スピリチュアルと境界知能、陰謀論。そして承認欲求。

2021年は私にとって陰謀論ウォッチの年と言っても過言ではなく、2020年後半からじわじわと現れてきた陰謀論者が結集し始め、ある種の社会問題として取り上げられるほどになった年だった。

それ以前にも空想に浸り、人を霊的に判別出来るとか未来がわかるとか自然治癒力を促進出来る等々、自分は特別な者であると吹聴する奇妙な人々を何人か見てきたのだが、あくまでも占い業界やヘルスケア業界、自然食品業界などいかにもな分野の一部がそうなのだと思っていた。
しかし、現実にはそうではなかったのだ。

陰謀論というのはコロナ以後、急速に広まった非現実的なデマ群だが、ワクチンで人口削減だのディープステートという闇の組織があるだの、そもそもコロナは存在せず世界的な混乱を目的とした情報戦であるだの、要人はゴムを被った影武者にすり替えられている、実は地球は丸くなく平面である(フラットアース)…などといった、荒唐無稽な与太話を本気で信じてしまっている人々がいる。

彼らはいったい何故そんな事になってしまったのか。

数年前に、とある生活保護家系の人に関わった時期があり、そうした人の多くが生活能力や自制心を持てず、生活保護を受けながら毎日ツケで飲みに行ってしまうといった常人には考えづらい思考回路である事を知った。その過程で、実は世の中の7人に1人は境界知能(IQ70~85の知的障害と健常者との境界にある人)であり、そもそも努力する能力がない人がいる事も…。

陰謀論者にも、書かれている嘘を鵜呑みにする、長文を理解出来ない、まともにソースを調べられない、そもそも小学校レベルの基礎的な学力がない等々、境界知能ではないかと疑われる人を多数見かける。
大変驚いたのが「さっきと月の位置が変わっている。やはり月はホログラムなのか。」などと言っている人がいる事だった。

君は本当に小学校を出たのか。

スピリチュアルについてでも触れたが、彼らは自分の無知を指摘されてもなお己の愚かさに気付かず、自分が理解出来る範疇で物事を解釈してしまうという特徴がある。
その結果、都合の悪い話は全て闇の組織の陰謀として解釈されてしまう。

陰謀論者を見ていると40〜60代が大多数であり、この世代はアニメ・漫画が急速に発展してきた頃に子供時代を迎えているため、設定が(子供向けの)漫画的であるのはその影響ではないか…と以前に書いたが、逆に現代の青少年にとっては複雑過ぎる設定の作品が増えたため、深みのない単純な善悪二元論には心惹かれず若年層の支持を得られないのだろう。

昨年「あなたを陰謀論者にする言葉」という本が刊行されたが、これが非常に興味深い本だった。
平たく説明すると、大量生産大量消費社会のカウンターカルチャーとして神秘や心霊、東洋信仰の文化が生まれ、様々な変容を経てオカルティズムやスピリチュアル文化を生み、やがて陰謀論に至る…という精神世界の文化の歴史を解説した本になる。
この変容の中で自己啓発文化も生まれているのだが「何者かでありたいが最初から努力を放棄している」人物が、自己啓発には流れずスピリチュアルに捕捉され、そのまま陰謀論に流れているのではないかと思う。

陰謀論者は盛んに「目覚めた人」「新地球へ行く」などと、自分たちが選ばれた者である事を強調するのだが、これらも何者にもなれない人々の亜種であり、努力する事の難しい境界知能(あるいは発達障害)の人が手っ取り早く承認欲求を満たす手段として「陰謀論」が存在しているのだろう。

それならばまだ、自己啓発に流れていく方が健全だと思うが。

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