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柳樂光隆の音楽評論

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柳樂光隆が書いた音楽に関する論考的なものを中心に。ここだけに公開するインタビューもあります。
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記事一覧

interview Jun Iida - Evergreen:日系アメリカ人トランぺッターとNujabesとの出会い(2,900字)

新譜をチェックしていたら、このアートワークが目に飛び込んできた。 和服の若者がトランペットを持っている写真なのだが、なんとなく写真の感じも含めて日本で作ったアートワークじゃない予感がした。そこで、はっと思い出した。「あ、この人、会ったことあるな…」 僕はイイダ・ジュンさんと東京で会っていた。オーブリー・ジョンソンというジャズ・ヴォーカリストが日本に来た時に彼女たちと食事をしたのだが、その時に彼女の友人のひとりとしてその場にいたのがイイダさんだった。 普通に「はじめまして

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interview ULYSSES OWENS Jr:僕がやるべきは"ユニークな声を持った人々"を助けること(1,0000字)

名ドラマーのユリシス・オーウェンスJrが新たなグループ《Generation Y》を結成し、『A New Beat』を発表した。音楽的にはビバップ/ハードバップを基調にしたオーセンティックなジャズの現代版なのだが、僕はこのアルバムを聴いてものすごくテンションが上がった。すごく興奮した。 その理由はこのバンドのメンバーにある。クレジットを見るとそれなりのジャズ好きでもおそらく聞いたことがないだろう名前がずらっと並ぶ。それは当然で、多くのメンバーがまだ音源をリリースしていない、

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interview Taylor Eigsti:『Daylight At Midnight』からグラミー受賞、『Plot Armor』まで

21世紀以降のジャズを振り返って、特に印象的なアルバムをリストアップしていくとしたらテイラー・アイグスティ『Daylight At Midnight』は必ず入るだろう。 ルーファス・ウェインライト、ニック・ドレイク、エリオット・スミス、イモジェン・ヒープ、コールドプレイ、ミュートマスのカヴァーを含むこのアルバムにはジャズがより自由になり、どんどんハイブリッドになっていった2010年代のムードが完ぺきに収められている。ブラッド・メルドーがレディオヘッドやニック・ドレイクをピア

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interview AMARO FREITAS"Y'Y":先住民族について話し、それをポリリズムを使って表現することは私の使命

2023年のFESTIVAL FRUEZINHOでの来日公演で多くのリスナーを驚かせたアマーロ・フレイタス。あの日のパフォーマンスはこれまでアマーロのアルバムを聴いてきた人にとってはそれなりに驚きのあるものだったのではなかろうか。いくつかの曲で彼はプリペアドピアノを駆使して、自身の音をループさせ、時にピアノを打楽器のように使いビートを組み立て、時にピアノから神秘的な響きを鳴らし、不思議な世界を作り上げていた。今思えばあれは2024年の新作『Y’Y』のサウンドを先出ししたような

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《インタビューを受ける側のためのインタビュー講座》を始める理由:柳樂光隆

今、大学で音楽を学ぶみなさんは将来、ライブをするようになったり、作品をリリースするようになることがあるかもしれません。その時にプロモーションが必要になることがあると思います。 自分のInstagramやTikTok、TwitterなどのSNSアカウント、もしくは他の誰かのSNSでプロモーションをすることもあるでしょう。メディアが持っているWebサイトやメディアのYouTube、もしくは雑誌や新聞、ラジオを使うこともあるかもしれません。その際は誰かと対談をしたり、インタビュー

『Jazz The New Chapter』:発売から10年に寄せて + 2014年版「はじめに」(7,400字)

◉『Jazz The New Chapter』発売から10年に寄せて 『Jazz The New Chapter』という本を出したのは2014年2月14日だった。 今でも覚えているのはちょうど発売する前日にタワーレコード渋谷店の一階を使って黒田卓也『Rising Son』の無料リリースイベントが行われていて、ホセ・ジェイムズがゲストで歌っていた。たぶんドラムはネイト・スミス、ベースはソロモン・ドーシー、鍵盤はクリス・バワーズだったのではなかろうか。そこで黒田さんの新作と

A Sense of Space: the Catalyst of Creativity (中文譯文)

2010年是現代爵士樂界的分水嶺,自此變得饒富興味。日本的爵士樂壇尤其如日中天,新生代樂手如黑田卓也、BIGYUKI、挾間美帆和石若駿等冉冉新星嶄露頭角,熱鬧非常。爵士成為日本媒體廣泛報導的主題,其重要程度可見一斑。除了日本,亞洲整個爵士樂界都風起雲湧,蔚為風潮。今天,就讓我們介紹一位來自香港的爵士音樂人。 Alan Kwan (關家傑),是一位在香港土生土長的爵士結他手。接下來,我將引用的他本人的話,繼續介紹這位新星。 2009年,Alan隻身前往北德克薩斯大學(Uni

50 Best Jazz Albums of 2023 by "Jazz The New Chapter" #JTNC

毎年出している年間ベストの2023年版です。 Rolling Stone Japanの記事と合わせて読んでもらえると嬉しいです。 ◉50 Best Jazz Albums of 2023◉柳樂光隆が他媒体に書いた2023年の総括やおススメの記事◉2022, 2021, 2020年の年間ベスト

interview säje:今のジャズに必要な4人の女性作編曲家による"声"の音楽

サラ・ガザレクを中心に4人の実力派のヴォーカリストにより結成されたセージュは2023年のグラミー賞「Best Arrangement, Instruments and Vocals」にノミネートされた。対象になった「In The Wee Small Hours of the Morning (feat. Jacob Collier)」はゲストとして参加したジェイコブ・コリア―も含めて、5人全員がアレンジにクレジットされている。 サラ・ガザレク、エリン・ベントレイジ、アマンダ

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interview Julian Lage:ビル・フリゼールとのコラボ、ジョン・ゾーンとの活動を語る(9,500字)

今や世界最高のジャズギタリストであり、最もオルタナティブなジャズギタリストであると言っても過言ではないジュリアン・ラージ。 彼はひたすらコンスタントに作品をリリースしているアーティストでもある。2010年以降は、ほぼ毎年のようにアルバムをリリースしていて、その間には様々な客演も行っていて、彼の参加作品は膨大な数になりつつある。自作ではリリースごとに新たな側面を見せてくれるようなチャレンジを行っているし、あれだけ個性的なプレイをするにも拘らずどの作品に加わっても絶大な貢献をし

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interview Emmet Cohen:1920年代のストライド・ピアノには踊り出したくなるフィーリングがある

近年、オーセンティックなジャズを面白く聴かせる若手がどんどん出てきている。グラミーをとったヴォーカリストのサマラ・ジョイが大きく話題になったが、器楽奏者だとエメット・コーエンはその筆頭だろう。 1990年生まれのピアニストは近年、オーセンティックなジャズの世界を刺激し続けている。ニューオーリンズやラグタイムからコンテンポラリーまでジャズの100年を奏でるようなエメットの演奏は自由でフレッシュ、そして、音楽を奏でる喜びにあふれている。アルバムに『Future Stride』と

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interview Joshua Redman"Where Are We":ソフトでスロー、リリカルでメロディックに紡ぐアメリカの理想と現実(8,200字)

ジョシュア・レッドマンがブルーノートと契約したことには驚いたが、リリースした『ホエア・アー・ウィー』がまさかの歌ものだってのにはもっと驚いた。様々なチャレンジを行って、21世紀のジャズの道を切り開いてきたジョシュアだが、ヴォーカリストを加えての歌ものってのは彼のキャリアの中でも初めてだ。しかも、そこには定番のジャズ・スタンダードもあれば、ロックもあったりするカヴァーもの。これもまた驚きだった。 ただ、そこにひとひねりあるのがジョシュア・レッドマンだ。ただ過去の曲の演奏してい

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interview Alabaster Deplume:ありのままの自分、ありのままの相手を受け入れることで作る音楽(9,600字)

僕はアラバスター・デプルームの音楽が好きなのだが、どうもそれをうまく説明することができない。 ロンドンを拠点に活動するサックス奏者で作曲家のアラバスター・デプルームは彼にしか奏でられないオリジナルな音楽を生み出している。2020年ごろからInternational Anthemと組むようになり、世界中に彼の音楽が届けられ、今やアルバムを出すごとに様々なメディアで絶賛されている。 アラバスターがリリースしてきた『To Cy & Lee: Instrumentals Vo

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interview Lourenco Rebetez:レチエレスの音楽ではオーケストラの中でリズムが爆発するように多くの音と交わる

僕がブラジルの音楽の中でもアフロブラジレイロの音楽へ関心を強く持ったきっかけは、2016年にロウレンソ・ヘベッチスという作曲家でギタリストが発表したアルバム『O Corpo de Dentro』だった。 ギタリストとしてはカート・ローゼンウィンケル以降の現代ジャズのスタイルもあれば、アイザイア・シャーキー的なネオソウルのギターも聴こえていた。つまり、2010年代におけるギタリストの必修科目と言えるスタイルを兼ね備えていると感じられた。また作曲の面ではギター・カルテットを核に

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