりに

ここまで書いておいてなんだけど、僕は文章を書くのが酷く苦手。
きっと、読みづらい文章だったと思う。申し訳ない。
ここまで読んでくれて本当にありがとうございました。
そして、当日展示に足を運んでくれた方も本当にありがとうございます。
何者でもない僕らの問いに付き合ってくれたこと、本当に感謝しています。

こうして、文章を書いていると、どんどんとやってみたいことが降ってくる。たまには振り返ることも悪くない。
また、メンバーのHiraとAkutaもこの展示ついてまとめてくれている。
一緒に製作していても、違った目線で面白い。ぜひ読んでみて。(彼らは展示の後すぐに書いてるね。尊敬だ。)

今後も徒小僧のメンバーで、色々表現できたらと思う。


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