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「好き」は一生消えないから、もう死にたいし、生きるっきゃない

寝付けず悶々と家族を起こさないように布団の中をゴロゴロした。「あーもう2時ぐらいか?やべー明日どうすんだ」と頭の中にテロップが流れるも、「こういう時間はだいたい神様の帳尻合わせだから、焦ること勿れ」と頭の中の赤ペン先生が取り消し線を入れて、コメントを添える。

先週ママ友との飲み会で、帰りたくなくなったので特に仲の良い2人に抱きつき「帰るな!一杯付き合え!」と強引に二軒目に連れ出した。

ママ友飲み会が偶然にも私の地元開催だったので、久しぶりに学生時代にけしかけ続けたバーにいった。「ちゃんフクや、あきちゃんやでえ」とほろ酔いでオーナーに話しかけると、まあめんどくさいそうに「3人ね、あそこで」と席に通された。私はそんなつれない大人の男性が大好きなので、にんまりしながら席に座った。

「何飲む?なんか色々あるんだよ」と強制連行した2人にメニューを見せる。「えーなにがいいのかな、いっぱいあってよくわからんな」という2人を前に、店内の壁のいたるところから滲み出るように顔を出す“思い出”を眺めてた。

「ちゃんフク、お酒弱い私がさ、いけちゃうやつをなんとかかんとかで」「アルコール薄めのやつだね」グダついた甘えるような私の発語をしっかり整えて去っていく鈍色のミドルエイジ。久しぶりの再訪に胸が躍った。

ママ友との会話なんて子どもの話か夫の話が9割占める。夫があーだこうだ、あれをやらん、これをやらん。子どもがこうする、あーする、あれをやらん。ギャハハ!グフフ!ヒィヒィ!言いながら酒は進み、時計の針も進んだ。

約束通り一杯飲んで、ちゃんフクに別れを告げ店をでる。家路につこうとタクシーに乗り込んだけど、飲み足りなかったから、ワンメーターちょっとで降りた。

アルコールのチカラもありバッドに入り、寒空のしたその辺で買った缶チューハイ片手に、顔がぐしゃぐしゃになるぐらい泣いた。

別に自分の人生を否定したことなんて一度もないし、後悔したことないよ。常にベストを選び続けてる自信があるから、その結果がどう転んだってベストだし、ワーストだとしても受け入れられるし、アタイまじで間違ってないし。

久しぶりに訪れたちゃんフクが作り出す世界は「ああ、そういう選択もあったかも」で溢れすぎてた。お酒飲めない私が家に帰りたくなくて立ち寄ったときのパイナップルジュース、元彼に浮気されたときに飲んだティフィンのなんか、友達連れってカッコつけて頼んだウォッカのなんか。

あのとき好きだったものを貫いていたら、全然違う人間だった。あのとき好きだった人に勇気出してたら、全然違う子どもを産んでた。とか、一気にそういうのが押し寄せちゃって、自分が自信を持ってしつづけた決断の背景には、選ばれなかったものの死体が転がってるとも思えた。

悲しいわけじゃないんだけど、涙が出ちゃったことに驚いたし、えづくほど泣いてる自分に笑えたし。数日経って、眠れない状況下で思い返しても「ありゃなんだったんだ」ってだけ。

赤ペン先生が現れたぐらいに、「あれは思い出のオーバードーズだったなあ」と納得した。「過去の決別したんだなあ」と、だんだん眠くなってきて沈み込みように目を閉じた。

目を開くとそこは大きな公園であったかくて春めいてた。ピクニックシートを広げて、お弁当食べてる。目の前にいるのは夫ではなく、付き合わなかった昔の好きな人だった。

「ちょっと昼寝する?」というので横になると腕まくらをしてくれた。とっても幸せだった。あったかいし、あの頃喉から手が出るほど好きだった男が、私を腕まくらしてる。

なんなの?幸せか?死んだんか??「こうしたかったね」と突然言い出す。「幸せになったんだね。よかったね」「は?」「きみのこと幸せにしてるの俺じゃないよ。めちゃくちゃ大事にしてるのも俺じゃない」「は?」

パチっと目を開けると家族がスピスピ寝てる寝室だった。「夢かよ、なんだよ!」と思ったけど、ふと夫が腕まくらしてくれているのに気がついた。いつからしてくれてるのかわかんないけど、心底ほっとしたし、心底幸せだなと思った。

始まってない恋愛をふと思い出して恋しくなるほど、私は恋愛至上主義なのだな。それゆえ、死にたくなるようなフラッシュバックに襲われること多々ある。過去の恋愛以外でも、トラウマ的なもののフラッシュバックも多い。

この前は運転しながら「ほんと!まじで!いい加減にしてよ!!」と思わず叫んでしまい、長女が泣いてしまった。でもあるのだ、私には、夫という安息の地が。なんやかんや世界で1番いい男なのである。寝つけずゴロゴロする私に腕まくらしてくれる、優しいヤツ。夫と一緒に生きてるあいだは、心配も不安も恐怖だってないのである。「好き」は死なない、だから私は今日も夫と生きてやるのだ。

神様の帳尻合わせ。きっと、昔の好きな男の入り待ちだったんだろうな。夢は用意されてたんだけど、あいつが時間ミスたっとかで出てこなかったんだな。あんたのおかげで私は寝不足だよ。むかつくよ、でも多分一生好きだよ。ふざけんなよ。

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