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2023春レポ

一年生になったら友達が百人できるらしい。

中学生になったら部活が始まるらしい。
放課後は夕方過ぎに家に帰ることもあるらしい。

高校生になったら学校に自販機があり好きな時にジュースが飲めるらしい。寄り道を繰り返した末、カラオケに転がり込んでもいいらしい。

大学生になったら基本的に何をしてもいいらしい。ヨッ友という新たなジャンルが確立されるらしい。サークルとやらの顧問にもう大人はいないらしい。

社会人になったら程よくお金があるらしい。有給で賃金が発生しながら旅行に行くという夢のような話があるらしい。でも夢のまま終わることもあるらしい。

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奇しくも今年は、春が好きか嫌いかの議論が何度か目の前で繰り広げられることがあったが、別に嫌いになることはないじゃないと思った私は一応前者の議席に座っていた。
生まれ月への贔屓目を瞑ったとしても、夜になるまでの時間が随分伸びたこの季節で浮かれずにいることの方が難しい。眠るにはまだ早過ぎる。

春が嫌いだという人は桜のことを「別れ」の象徴と呼んでいて、春を寂しい季節と感じてしまうようだった。成程その考え方も頷ける。卒業などの別れの季節、頭上にはいつも桜が咲いていた。それでも新年度などの出会いの季節も同じ様に咲いていた気もするが。ドラゴン桜プロモーション画像の阿部寛の上にも桜が咲いているが、視聴していない私にとってあの桜は東大合格前の「出会い」なのか東大合格後の「別れ」の桜なのか全く分別がつかない。兎にも角にも東大に行ってくれればよいのだけど。

三月の夜、神田駅前の大衆居酒屋で初老の男性二人組が隣の若い女性達に話しかけていた。特段盛り上がるわけでもなく業務連絡のように会話は終わっていたが、その男性は会計時に隣の卓へ現金を置いて帰っていた。
最初は断るもその現金をしっかりと握って離さなかった彼女達のやりとりの後方ではWBC日本対メキシコ戦が繰り広げられていた。6回オモテ0対3。
我々の負けだと思った。

四月の夜、例年より桜が早く満開を迎えたので「見れる時に見ておく」という理由から金土日で連日桜を見た。「寝れる時に寝ておく」を今年度のモットーにしようと決めていた私にとって早速矛盾が生じていたが季節イベントなのでノーカン。日曜日に関してはもう桜の写真は撮らなかった。飽きた。

花見客で賑わう桜並木をスーツ姿の初老男性が焦った表情で駆けていった。右手には飲みかけの缶ビール、左手にはスマートフォンを握りしめていた。焦りすぎて左手のスマホのほうをすすりだしたりしたらキュンとしてしまうな。

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ジジイになったら、お金を払わないと女の子と話せないらしい。
ジジイになったら、連日自宅ををほったらかしにして桜を見に行けないらしい。


やがて訪れる己のジジイ時代に備え、何ができて何ができなくなるのかを整理しておくことで今していることがとても愛おしいものに思えてくるのかもしれない。
いざジジイになってから「これできないの!?」など困惑して絶望してしまうのは御免だ。最近生まれたジジイ?


連日油物を摂取していて口内炎一つでまだ済んでいる私へ最大の敬意と賞賛を。
こうしてまたジジイまでの一年がはじまる。

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