メガネ朝帰り 【 #毎週ショートショートnote 初参加】
直久と私はいつも一緒だった。気弱でマイペースな直久は、私がいないとダメな男だった。
なのに今朝、直久は私を置いて出ていった。
「今日から私が直久のことを支えます。今までお疲れ様でした、メガネさん。」
そう私を嘲笑ったあいつはコンタクトレンズと言うらしい。直久は私を裏切ったのだ。
一人枕元に取り残された私はフレームが煮え繰り返る思いだった。居ても立ってもいられず寝室の窓から逃走。ベランダの隅で泣くしか出来なかった。
夜になって直久が帰ってきた。帰ってくるなりあたふたと家中を歩き回り、ようやくソファーに座ったかと思いきや、電話をかけ始める。
「もしもし?俺、昨日そっちにメガネ忘れてないかな。…そうだよね、ないよね。いや、今日はコンタクト付けてたから朝から見てなくて…ん?いや、今日だけだよ。やっぱメガネじゃないとダメだわ!」
よく見ると直久の瞳は赤く充血している。
ふん、よそ見した罰だ。今日は一日苦しめばいい。
全く私がいないとダメなんだから。明日の朝には帰ってやるとするか!
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