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#音楽レビュー
interview Oded Tzur:ラーガは”スケールとメロディーとの挟間にある何か”であり、”可能性の海”
僕はサックス奏者のオデッド・ツールにずっと関心を持っていた。 きっかけは2015年にドイツのENJA/Yellowbirdからリリースされ、国内盤もリリースされた『Like A Great River』だった。 インド音楽にどっぷりハマり、インドにまで学びに行ったオデッド・ツールという名の謎のイスラエル人はサックスの奏法から、音楽のコンセプトまでとにかく斬新だった。これまでに聴いたことのない質感のサックスを吹き、どんなコンセプトで出来ているのかわかるようなわからないような
Review:Robert Glasper - Black Radio 3:前2作とは異なる制作プロセスと、シグニチャーを利用した連続性
本作はロバート・グラスパーの大ヒット・シリーズ『Black Radio』の3作目。これまで2作の延長にありながら、同時にこれまでの2作とは決定的に異なる作品でもある。 なぜなら過去2作はロバート・グラスパー・エクスペリメントのメンバーのケイシー・ベンジャミン、デリック・ホッジ、クリス・デイヴ or マーク・コレンバーグの四人とともにスタジオにこもって“バンド”で作っていた。『Black Radio』が1週間くらいで一気に作られたことはよく知られている。 本作は過去の2作と
2020年のスタンダード・ナンバー:Sam Gendel『Satin Doll』とRafiq Bhatia『Standards, Vol.1』
■80年代以降のスタンダード・ナンバージャズの世界ではスタンダード・ナンバーと呼ばれる曲がある。 「枯葉」「いつか王子様が」「サマータイム」「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「マイ・フェイバリット・シング」などなど、ジャズ・ミュージシャンのオリジナル曲から、ミュージカルや映画の名曲など、ジャズの世界で繰り返しカヴァーされて、定番曲となった曲のことだ。 ジャズ・ミュージシャンたちはそれらを繰り返しカヴァーし、多くの人が演奏してきた曲をどれだけ斬新なアレンジで、どれだけ斬新な
Makaya McCraven - Universal Beings:Disc Review without Preparation
マカヤ・マクレイヴンの2019年作『Universal Beings』はNY、シカゴ、ロンドン、LAと分けた4部構成。このアルバムはこの年を代表する一枚であり、2010年代の重要作でもあると断言できる。 それぞれのセクションで、それぞれの地域に由来したメンバーとのセッションを行い、そこでは楽曲に関しても、現代のジャズの四ヶ所における地域性を示している。全てのセッションでドラムだけはマカヤが全て自分で叩いてて、それらの地域性や音楽性を的確に叩き分けて、溶け込んでいるのがまず驚
Interview Lauren Desberg:ローレン・デスバーグ:ブロードウェイ・ミュージカル、カーペンターズからR&Bまでを繋ぐ歌とジャズ
グレッチェン・パーラトやベッカ・スティーブンス、カミラ・メサなどなど、様々な個性のヴォーカリストが次々に現れるジャズシーンの中でローレン・デスバーグはちょっと異質だった。なぜなら出てきたときに「グレッチェン・パーラトに師事」というコピーがついていたからで、「グレッチェン、若手枠なのにもうそんなポジションかよ」的に驚いたし、ローレン自体もずいぶん個性的だったからだ。今思えば、グレッチェンの『Lost & Found』以降、とも言えるサウンドでもあるのだが、その楽曲や歌、録音やミ
Philip Bailey - Love Will Find A Way:フィリップ・ベイリーがロバート・グラスパーらを選んだ理由
フィリップ・ベイリーと言えば、アース・ウィンド&ファイア(以下EW&F)のヴォーカリストで、名曲「Fantasy」などでの印象的なファルセットでお馴染みだが、新作『Love Will Find a Way』ではロバート・グラスパーに、カマシ・ワシントン、クリスチャン・スコット、デリック・ホッジ、ケンドリック・スコットと現代ジャズシーンの最重要人物たちとコラボレーションしていて、前情報の時点で驚いてしまった人も多いだろう。ただ、これにはそれなりの理由があり、このコラボレーション
Film Review:映画『Bill Evans Time Remembered』で気付いたビル・エヴァンスの音楽から聴こえるサイケデリア
※ここにビル・エヴァンスの伝記映画『ビル・エヴァンス タイム・リメンバード』映画評を書いたんですけど、そこに書けなかった更にディープな部分をここに書いておきます。 この映画には、ビル・エヴァンスの音楽の素晴らしさをいろんなミュージシャンが語るシーンがたくさん挟まれてるんですが、中でもピアニストのエリック・リードが実際にピアノを弾きながら解説するシーンがとてもわかりやすくて、ここだけでエヴァンスの音楽への理解がぐっと深まります。 マイルス・デイヴィスの名盤『Kind of