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マッチングアプリで損した話③本能だから、学ばない


前回のお話はこちら↓

チキン南蛮もとい、ちあきさんからのお誘いを受け、私は悩んでいた。

まだ少ししか会話をしていない状態で会ってもいいのだろうか。もし、彼が危ない人だったら。もし、壊滅的に話が弾まなかったら。
そもそもこんなに早々とデートに誘ってくるのはどういう心理なんだろう?スペック的には引っかかる事の多い人だし…。

次々と思い浮かぶのはネガティブなものばかり。つまり、(少なくとも今は)会わない方がいいとすぐに結論づけられるはずだった。それなのに私が「悩む」のは、彼に会ってみたいという想いが生まれているからだ。

でも…

頭に浮かぶのは前恋人との記憶だ。
彼とはあれよあれよという間に関係を縮めて交際に至った。そして、あっという間に破局した。
ちあきさんが迫ってくるこのスピード感は、まさしくこの時と同じだ。

また同じ事を繰り返すの?
次はもっと慎重に、時間をかけて恋愛するって決めたじゃん。

頭の中で理性を持った自分がそう叫んでいる。
過去の恋愛から学ぶべきか、それとも理性が効かないのが本物の恋愛なのか。

返信を打つ指はすっかり動かなくなり、結論は翌朝に持ち越された。

一晩寝て、冴えたはずの思考を巡らせながら、私が出した結論を液晶に打ち込む。

お出かけしたいです!

人は学ぶ生き物だと信じてる。
だが、すぐに変われるほど柔軟な生き物ではないのだ。

***

ちあきさんはすぐに都合の良い日程を提示してくれて、場所についても私の行きやすい範囲で考えてくれた。

決まった日程は10日後。それまでの間に私たちは沢山チャットを交わした。連絡手段はアプリ内のチャットからLINEに変わり、彼からの提案で敬語をやめ、えくぼちゃん、ちあき君と呼び合うようになった。

話してると癒される。

えくぼちゃんからのメッセージいつも丁寧で感動してる!ほんといい子!

ちあき君から浴びせられる数々の褒め言葉に、免疫のない私は完全ノックアウトだった。
彼は度々私の文章が丁寧だと言って感激するから、他の女性はどれほど辛辣なのだろうと私は苦笑したりもした。

そしてやり取りをしていくうちに、私の気持ちを大きく揺さぶった出来事が2つあった。

まずはちあき君がかつて一人暮らしをしていたと知ったこと。てっきりずっと実家暮らしだと思っていたが、学生時代は一人暮らしをしていて、家事もそこそこ経験したらしい。経験があるなら大丈夫。
私はこの点をかなり気にしていたから、彼への不安要素が大きく減り、ニュートラルに彼を見れるようになった気がする。

もう一つは「爆速既読事件」だ。
ちあき君から数時間前に来ていたメッセージに返信を返した時、すぐに既読がついた。ちあき君がちょうどトーク画面を見ていたのだろう。それをちあき君はとても恥じたようで、照れているスタンプと「爆速で既読つけちゃった」とメッセージが来た。

ところが、その直後になぜか既読がつかなくなった。
気付いているのは明白なので私は彼に問いかける。

爆速で既読つけてくれないの?

つける!!!

ちあき君はいつも返信を待ち侘びていること、トーク画面を度々見返していること、すぐに既読をつけたいけど我慢していること(既読をつけない方法でメッセージを読んでいること)を告白して、恥ずかしそうにした。
その様子が健気で可愛くて、私はすっかり心を掴まれてしまったのだ。

その後もちあき君から直球の愛情をぶつけられ続け、すっかりほだされた状態で遂に初デートの日を迎えた。


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