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2022年の算数科学習指導をふりかえる

はじめに


約1年ぶりの投稿になります。今年も僕は相変わらず講師として学校で働かせていただいておりますが,去年と違って,今年は「小学校」で「算数科」の指導を担当しておりました。

今まで理科の学習指導をメインに研究や実践を行ってきたので(大袈裟な表現で恐縮ですが),今年は何かとはじめてのことが多く,エキサイティングな毎日を送っておりました。

エキサイティングでめまぐるしい毎日の中での指導を通して,様々なことを発見したり疑問に思ったりしているのですが,それらは日々のタスクに埋もれてしまいがちです。

年末にさしかかり,少しゆとりができたので,ここで一度自分自身の指導をふりかえり,まだ埋もれきっていない学びや課題を書き留めたいと思います。

仕事の概要


今年,僕が任された主な仕事は,先程述べたように算数科の指導ですが,いわゆる「教科担任」として算数科を指導しているわけではありません。具体的には,4~6年生を対象に,習熟度別の少人数指導もしくはT2(担任が算数の授業をしている傍らで,常時机間指導を行う役割)を行っていました。

その他細かな仕事も様々ありますが,総じてどのような仕事であるかと説明するならば,「算数が苦手な子ども」を中心に指導をする役割であるといえます。

すなわち,「算数が苦手な子どもに算数を教える」ということが僕の仕事なのですが,算数科の授業づくりは教育実習以来していませんでした。まずは,わからないながらもやってみて思った「算数科学習のつまずき」について後述します。

やってみて思った子どものつまずき


とにかく算数科の学習でみられる子どものつまずきは,大雑把に言うと『どう考えたらいいのかわからない』というものに尽きるように思います。つまり,「これまで学んだ学習内容を,目の前の学習に転移させること」に困難があるように思います。

どの教科においても,「学習内容の系統性」はありますし,それらを基に授業が行われることで,子どもは学びを積み重ねるものだと思いますが,とりわけ算数科はその「学びの積み重ね」が重要であると感じました。1年生の「たし算」が基礎となり,その上に2年生の「かけ算」が成り立ち,さらに3年生の「わり算」へと発展していくとされていますが(坪田,2014),まさにそのように既習の内容をどんどん転移・活用することで学習内容が発展していきます。

そうした算数科の学習において,例えばどこかの単元でつまずいてしまうと,後の学習がかなり苦しくなります。単元内で教師がうまくフォローすることができればいいのですが,全員を目標まで到達させることは極めて難しいと感じました。もちろん僕も含めてすべての先生方は努力をしていますが,どうしても数人は「よくわからない」と言いながら1時間の授業を終えて,身につけるべき知識や思考力を欠いたまま,翌日の算数の授業を迎え,そのうちにテストをして単元を終えていきます。

上記のようなことが続くと,子どもは「今日もわからなかった」「できなかった」という経験を積み重ねて徐々に無気力になっていき,学習性無力感に陥る可能性があります(鹿毛,2013)。現在,僕が関わっている学級の子どもは何とかぎりぎりのところでがんばってくれているように思いますが,指導に気を抜くとリカバリーがとても難しい状況になる危険があると感じながら,日々仕事をしています。

参考文献
鹿毛雅治(2013)『学習意欲の理論』,金子書房.
坪田耕三(2014)『算数科授業づくりの基礎・基本』,東洋館出版社.

やってきた指導の概要

上述した子どものつまずきの傾向を考慮して,現在僕がおおよそどのような算数科の指導をしているかを以下に示します。なお,以下の指導は,多くの先生方からすると,「そんなの誰でもやってるよ」あるいは「もっといい方法あるよ」というものかもしれませんが,悪しからず…

1.授業の導入で既習事項のふりかえりを行う

4月から二学期末まで授業をしてみて,授業の導入で既習事項をふりかえる(想起させる)ことがとても重要であると実感しました。

これまで授業の導入でふりかえることは,「形式的なだけで子どもにとって必然性がない」という個人的な考えから敬遠してきましたが,算数科の指導に関していえば必要かつ有効であると考えるようになりました。その理由は,算数の授業で最も避けるべきは,先述したように,子どもに「今日は何もわからなかった」という経験をさせることであると考えられるためです。

したがって,授業の導入に関する個人的な考えはさておき,算数の授業では,はじめに本時に関係する学習内容のふりかえりを行い,子どもに「これはわかる」とまず思わせることで,「今日はできそうかも」と授業へのハードルを下げることは重要であると考えられます。

また,導入で前時までのふりかえりを行うことは,「今日はできそうかも」と思わせるだけでなく,本時の学習を進める上でも有効です。本時に関係する前時のふりかえりを黒板に残しておくことで,本時で子どもが考えるべき場面の支援にも活用できるからです。

2.「考え方」に関する指導に重点を置く

算数科の授業は(というより教科書の構成としては),まず「例題」で既習事項を利用しつつ新たな内容を学習し,次に「適用題」で例題で学習したことを複数の問題で活用する,という流れとなっています。

先述した授業の導入とも関連しますが,この例題で十分に前時の既習事項(あるいは子どもが既に持っている知識)と,新たな学習内容をつなげることが重要であるといえます。なぜなら,ここで子どもに理解させる(あるいは納得させる)ことができなければ,子どもはわからなくなるからです。

また,既習事項には,「知識」と「考え方」の2種があると思いますが,「考え方」を本時の例題で活用させる場合,『なぜ今回もこの考え方で解決できるのか』という学習に時間を割きます。子どもが十分に納得しなければ,適用題をさせても子どもの「わからない」が続出するからです(実体験)。一方で,授業で扱う適用題がたとえ1問であっても,導入と例題での指導がうまくいけば,問題ないように思います。

指導のまとめ

つまるところ僕は何を重視して授業づくりをしたのかというと,それは子どもの「自己効力感(self-efficacy)」を育成することであるように思います。

自己効力感(self-efficacy)は,「やればできる」という自信(櫻井,2017)だとされています。この自己効力感は,子どもが算数科の学習に向かう上で極めて重要な動機づけではないでしょうか。先述した指導の概要は,結局のところ子どもに「あ,自分もやればできるんだな」と感じてもらえるように授業づくりをした結果,定着した実践であるように思います。

参考文献
櫻井茂男(2017)『自律的な学習意欲の心理学ー自ら学ぶことは,こんなに  も素晴らしいー』,誠信書房.

2023年の宿題

ここまでざっと,僕自身の2022年の算数科学習指導をふりかえってきました。当然,2023に持ちこす宿題があります。

1.自己効力感を育成する算数科学習指導法はこれでいいのか

本記事の終盤で恥ずかしげもなく「僕の算数科の授業づくりは,子どもの『自己効力感』を育成することを重視している」なんて書いてしまいましたが,この授業方法が妥当かどうかは当然議論の余地があります。文献や先輩方の助言の力をお借りして,引き続きよりよい授業を目指していきたいと思います。

2.「算数科」の理念・思想がわからない

「算数科」が何を目指しているのか,どういった授業をすればいいのか,これらについてはまだまだ勉強中です。今年は算数科の本を読んでみたりしてみましたが,正直「まだよくわからない」というのが本音です。けれども,知的におもしろい授業を目指して,算数科の教科教育学的な知見を引き続き学んでいきたいと思います。


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