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小澤征爾さんの言葉「いつも自分の心を開いておくこと」

書道道具の傍らにある古新聞を片付けていたとき。今年の2月6日に世を去った指揮者・小澤征爾さんのお写真が目に留まりました。指揮台に立つ、精悍な小澤さんのお姿でした。

惹きつけられるままに、読売新聞に掲載された追悼抄の一節を一気に読み下しました。

一度、「音楽家で一番大事なことはなんですか?」と素朴な質問をしたことがあった。「うーん」と少し考えた後の答えは「他の人が弾く音をきちんと聞く力」。そして続けた。「それにはいつも自分の心をひらいておくこと」。その音楽は人柄そのものだった。

4月4日の読売新聞夕刊に掲載された追悼抄の一節より抜粋


小澤征爾さんは、「一番大事なことは、他の人が弾く音をきちんと聞く力」と言います。自分がきちんと「弾く力」よりも、「聞く力」が大切だと説いているように感じます。

まず聞くこと。
聞きたいと思うこと。
漫然とではなく、きちんと聞くこと。

ふとした音色に託したメッセージに、気づくこと。
メッセージに気づける自分であること。
聞いた人の、心が動くこと。

自分が弾く練習をするときも、同様です。
お手本にしたいと思える演奏を聞くこと。
何度も繰り返し、詳細まで覚えてしまうほどに聞くこと。
きちんと聞いて、模倣してみる挑戦をすること。

聞いた音に、合わせて弾いてみること。
音を揃えること。
相手が弾きやすくなるよう、配慮すること。
相手を引き立てるときと、自分が前面に出ても良いときを見極めること。

「聞く力」一つとっても、いろんな場面が思い浮かびます。いろいろ思い浮かべられる自由さがあって、いろんな受け止め方があって良いように感じます。


実際に娘の合奏練習に付き添うと、先生は何度でも子どもたちに言います。
「相手の音色を、良く聞いて!」

相手の音色を聞かないと、合奏ではうまく合わせることができません。お互いの音色を良く聞けるようになると、息が合う瞬間が訪れます。するとお互いの音色が引き立ち、皆で一つの曲を仕上げる喜びに触れられるのです。

そばで聞く人もまた、心動かされるのです。

「いつも自分の心を開いておくこと」
小澤さんの言葉が、すんなりと腑に落ちた気がしました。

そしてこの言葉は、音楽家としてだけではなく、どんな専門家にも言えることではないかと思ったのです。

何ごとも、まずは聞くことから。
きちんと聞いて、相手を知ることが大事。

そのためにできることは、自分の心に正直でいること。
そこに他意はなく、自分が聞きたいと思う率直な気持ちを大切にしたいと思うのです。

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