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コミュニティ会員の声って信用していいの?好意的なバイアスの考え方


コミュニティ会員の声はバイアスのかたまり?

こんにちは。イーライフのアドバイザー水野です。
「Q&Aコーナー」第4回目のテーマは、「コミュニティ会員の声って信用していいの?好意的なバイアスの考え方」です。コミュニティを運営していく中で浮かび上がるこの疑問を、私の経験談を交えながら解き明かします。

“バイアス”を直訳すると、「偏り」「先入観」「思い込み」といった意味になります。企業が運営するコミュニティの場合、どうしても「よい意見」「高評価」に偏りがちです。そりゃそうですよね。その企業の商品やサービスに愛着を持った人達が集まっているわけですから、発言の内容もよい方向に偏るのは当然といえます。

したがって、「コミュニティ会員の声って、バイアスがかかっているのでは?」と問われたら、私の答えは「Yes」です。

コミュニティ会員の声は使えないのか?

企業が運営するコミュニティでは、商品モニターやアンケートなどが頻繁に行われると思います。そこで得られた定量データやフリーアンサーは信用してはいけないのでしょうか?

いえ、そんなことはありません。
その企業や企業の商品・サービスが好きで集まっている会員は、市場調査会社に依頼する一般のアンケートモニターと比べて、アンケートへの回答やコメントへのモチベーションが格段に高いのです。「よいものはよい」「悪いものは悪い」と率直に評価してくれますし、その理由についても詳細に記述してくれます。詳細な理由のコメントのなかには、「総論として好意的だが、ここは見直したほうがよい」といった有益なアイディアも含まれるでしょう。

一方、関係が希薄な一般のアンケートモニターでは、こうはいかないはずです。フリーアンサーの設問は(必須入力を義務付けたとしても)、「特になし」という回答が大半になってしまうと思います。

そうしたことを踏まえると、好意的な意見が多くても「しっかりと書いてくれる」コミュニティ会員のアンケートのほうが、価値が高いといえるかもしれません。

効果的に声を集める秘訣は

では、バイアスがかかっている前提で、どのようにしてコミュニティ会員の声を引き出したらよいのでしょうか?その答えは「設問の工夫」にあると思います。

商品の評価に関するアンケートを例にしてみますね。
通常は「とてもよい」「ややよい」「どちらでもない」「やや悪い」「とても悪い」の5段階くらいで聴取するケースが多いと思いますが、その場合、「とてもよい」「ややよい」に回答が集中してしまいます。そこで、選択肢を7段階に増やしてみるのです。「とてもよい」と「ややよい」の間に「よい」を加えて「よい」グループを3段階にすることで、「ややよい」は中立(またはネガ)と捉えることができるでしょう。 

設問の設計を、「改善点募集型」にするのも有効な手段です。しかし、単純に「改善点をあげてください」と問いかけても、バイアスのかかったコミュニティ会員は「見当たりません」といった感想で終わってしまいます。そこで、ストレートな聞き方ではなく、イメージしやすい状況や比喩的な表現を用いながら問いかけてみるのです。例えば、ペットボトルのキャップが堅くて開けづらいような状況に対し、「お子様でも開けやすいか」や「○○と比べて堅いか」など、比較対象を具体的に提示してあげるのもひとつの方法だと思います。

また、理由を問う設問や、フリーアンサーで深掘りするのも有効です。大切なのは、これらの深掘り設問の回答をしっかりと読み解くことではないでしょうか。前述したように、一見好意的な意見の記述のウラに、思わぬ改善のヒントが隠されているかもしれません。

コミュニティ会員と他の会員グループとの違いを比べるのも有効

コミュニティ会員のバイアスを見極めるには、「他の会員グループと比較する」という方法もあります。私が過去に運営に携わっていたカゴメ株式会社のコミュニティサイト「&KAGOME(アンドカゴメ)」では、NPS®調査を複数の会員組織(通販会員、キャンペーン応募会員、株主会員など)に対して同時に行い、その結果を比較していました。NPS®スコアだけを見れば、&KAGOME会員のスコアは高く出るわけですが、NPS®スコアの設問に付随して、「どこがよいのか」「どんなきっかけでそう思うようになったのか」といった理由を補強していくと、グループごとの傾向が明らかになり、コミュニティ会員のバイアスの度合がどの程度かを判断するのに役立ちます。

NPS®調査については、過去のコラムでご紹介していますので、詳しくはこちらをご覧ください。

「知りたいこと」をコミュニティ会員に聞ける信頼関係が重要

コミュニティ会員の熱量の高い意見は、バイアスがかかっていたとしても、貴重な情報源となります。いざ知りたいことが生まれたとき、即座に教えてもらえる信頼関係を築いておくのが重要です。そのためには、コミュニティ会員が継続して訪問してくれているか?楽しんでくれているか?に常にアンテナを張り、会員を飽きさせないような企画やコンテンツを提供し続けることがポイントです。運営には手間がかかりますが、そのぶん、得られるものも大きいのです。ぜひ、日々の信頼関係づくりに努めてくださいね。

「企業コミュニティQ&A」第4回まとめ

企業が運営するコミュニティには、その企業の商品・サービスに愛着のある人達が集まるため、好意的なバイアスがかかりやすくなります。バイアスを希釈して正しい意見としてアンケートやコメントを収集するには、「聞き方」のテクニックが求められます。しかし、バイアスがかかっていても、コミュニティから得られる声は代えがたい情報源です。コミュニティ会員との信頼関係を築けば、企業側が知りたいことを気軽に問いかけられるような場になるでしょう。