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カフェを始めて1ヶ月経って思うこと

ネビラキカフェが7月15日にスタートしてから約1ヶ月。想定通りのことや思いがけないこと、カフェという「場」が持つ力のようなまたは萌芽のようなモノコトについて感じたことをまとめてみる。

なぜカフェだったのか

なぜカフェだったのかについては前回のnoteにもまとめましたがオープン前の記事では言語化ができてなかったことがやり始めると見えてくるものです。

そもそも自分は半年前までコーヒーも淹れたことがなかったし、どういうカフェだったら居心地がいいのかなんてさっぱりわかりませんでした。

自分たちがこだわったのは、まず自分たちが直感で本当にいいと思えることを積み重ねていくこと、大切にしたいことを前面に出すこと。

自分たちが本当に美しいと思えるこの景色を多くの方に共有して、自分たちが、そして地元の方達が自分たちの土地に愛着を持てるように。

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自分たちがカフェをやり始めるという前から「カフェでは食えん」というのが地元の方達の見方で、自分たちも何度もそのプレッシャーに心が挫けそうになりました。

「オープン(開放的)にしていると(地元の)人は行かん」

「ランチをやればそこそこやっていける」

「夜お酒を出してカラオケがあったら行く」

どうやら地元の方は目的が無く昼間からお店でコーヒーを飲むことは暇をしているように見られるようで田舎のカフェは流行らん、というのが見立てだったようです。

お昼を食べる、夜お酒を飲みに行くといった明確な目的があれば出られるのに昼間にコーヒーを飲むというのは目的がないことだから自分は行かないよ、だから他の地元の人も多分行かないよということのようです。

だからこそ自分たちはカフェをやりたかった。カフェこそ目的が無くても行ける場所だし、自由な時間の過ごし方ができる。本を読んでも景色を眺めてボーッとしてもいい。そんな場所が西和賀に無かったからそういう文化を創りたかった。

妻が西和賀に来てから「この場所にいたら仕事をする気が失せる」とよく言っていたのを思い出します。確かにこの景色を見てたら小さな悩みなんてどこかに吹っ飛びそう。

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カフェが休みの日はテラスでゆったりとした朝食をとる。目まぐるしく変化する錦秋湖の美しさで豊かな気持ちになれる。

町外8:地元2

オープンしてから驚いたことの一つに、西和賀でもカフェの需要があるということです。割合は上記の通りですが(実際は9:1に近いかも)、西和賀に来ている人の多さと場所さえあれば人はそこそこ来るというちょっとした気づきが得られました。

「温泉旅館に宿泊した後の帰り道に寄りました」
「ドライブに来たついでに看板が見えたので寄ってみました」
「インスタでデッキの写真を見て来ました」

ある土曜日のオープン10分前の駐車場がすでに満車だった時はこっちが驚きバタバタしたこともありました。

夫婦二人、知り合いはそこそこ多い方だと思うので、オープンしてから1ヶ月くらいは我々の知人友人が中心になると思っていましたが、全然そんなこともなく、お店に来る方の9割以上は「初めまして」の方がほとんどです。

そしてありがたいことにどの方も満足した過ごし方をされているようで、1時間〜2時間の滞在も普通にしていきます。

年齢層的には20代〜30代の女性が多いイメージ。インスタにもバンバン載せていってくれてるからありがたい。

「ランチ始めたら行くよ」

また少し話が戻りますが、地元の方からよく言われることの一つです。

でも我々がランチを前面に出さず今もやっていない理由があります。

それはランチというのは消費行動の最たる例だと思うからです。

自分たちは地元の人が地元のよさに気づけるようにカフェをやり始めた訳で、ランチタイムという短い時間でお客さんがいそいそと、我々もあせくせと動いていては自分たちが本当に伝えたいことは伝わらず、お客さんはランチを受け取るだけ、我々はお金を受け取るだけの関係性になってしまうと思います。

また、コロナ渦ということもあり、地元の飲食店を利用したら補助します的な券も発行されていて、「券があるから行きます」的なこともありがたいのですが、その順番が「券を使わなきゃ損だから行く」といった風に逆になってしまうとどうしてもお客さんは与えられるだけの存在になってしまうようで(そんなこともないかもしれませんが)、出来るだけ出来るだけお客さんの消費者マインドを刺激せず生み出すマインドを刺激したいと考えています。

生み出すマインドを刺激するとは結構難しいことです。作り込むとやらせっぽくなるし、かといってそんなに頻繁に起こる訳でもありません。自然に起こるような地道な場づくりがこれからの課題です。
消費者マインドは行きすぎると「自分は何を与えてもらえるか」という考え方になり(だから地元の方から「ランチが始まったら行くよ」「メニューは?」という話題が多くなるのではないか?これは多額の交付金をもらって暮らしている地方の受益者心理が大いに前面に出てきてしまっていると思う)、自分は何ができるかすら考えなくなると思います。自分の頭で考えなくなったら衰退。これは普遍的な原理だと思うし、でも世の中はどんどんそういう考えない方向に向かっている。だからこそ自分たちはそこに抗いたい。豊かさ=×消費→豊かさ=○手足を動かす価値へシフト。

ランチといえば西和賀には美味しい蕎麦屋さんもいくつもありますので、そちらをご利用していただき、食べ終わったらカフェのテラスでゆっくりお過ごしください。

とはいえ、ランチを本当にやりたくない訳でもなく、徐々にやっていきたいとは常々考えています。カフェが想像以上に忙しくそこまで手が回っていないというのが半分本音でもあります。

でも地元で食べる場所が少ないから地元の方の気持ちもわかります。いずれやる予定なので地元のみなさま、もう少しお待ちを!(誰かご飯屋をカフェの近くでやれば流行ると思う)。

カフェで実際に起きていること・起きたらいいと思うこと

東京の西国分寺でクルミドコーヒーというカフェを営んでいる影山知明さんが書いた『続・ゆっくり、いそげ』では場が力をもつための五つの条件を挙げています。

一つ)目的がなくともふらっといける場であること

二つ)多様な人が参加できる場であること

三つ)“主”の存在

四つ)主客同一の要素があること

五つ)楽しく、遊びの要素があること

上のリンクは『ゆっくり、いそげ』。『続』は査読版しかまだ出ていないため多分クルミドコーヒーにいかなければ買えません。どちらの本も我々のカフェで大切にしたいことが全部含まれていてバイブル的存在。カフェに2冊ともありますので、気になる方は読みにいらしてください。

ネビラキカフェはどうでしょうか。上記のことを意図した訳でもなかったのですが、体感的に実現できている気がします。

ある日のこと。地元の高校を卒業して近くの農業大学校に行っている若人がカフェにふらっときてくれました。彼に会うのは1年ぶり。彼は彼なりに町に対してや自分の生き方に対して色々思うことがあり、色んな話で盛り上がりました。平日だったので、お客さんもあまりいません。話している途中、私がアルバイトをしている町内の宿で働く同僚の方が立ち寄ってくれました。その方の本業は農業ですが、たまにシフトで宿の仕事もしています。私がその方のことを若人に紹介すると、自分の趣味(特技?)のキノコの話で盛り上がり、そこから1時間以上話し込んで二人はカフェを出ていきました。若人は若人で自分が採ったキノコを宿で買い取ってもらえるか、同僚の方は同僚の方で、こういうキノコがあればいいんじゃない?とアドバイスを送ります。話は広がりまちづくりの話まで広がっていたようでした。

多分普通に暮らしていたらなかなか出会うことのない二人がマッチングしたいい例だと思ってます。これが行政主導で作った建造物でこういうことは起こりにくいのではないかと感じます。行政主導で作った建物はどうしても想定顧客設定が曖昧になりがちだし、何より税金を投入して作った建物は関係が不特定多数になってしまい、人の温もりが感じにくい。

それに、レストランのようにランチを食べに行くという明確な目的があって行く場所の場合、用を済ませば次に気持ちは移ってしまいます。カフェという自由な過ごし方が許される場所だからこそ偶然の出会いや豊かな時間は過ごせるのだと思います。

また、ある別な日、一人でいらしたお客さんがテラスでゆったりと過ごしていたら、隣に若いカップルが座ってきて、そこから見える景色をとても褒めていたそうで、思わず話しかけたくなったそうです。実際には話しかけなかったそうですが、地元の方がなんとなくボーッとしてて、他所の人が「西和賀にこんなところがあったんだ!」と感動していたら自慢したくなる気持ちがよくわかります。話しかけていたらもしかしたら面白い展開になっていたかもしれません。そういう偶然の出会いが少ない西和賀で偶然の出会いをぜひ地元の方には楽しんでいただきたいと思っています。

カフェを開いて1週間目に地元の中高生が来てくれたのには驚いた。一番変化を敏感に感じ取ってくれているのだろう。自分も含めて町の人が耳を傾けなければ行けないのは多感な時期にいる若い人の感性だと思う。一方「早くカフェ開けて、いつ開くの?」とばかり言っていた近所のおじさん・おばさん達はいまだにカフェに来ない。カフェでは人の動きや心の動きが見えるので面白い。

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地元の方にはぜひ土日の昼下がりかお昼前に来ていただく事をお勧めします。西和賀でなかなか出会うことのない層の方達が訪れていて見ているのが楽しいと思います。思い切って交流もありかと。

カフェもまだまだ発展途上。感じたこと、実際に起こっていることはきちんとメモをとりノートでも定期的に発信していきます。

zen

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