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同期して走ること

「自分のリズムで走る」というのはポジティブなイメージがあります。ペースメーカーがいても、いなくてもフルマラソンの序盤は集団で動いていきます。集団から少し離れた場所にポジションをとりペースの上げ下げには極力付き合わずに目標のタイムと順位をきっちりゲットする。周りに左右されずに自分のペースをつらぬいて我が道を行く。唯我独尊、マラソンでの大迫傑選手ような走りです。

一般的にはペースメーカーの集団の流れにのっていったほうがタイムは出ると言われてます。とはいえ、ベルリン・マラソンのような高速レースではペースメーカーもいるはずなのに、日本人選手たちは思ったほど記録は伸びません。これはどういうことなんだろう?とずっと考えていたのですが、東京オリンピック、シカゴマラソンと続けて大迫選手のマラソンを間近でみて気づいたことがあります。「これは集団と大迫選手とのリズムが合わないんだな」ということです。

決して集団のなかには入らない

集団は一糸乱れるピッチとストライド、なんだったら、左右まであわせてくるのですが、一歩のストライドの幅が日本人であるがゆえに、どうしても短くなる。同じピッチでそこに居続けようとするとストライドを伸ばさざるを得ない。序盤は合わせることができたとしても、無理をした分だけ脚が削られていく。それを嫌って、彼は自分のストライドとリズムで集団そのものをぼんやりと視野にいれるようなイメージで自分を自動運転化しながら走ってるのではないか?そのように見えました。高速コースであるベルリン・マラソンよりも東京マラソンのほうが(日本人選手の)記録が出るのは集団がリズムが近い大勢の日本人によって形成されるからではないか。つまり設定タイムよりもリズムの方が本当は大事なんじゃないかと。

シカゴマラソンのペースメーカーでもあえて集団から外れる

そういう見方をするようになったきっかけはOTT(オトナのタイムトライアル)で、たくさんのレースを作っているうちに、最後までうまく走れている人とそうでない人の違いと、これが似てるなあと思ったのです。うまく走れている人はペースメーカーのピッチとストライドとシンクロして走った人。一方で終盤に落ち込んでいる人は自分のピッチとストライドで走った人に多い傾向があるのです。前者は集団の中で楽にスピードを出しながら流れていくように終盤までたどり着けるのですが。後者は設定タイム通りに走れているはずなのに、独り相撲で戦ってるようなのです。それで終盤まで力を使いきってしまい、ラストスパートまでたどり着けずに失速するのです。

先日、日体大で開催したスーパーOTTでは新谷仁美選手が15分50秒(1キロ3分10秒ペース)で5000m×3本を立て続けに走るポイント練習を公開しました。当日の新谷選手の体調がそれほど思わしくないということ、そしてPM役のTWOLAPS新田コーチも脚に不安があるということもあって、3本目は横田コーチからペースメーカーを増やしてほしいというリクエストがありました。急遽アサインをされたのは3名のペースメーカー。新谷選手の前、横、後にポジションし集団を作ったのです。このシンクロ具合がやばかった。この動画は序盤のものですが、終盤はピッチと左右までがぴったり同期しはじめるのです。

このポイント練習について新谷選手はこういうコメントを残してます。

設定タイム通りに走りながら(その技術があるPMがすごいのですが)4名がそれぞれのポジションで新谷選手に同期することで練習が完遂できたのです。このときはコンダクターが新谷選手。そこにPMが演奏者といった役割でしょうか。キプチョゲが走るマラソンでもそういうところがあります。ペースメーカーがひっぱってるようにみえて、すべてはキプチョゲのリズムで集団はオーガナイズされているという感じ。

2023年1月9日に世田谷大蔵運動公園で年明け一発目のOTTを開催します。年明け一発目なので、ちょっとふざけて「ニューイヤーOTT」となづけてますが、今回、この新谷選手のポイント練習をエントリーメニューに加えてみることにしました。

1レース3000円ですが、3本走ると6000円と安くなります。だから「おか割(おかわり)」


なぜなら、この5000m×3というポイント練習は新谷選手が1月上旬に走るヒューストンマラソンでの日本記録更新チャレンジに向けたもの。この練習は市民ランナーにとってもとても有効だと考えたからです。メニューはサブ4、サブ3という2つの設定タイムを設けました。サブ4が1km5分30秒。サブ3が1km4分10秒。これをペースメーカーのリズムにのって、新谷選手のポイント練習のように「同期」することで、果たして楽に走れるのだろうか?そういう試みです。

メニューを組んだ横田コーチは「シューズが進化したことによって、従来のような
走りこみを重視したマラソントレーニングではなく、トラックのスピードをそのままロードに持ち込むようなイメージ」と説明してくれました。目的は長い距離を長い時間をかけて走りこむのではなく、レースペースのいい動きといいリズムを身体にいれること。そこを重要視したというのです。

こういう試みができるのも、OTTには正確無比なタイムを刻めるペースメーカーがいるからこそ。来年の春先までにフルマラソンを走る予定がある市民ランナー。とりわけ、サブ4、サブ3を目指すランナーはこの「おか割サブ4・サブ3」にエントリーしてみてください。そしてランナーとして走るときはいつもの自分を捨てて、集団のピッチとリズムにあわせてみる。そうすることで、目標のペースを楽に走るためのピッチやストライドが身体に入ってくると思うのです。

エントリーはこちらから。

あっ。もちろん1500m、5000m、それぞれのエントリーも大歓迎です。ペースメーカーと同期することを意識しながら走ってみると、ラストスパートまで力が残っているはず。年明けそうそう自己ベストを狙ってみませんか?

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