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ワインブックレビュー 『ブドウ品種総図鑑』 GRAPE VARIETY BOOK

植原 宜紘 編著
創森社
2018/06 285p 3080円(税込)

ワインブックレビューですが、今回はワインの本じゃなく、ブドウの本です。
世界ではワイン用ブドウ品種と食用ブドウ品種とにハッキリと分かれている事が多いが、日本のワインは、ワイン用ブドウ品種と食用ブドウ品種分かれていないか、曖昧であった。
日本の固有品種の代表である。甲州やマスカットべリーAなどでも醸造用と食用の両方で栽培されてきた。
食用には種無しにするために、ジベルリン処理(ジベルリンは植物ホルモンの一種で、果実を無核果できる。一般的に種無しブドウが普及したのは1960年頃)されるが、醸造用には種があった方が良いなんていう違いがあるものの、昔はその区別もなく栽培していたようだ。昔は食用では売れないようなブドウをワインにしていた時期もあったようである。
食用品種のキャンベルアーリーやコンコード、デラウェアやナイヤガラなど生産量の多い品種で、ワインがつくられてきたが、最近ではその他の食用ブドウ品種でつくられた日本ワインも多くなっている。
スチューベンや旅路、サニールージュ、ロザリオビアンコなど全国的に有名な品種ではなく、どちらかと言うと地方に付いたマイナーな品種でもワインが、つくられるようになっている。
ワインにすると個性が出る品種もあり、特徴を生かしたワインが楽しめるようになって来ている。これは日本だけであろう。
だって他の国では、法律やいろんな制約があり出来ないからなぁ。

バラエティにとんだ日本ワイン

日本ワインは世界でもっとも多くのブドウ品種でつくられるワインではなかろうか。
伝統的な産地や新興産地でも、その土地にあったブドウ品種を植えワインをつくってきた。
しかし、日本はブドウ栽培にとっては向いていない気候や土地だったせいで、各地で色々なブドウ品種を植え、試行錯誤をしなければいけなかった。なので、世界でもっとも多くの品種でワインをつくるようになったのだろう。
ワイン用ブドウ品種だけではなく、食用ブドウ品種、山ブドウ系品種でつくられた日本ワインなど多種多様である。
そのいろんなブドウは、どんなものなのかを調べるにあたって、この図鑑はとても便利である。
ワインの本ならばワイン用ブドウ品種だけしか紹介されていないし、日本における栽培状況などのデータも無かったりする。
食用ブドウ品種をネットで調べると、「食べ方」「選び方」「保存方法」「旬の時期」とかワインには関係ない情報ばかりが出て来たりする。
キチンとした、ぶどうの品種特性が知りたい人にオススメしたい図鑑です。
品種特性はもちろん、系統、作出、交配親、倍数性、熟期、収量、果皮色、果粒形、果粒重、肉質、糖度、樹勢といった細かなデータも載っていて、とても参考になります。
「ブドウ属の発生と来歴」「ブドウの分類・種類と品種」「主要ブドウ品種の推移と系統図」「ブドウの育種と新品種」「台木の重要性と台木品種の特徴」「生育サイクルと管理・作業暦」「苗木の植え付けと管理」「ブドウの棚仕立てと垣根仕立て」「ブドウの病害虫の症状・対策」「ブドウの生理障害」「ブドウの気象災害」「植物生長調整剤による種なし化」「品種改良とブドウ産業振興」「ブドウ・ワイン関連用語解説」など内容も充実してます。
ワインだけでなく、ブドウにも詳しい方が飲む楽しみも増えます。
読んでるだけでも面白いしね。


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