ソーラーパンク・マニフェスト:日本語ver.1.0

ソーラーパンクというジャンルがある。あるいはソーラーパンクというジャンルが作られようとしている。サイバーパンク・ムーブメントから派生した数ある“~パンク”サブジャンルの一つであるが、再生可能エネルギーに重点をおいた環境志向の、維持可能な社会を希求するものである。英語版Wikipediaによると、ソーラーパンクという言葉が生まれたのは2008年で、2010年代に様々な形で作品が生み出され、2019年にはソーラーパンクというジャンルを確立すべくソーラーパンク・マニフェストが発表されることとなったようだ。
以下の文章はこのソーラーパンク・マニフェストの日本語訳である。私は専門的な訓練を受けた翻訳家でもなく、文筆家ですらないので、至らぬ点が多々あるとは思うが、気付いた点があれば是非ご指摘いただきたい。ある程度満足いく形になったら本家サイトにコンタクトして日本語版として提供できればと考えている。
なお、私個人はこのソーラーパンク・マニフェストについて積極的に賛同するものでも応援するものでもない。スペキュレイティブ・フィクション全般の一愛好家として、こうしたジャンル・動きがどのように生まれこれからどのように発展していくのかに興味を持って見守っているものである。

ソーラーパンク・マニフェスト

ソーラーパンクは「持続可能な文明とはどんなものか?どうすれば実現できるのか?」という問いに答え、具現化しようとする、スペキュレイティブ・フィクション、アート、ファッション、行動主義におけるムーブメントです。
ソーラーパンクの美学は、実用性と美、デザイン性と茂る緑、明るく色鮮やかなものと大地を融合させます。
ソーラーパンクはユートピア的であったり単純に楽観的であったり、あるいはより良い世界を目指す中での闘争に関わるものであっても構いませんが、決してディストピア的なものではありません。世界が厄災に襲われている中で、私たちには警告ではなく解決策が必要なのです。
化石燃料に頼らず生きていくための、偽りの欠乏と偽りの豊かさではなく真の欠乏に対峙し持てるものを分け合うための、この星とそこに住む人々に優しくあるための解決策が。
ソーラーパンクは、未来へのビジョンであり、思慮深い檄であり、生き方であり、そしてそこへ至るための実現可能な提案なのです。

  1. 失われた楽観主義を取り戻そうとするものがソーラーパンクである。

  2. 否定と絶望を拒否するものがソーラーパンクである。

  3. 人類の至ることができる最善の未来へのビジョンがソーラーパンクの本質である。ポスト貧困・ポスト階級・ポスト資本主義の、自然と石油資源に代わるクリーンエネルギーと一体となった人類の世界へのビジョンが。

  4. ソーラーパンクの“パンク”は、反抗・カウンターカルチャー・ポスト資本主義・脱植民地主義・熱狂のことである。ますます恐ろしい方向へと進む主流と異なる道を選ぶということなのだ。

  5. ソーラーパンクはジャンルであると同様にムーブメントでもある。ソーラーパンクは物語だけではなく、我々がそこへ至るための道筋でもあるのだ。

  6. ソーラーパンクは多様な方法を内包している。ソーラーパンクにたったひとつの冴えたやりかたはない。むしろ、世界中の多様なコミュニティがソーラーパンクの名前とアイデアの元で、自立した小さな巣を作るのだ。

  7. ソーラーパンクは実現可能な未来の形を描くために重要な、新たな視点、パラダイム、ボキャブラリーを提供する。ソーラーパンクは、レトロフューチャリズムではなく、完全に未来を見据えるものである。異なる未来ではなく、可能な未来を描くのだ。

  8. ソーラーパンクの未来像は、サイバーパンクのようなニヒリズムではなく、スチームパンクのような準保守的な傾向でもない。ソーラーパンクは創意工夫と世代性、独立とコミュニティのことなのだ。

  9. ソーラーパンクは環境の持続性と社会正義を重視する。

  10. ソーラーパンクは今を生きる我々の生活がより素晴らしくなる道を探すことであり、次に続く世代の生活をより素晴らしくする道を探すことなのだ。

  11. 我々の未来は、今あるものを再利用し今あるものから新しいものを生み出していかなくてはならない。スマート市民のために“スマートシティ”が放棄さられることを想像せよ。

  12. ソーラーパンクは、政治とサイエンスフィクションが相互に与えた歴史的影響を意識する。

  13. ソーラーパンクは、サイエンスフィクションがただのエンターテイメントではなくアクティビズムの一つの形であることを意識する。

  14. ソーラーパンクは、死にゆく地球・超えられない貧富の差・企業に支配された社会といったシナリオに対抗する。数百年後にではなく、手の届く範囲の時代において。

  15. ソーラーパンクは、若者が自らの手で作り出す文化であり、地域レベルの解決策であり、小規模エネルギー網であり、自律的に機能するシステムを作る方法である。つまり世界を愛するということである。

  16. ソーラーパンク文化は、あらゆる文化、宗教、能力、セックス、ジェンダー、性的自認を含む。

  17. ソーラーパンクは、人類が単なる寛容以上の、より大きな慈愛と受容を可能とする社会進化を成し遂げるという概念のことである。

  18. ソーラーパンクの視覚的表象に制限はなく進化している。現状は以下の混ぜ合わせである。

    1. 18世紀の帆船時代・開拓時代(に自転車を加えて)

    2. 既存のインフラの創造的再利用(ポストアポカリプス設定でも、現代風設定でも)

    3. 適切な技術

    4. アール・ヌーヴォー

    5. 宮崎駿

    6. 非西洋世界のジュガール的発明

    7. シンプルで洗練されたアウトプットを持つハイテク

  19. ソーラーパンクは新都市主義や新歩行者主義の原則と環境の維持可能性に沿って作られた未来である。

  20. ソーラーパンクは、様々な技術を使って、特に太陽光エネルギーに適応して築かれた環境を想像するものである。ソーラーパンクの目的は自給自足と自然の制限の中での生活を促進することである。

  21. ソーラーパンクでは、この星の緩やかな破壊を止めるべく人類はなんとか引き返している。この星の一部としてのより良い生活のため、科学を賢く使うことを学んでいるのだ。我々はもはや支配者ではなく、管理人であり庭師なのだ。

  22. ソーラーパンクとは

    1. 多様で

    2. スピリチュアリティと科学が共存することができ

    3. 美しく

    4. 起こりうるものである。今すぐにでも。

The Solarpunk Community

上記の「ソーラーパンク・マニフェスト」は http://www.re-des.org/a-solarpunk-manifesto/ における英語の"A Solarpunk Manifesto"の日本語訳である。

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