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柳樂光隆の音楽評論

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柳樂光隆が書いた音楽に関する論考的なものを中心に。ここだけに公開するインタビューもあります。
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#音楽レビュー

50 Best Jazz Albums of 2023 by "Jazz The New Chapter" #JTNC

毎年出している年間ベストの2023年版です。 Rolling Stone Japanの記事と合わせて読んでもらえると嬉しいです。 ◉50 Best Jazz Albums of 2023◉柳樂光隆が他媒体に書いた2023年の総括やおススメの記事◉2022, 2021, 2020年の年間ベスト

2023 003:Brad Mehldau - Your Mother Should Know : Plays The Beatles

ブラッド・メルドーがビートルズ曲集をリリースした。 ブラッド・メルドーはレディオヘッドやエリオット・スミス、マッシブアタック、ニルヴァーナなどの90-00年代ロックを何度もカヴァーし、それらが新たなスタンダードになるまで広めてきた印象が強い。その辺りはこれまでに僕も何度も言及してきた。彼が取り上げてきた楽曲が新たなスタンダードになり、後続のジャズミュージシャンに演奏されることでジャズシーンが変わっていった、とさえ言えると思う。

柳樂光隆が2023年に書いたウェブで読める記事 +

2022年に書いたウェブで読める記事を並べました。 ◉ディスクレビュー連載(随時更新中)◉2023年の来日公演リスト(随時更新中)◉昭和音楽大学 大学院 2023年度後期  ”ジャズ史特殊講義”(水曜日4限 A315)◎書籍・雑誌◉2022年の年間ベスト◉プレイリスト◉NiEW連載”良い音楽の流れる店”◉論考・コラム・対談◉インタビュー:ジャズ◉インタビュー:ジャズ以外◉ライブ・レポート◎2023年以前の記事はこちらから

interview Oded Tzur:ラーガは”スケールとメロディーとの挟間にある何か”であり、”可能性の海”

僕はサックス奏者のオデッド・ツールにずっと関心を持っていた。 きっかけは2015年にドイツのENJA/Yellowbirdからリリースされ、国内盤もリリースされた『Like A Great River』だった。 インド音楽にどっぷりハマり、インドにまで学びに行ったオデッド・ツールという名の謎のイスラエル人はサックスの奏法から、音楽のコンセプトまでとにかく斬新だった。これまでに聴いたことのない質感のサックスを吹き、どんなコンセプトで出来ているのかわかるようなわからないような

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Review:Robert Glasper - Black Radio 3:前2作とは異なる制作プロセスと、シグニチャーを利用した連続性

本作はロバート・グラスパーの大ヒット・シリーズ『Black Radio』の3作目。これまで2作の延長にありながら、同時にこれまでの2作とは決定的に異なる作品でもある。 なぜなら過去2作はロバート・グラスパー・エクスペリメントのメンバーのケイシー・ベンジャミン、デリック・ホッジ、クリス・デイヴ or マーク・コレンバーグの四人とともにスタジオにこもって“バンド”で作っていた。『Black Radio』が1週間くらいで一気に作られたことはよく知られている。 本作は過去の2作と

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BADBADNOTGOODが『Talk Memory』に辿り着くまでの10年

僕にとってBADBADNOTGOOD(以下BBNG)はよくわからないバンドだった。そもそも最初の頃はいわゆるフリー・ダウンロードみたいな文脈で語られることも多く、”センスが飛びぬけて良いインディーロック(or ラップ)・リスナー向けの生演奏ヒップホップ系バンド”みたいなイメージでだった。そんな立ち位置のバンドは他に存在しなかったのと、(カナダ出身ということも関係あるのかもしれないが)アメリカのバンドと比べるとジャズ度やゴスペル度が低くて、他ジャンルとの相性が良かったのもあり、

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Nubya Garcia - Source:Disc Review without Preparation

ヌバイア・ガルシアの『Source』は何より彼女のサックスが素晴らしい。 彼女のサックスの音色=ヴォイスを音楽の中心にどっしり置いて、その演奏で真っ直ぐ勝負しているのに清々しささえ感じる。クンビアあり、アフロビートあり、レゲエ/ダブありの様々な要素が混じるバラエティ豊かな楽曲の中でそのヴォイスを最大限に活かすことで独特の情感を奏でている。 「Source」ではミドルテンポのレゲエのリズムの上で、サックスをリズム化させずに真っ直ぐなロングトーンも駆使して音色の魅力を推しつつ

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2020年のスタンダード・ナンバー:Sam Gendel『Satin Doll』とRafiq Bhatia『Standards, Vol.1』

■80年代以降のスタンダード・ナンバージャズの世界ではスタンダード・ナンバーと呼ばれる曲がある。 「枯葉」「いつか王子様が」「サマータイム」「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「マイ・フェイバリット・シング」などなど、ジャズ・ミュージシャンのオリジナル曲から、ミュージカルや映画の名曲など、ジャズの世界で繰り返しカヴァーされて、定番曲となった曲のことだ。 ジャズ・ミュージシャンたちはそれらを繰り返しカヴァーし、多くの人が演奏してきた曲をどれだけ斬新なアレンジで、どれだけ斬新な

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Makaya McCraven - Universal Beings:Disc Review without Preparation

マカヤ・マクレイヴンの2019年作『Universal Beings』はNY、シカゴ、ロンドン、LAと分けた4部構成。このアルバムはこの年を代表する一枚であり、2010年代の重要作でもあると断言できる。 それぞれのセクションで、それぞれの地域に由来したメンバーとのセッションを行い、そこでは楽曲に関しても、現代のジャズの四ヶ所における地域性を示している。全てのセッションでドラムだけはマカヤが全て自分で叩いてて、それらの地域性や音楽性を的確に叩き分けて、溶け込んでいるのがまず驚

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Interview Lauren Desberg:ローレン・デスバーグ:ブロードウェイ・ミュージカル、カーペンターズからR&Bまでを繋ぐ歌とジャズ

グレッチェン・パーラトやベッカ・スティーブンス、カミラ・メサなどなど、様々な個性のヴォーカリストが次々に現れるジャズシーンの中でローレン・デスバーグはちょっと異質だった。なぜなら出てきたときに「グレッチェン・パーラトに師事」というコピーがついていたからで、「グレッチェン、若手枠なのにもうそんなポジションかよ」的に驚いたし、ローレン自体もずいぶん個性的だったからだ。今思えば、グレッチェンの『Lost & Found』以降、とも言えるサウンドでもあるのだが、その楽曲や歌、録音やミ

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Philip Bailey - Love Will Find A Way:フィリップ・ベイリーがロバート・グラスパーらを選んだ理由

フィリップ・ベイリーと言えば、アース・ウィンド&ファイア(以下EW&F)のヴォーカリストで、名曲「Fantasy」などでの印象的なファルセットでお馴染みだが、新作『Love Will Find a Way』ではロバート・グラスパーに、カマシ・ワシントン、クリスチャン・スコット、デリック・ホッジ、ケンドリック・スコットと現代ジャズシーンの最重要人物たちとコラボレーションしていて、前情報の時点で驚いてしまった人も多いだろう。ただ、これにはそれなりの理由があり、このコラボレーション

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Film Review:映画『Bill Evans Time Remembered』で気付いたビル・エヴァンスの音楽から聴こえるサイケデリア

※ここにビル・エヴァンスの伝記映画『ビル・エヴァンス タイム・リメンバード』映画評を書いたんですけど、そこに書けなかった更にディープな部分をここに書いておきます。 この映画には、ビル・エヴァンスの音楽の素晴らしさをいろんなミュージシャンが語るシーンがたくさん挟まれてるんですが、中でもピアニストのエリック・リードが実際にピアノを弾きながら解説するシーンがとてもわかりやすくて、ここだけでエヴァンスの音楽への理解がぐっと深まります。 マイルス・デイヴィスの名盤『Kind of

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ジャズリスナーのためのビヨンセ『HOMECOMING:THE LIVE ALBUM』

ビヨンセが2018年に音楽フェスのコーチェラでやったライブ音源が『Homecoming:The Live Album』としてリリースされた。世界が最も注目するフェスのためにビヨンセとそのチームがこのショーを #beychella と名付けて、特別に作り上げてきたプログラムは音楽史に残る偉大な記録になった。 その特別さに関しては、衣装とかメッセージとかゲストとか検索すれば詳しいものがいくらでも出てくるので、それらをググって参照してほしい。例えば、若林恵のこれとか必読。 ここ

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