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コミュニティは売上に貢献できるのか?


立ち上げ時に問われる「売上」という課題

こんにちは。イーライフのアドバイザー水野です。
「Q&Aコーナー」第2回目のテーマは、「コミュニティは売上に貢献できるのか?」。コミュニティを立ち上げる際に浮かび上がるこの疑問を、2つの成功事例から解き明かします。

コミュニティを運営する目的としては、主に「ファンづくり」や「顧客の声(VOC)収集」などがあげられます。でも、いざ立ち上げの検討に入ると、経営層・管理層から「そもそもコミュニティって売上につながるの?」と問われるケースも多いのではないでしょうか。

果たして、コミュニティは売上に貢献できるのか。私の答えは、NO(売上に直接はつながらない)。「え?コミュニティで商品を紹介して、ECサイトに呼び込んで、ポチッとさせればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、そう簡単はことではないのです。

仮にコミュニティ上で紹介した商品の反響が良く、「いいね」や賞賛のコメントがたくさん集まったとします。しかし、ここで問題なのはコミュニティの規模です。現在運営されているコミュニティの多くが数千~5万人くらいの会員数が平均であるのに対し、一般的に市販されている商品を取り扱う企業が抱える顧客数は、その数百倍から数千倍。

いくらコミュニティ内で盛り上がってECサイトでの購買につながったとしても、得られる利益は、企業の顧客数全体から見ればわずかです。「コミュニティって売上につながるの?」と疑問に思った経営層・管理層には「なんだ、その程度か」と映ってしまいます。

売上拡大につながった2つのコミュニティ

先程コミュニティは直接売上につながらないと言いましたが、もちろん例外はあります。それは、商材の単価が高額の場合です。住宅、車、金融商品、家電といった商材は高額であるがゆえに「失敗したくない」という心理が働き、リアルな口コミや第三者からのお墨付きが欲しくなるのです。

わかりやすい事例を2つご紹介しますね。まずひとつめが、高価なマットレスなどを扱う寝具メーカー「西川」のコミュニティ「みんなの眠ラボ」です。このコミュニティでは、新規開発商品の体験モニター企画を実施し、実際に試したユーザーの感想をコミュニティ上で紹介しています。ECサイトへの導線も設置され、売上への循環がしっかりと出来上がっています。

そしてもうひとつが、東映アニメーションによるデジモン公式コミュニティ「デジモンパートナーズ」です。このコミュニティでは、パートナーズプロジェクトと呼ばれる共創コーナーを設け、会員と協力して商品開発から販売イベントまでを一貫して進めています。

会員の意見を取り入れて開発された限定のぬいぐるみやオルゴールは、数万円という高額でありながら、X(旧Twitter)をはじめとするSNSで拡散され、売上アップにつながっています。

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マーケティング戦略全体で考えて相乗効果を狙う

では、比較的単価の安い消費財を扱う企業では、直接的な売上につながらないにも関わらず、なぜコミュニティを運営するのでしょうか?また、経営層や管理層からの問いかけにはどのように答えているのでしょうか?

ヒントはマーケティングにおける他の施策との「役割分担」にあります。TVCMやWeb広告、SNS広告など、マーケティングの手法は多岐にわたりますが、それらはそれぞれ長所もあれば、短所もあります。

そのため、企業が顧客へのプロモーションを行う場合、いくつかの方法を組み合わせて、全体のマーケティング戦略とするはずです。コミュニティも単体で考えずに、他の手法と組み合わせることで、マーケティング戦略の構成要素になり得るのです。

コミュニティ「みんなの眠ラボ」を運営する西川も、駅広告やSNS広告を展開しつつ、睡眠に関する専門的な情報は「眠りのレシピ」というブログコンテンツから発信しています。すべての情報を連携させて、店舗やECサイトに顧客を誘導しているのです。

コミュニティの良いところは、役割に応じて姿形を変えて、立ち回れる点です。顧客の生きた声の収集源となるだけではなく、集めた会員の声を他のメディアでのPRに活用するなど、さまざまな使い道があります。その企業ごとのマーケティング施策の組み合わせパターンのなかで、相乗効果を生み出す最適な役割を担えば、マーケティング戦略全体で売上拡大につなげることができるのではないでしょうか。

「企業コミュニティQ&A」第2回まとめ

コミュニティ運営は、その運営を担う担当者や外部のサポートも必要であり、「費用」の発生するマーケティング投資です。経営層や管理層は当然のことながら、投資に対するリターンを期待するはずです。コミュニティ立ち上げ時、「直接的な売上」を求められるのであれば、率直に期待できない旨は伝えるべきだと思います。

しかしその一方で、コミュニティは他の施策と組み合わせることで相乗効果を生み出せることもしっかりと伝えましょう。自社のマーケティング戦略全体を見渡して、足りない部分にコミュニティが果たせる役割を見つけることが重要です。そしてそれを「コミュニティ立ち上げの目的」とし、コンセプトやコミュニティのメニューづくりに落とすことがポイントです。