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新幹線で、コーヒーを運ぶアルバイト

大学生のとき、新幹線で車内販売のアルバイトをしていました。

バイトしながら新幹線に乗れて、しかも車窓も楽しめるなんて一石二鳥。軽い気持ちで応募し、結局卒業まで細く長くつづけることができた貴重な経験です。

なにより当初、研修トレーニングが怖かったこと!
実際に業務がはじまれば、車内では一人で判断することばかり。基礎的なことを徹底的に叩き込まれました。

ですが不思議なことに、実際にお仕事に入ると、楽しい思い出のほうが断然多かったのです。

まず制服がかっこよかった。
ジャケットをはおり、目深に帽子をかぶったよ。

スカートが膝上すぎるのに、エプロンもまた短かすぎ。いかにしゃがんで下の段の飲み物を手に取るか、みんなで大検証!

グリーン車でコーヒーとおしぼりを配ってから、販売に行くスタイルでした。揺れる車内で、コーヒーを置くのがどれほど怖かったか。

平日の朝はコーヒーが良く出て、夕方はビールが良く売れました。
日帰り出張の方々に朝はエールを送り、夕方はねぎらいながら車内を回ります。同じ曜日の同じ列車に勤務すると、なじみのお客さんに会うことも多くなりました。

Suicaが車内で使えない時代。すべて現金精算でした。POSレジのおかげで合計金額が出るものの、お釣りは暗算!計算は苦手でしたが、数をこなせば暗算も早くなるものです。

そして営業が終わるころには、エプロンのポケットはお札と小銭でずっしり。精算があっていると、ひそかにガッツポーズ。

時間や客層によって売れ筋が変わるので、予測するのも楽しかったです。想定通りに売り切ったときの達成感はひとしお!

一回だけ、新幹線の運転席にコーヒー運びに行ったことがありました。夜なので運転席は真っ暗。しかもトンネルの中だったので本当に真っ暗闇。

運転席の扉を開けたものの、どこへ運びに行けばいいのか?さっぱりわかりません。すると暗闇に突然の光!目の前を対向車両の光が横切ったのです。

双方とも高速運転中なので、ほんとに数秒の出来事でした。「きゃーーー!ぶつかるーーー!!」って大絶叫。

「レールの上なんだから、ぶつかるわけないさ~。」運転手さんに苦笑された思い出。まったくもって予測不能な、あの真っ暗闇な運転席が怖かったのです。



8月に入り、東海道新幹線の車内ワゴン販売が終了されるニュースを聞きました。さみしい思いをしたい人も多いと思います。私もその一人です。

自分ではない、誰かに入れてもらったコーヒーの味は格別!旅のおともに車内でコーヒーを嗜んだ時間は、本当に楽しかったです。

コーヒーを提供した思い出も、購入した思い出もかけがえもありません。


※タイトル画像は「shinsukesugie」さんにお借りしました。ありがとうございます!



【※8/23追記】
私がアルバイトしていたのは、東北・上越新幹線です。言葉が足りず、大変失礼いたしました。このたびは東海道新幹線のニュースでしたが、車内販売がなくなると思うだけで、さみしくなる気持ちに変わりありません。

車窓をながめつつ淹れてもらったコーヒーを飲むひとときが、この上なく旅を楽しくしてくれました。売る側も、とても楽しかったです。
皆さまのあたたかいお言葉に感謝します。ありがとうございます!


【※8/31追記】
このたび、へんいちさんが車内販売の思い出を記事にしてくださいました。
こちらこそ、懐かしい思い出を分かち合う機会をいただき、ありがとうございました。


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