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マッチングアプリで損した話①切り替えの早さは長所

中学生の頃。そう、男女が「付き合う」という文化が生まれ始めた中学生の頃。1ヶ月で別れるカップルは珍しくなくて、むしろ半年も続けば「長い!」と言われ周りから羨望される有様だった。

にも関わらず破局した人への時間感覚は厳しく、1ヶ月で新しい彼氏ができた春菜ちゃんは「切り替え早すぎ!」「そんなすぐに人を好きになることってある?」とひどい言われようであった。
そしてお恥ずかしいことに、私もそう思っていた一人だった。

あれから10年余りが経ち、春菜ちゃんの切り替えの早さを胸中でなじっていた私は、破局の1分後にマッチングアプリを再インストールしていた。

(前恋人との破局までの物語はこちらから)

あの頃と違って、アラサーになった私たちには時間がない。歳をとると筋肉痛が遅れてくるように、失恋の悲しみも時間差でやってくることはこれまでの経験で学んだ。だからこそ、悲しみがやってくる前に走り出すのだ。マラソンと同じで、恋愛でも中途半端に立ち止まるともうそこから動けなくなってしまうのだから。

足取りならぬ、指先は軽かった。
次々と項目を埋めプロフィールを完成させる。

プロフィールが完成するなり、続々といいねが届き始めた。その様子にどこかほっとする自分がいる。そして丸一日経った段階で、前回よりいいねが少ないなと悲しい気持ちになった。
しかしまぁ、それもおかしな話である。

恋活というのは最終的にたった一人の相手と結ばれればそれでいいはずで、それにはいいねの「数」は関係ないのに、いつの間にかいいねの「数」に安堵したり焦燥したり、はたまた相手の価値もいいねの「数」で推し測るようになる。

稀に、マッチングアプリ内でモテることに傾倒してしまう男性や、いいねの数で承認欲求を満たす女性がいると聞く。彼らは皆、マッチングアプリの罠に嵌ってしまったのだろう。私自身も、彼らのことは馬鹿にできない。そのくらいこのシステムには感情が揺さぶられるものがあった。

話を戻そう。

20人程度とマッチングし、やりとりを始める。とはいえ、その内の2〜3人ほどはチャットすら届かない謎のマッチング。4〜5人は一通目・二通目のチャットの内容があまりにも気持ち悪くて合わなくて終了。
まともにやりとりをするのは10人前後で、そこからだんだんフェードアウトする人も出てくるため、実際に同時並行するのは5〜8人だろうか。そのくらいであれば、なんとかやれる範囲だ。

私と同じく花が好きだというAさんとはお花が綺麗な公園の話を重ね、テニスが趣味のBさんは実は読書家でもあったようで、意外にも本の話で盛り上がった。Cさんは物腰柔らかく、Vtuberの話をしたりしたが、会話が受け身気味なのが気になってこちらが話題を振るのをやめたら案の定返信がこなくなった。

少し経ってAさんからデートのお誘いを受けた。悪い人ではないし、会ってみないと始まらないとは思っているがどうにもその気になれなかった。
正直、外見も少なからず影響があったと思う。彼は人の良さそうな笑顔が素敵だったが私の好みには触れなかった。

反対にBさんには日に日に興味が湧いてきて、彼のユーモアのある返信が届くのが楽しみになっていた。
しかし、ある日からぱたりと返信が途絶えた。もういい人がいたのか、私が「ナシ」と判定されたのかは分からないが、彼から返信が来ることは遂になかった。

そうしてるうちに年が明けた。
正月は実家に帰ってゆっくり過ごし、その後の余暇で「今回はうまくいく気がしないな」とむなしくなったりした。

そんなある日。一つの通知が届いた。

チキン南蛮さんからいいねが届きました

ここから、また私の爆速恋愛がはじまった。



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