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ニューヨーク食生活、日本食が恋しくならない

「日本の食が恋しい?」と聞かれたり、「日本食恋しいですよね」とアメリカにいると同意を求められることがある。適当にうなずいてしまう。
しかし、実際は特に恋しくないのだ。

今回の日記は、海外生活の食に不安があるひとが読んで適性を確認できる記事となっております。珍しく有意義!

まず第一に、ファストフードとスイーツに適正があること。
アメリカといえばハンバーガーやホットドッグ、$1ピザなどのファストフード。ミスドより一回り大きいドーナツや新生児の頭くらいあるアイスクリーム、親の仇の如くチョコレートチップが入ったクッキーなど、とにかく甘くて甘くて甘いもの。
これらに適性があるというのは、アメリカで暮らす上で大きなアドバンテージであると思う。望まなくとも差し出されることが多いし、サービスエリアなんかではそれしか選択肢がない。
わたしは日本では丸亀製麺と油そばくらいでしか外食をしない自炊派だったが、どうやらジャンクフード適性があるらしかった。ホットドッグおいしい。

ジャンクフードを一切受け付けない人は、アメリカで軽食を取ることのハードルが一気に上がる。
日本のようなコンビニがないからだ。
「日本のような」というのがポイントで、セブンイレブンはあるが、全く異なる。
日本のそれと同じなのは多分その場でカップに注ぐコーヒーが買えることくらいだと思う。
お母さん食堂的なコンビニ飯など存在しない。運良くおにぎりがあっても円換算5倍くらいする。味については言及しない。やっぱり運が悪いと言えるかもしれない。
なにか勝るものがあるとしたら、ブリトー。日本のコンビニだとチーズとハムが二枚くらい入ってるだけの書類が入った封筒くらいの薄さのブリトーが、こちらではパンパンに円柱である。
日本のコンビニを愛してやまないなら、まずアメリカ生活は辛いはじまりとなる。

ファストフードでもコンビニでも食べられるものがないならば、泣きながらリンゴをかじるしかなくなる。アメリカではリンゴはsnack扱いで、かじってても誰も何も言わないし、そこらへんで手にはいりやすい。
この前は街中でパプリカかじってるマダムを見た。オレンジ色のパプリカだった。

第二に、ほとんど毎日自炊ができること。
これはライフスタイルにもよるので難しい人も多いとは思うが、我が家では基本的に外食は外で用事がある時にすることが多いので、わざわざ食べに行くことは少ない。
私はほぼ家に引きこもっているので、ご飯は割としっかり作っている。

通常のアメリカのスーパーでは、人参はえらく細いし、アスパラはずいぶん太いし、きゅうりはズッキーニとの区別が怪しいし、大根は売っていない。魚コーナーでは美味しい刺身などなく(そもそも生食用が少ない)、肉コーナーにはしゃぶしゃぶ用のような薄切り肉はない。生姜焼き用だって怪しい。
日系スーパーが存在するNYでは基本の調味料「さしすせそ」はすぐ揃う。しかしそこで全ての買い物をしようとすると、食材は高くついてしまう。制限が多いのだ。

ここで強い味方なのは中華系スーパーである。
中国人の先人たちのネットワークは本当にすごく、アメリカでは食さない食材や、もともと生産されていない食材がフレッシュに手に入る。大根も薄切り肉もあるし、なんなら生きたウナギとか売ってる。彼らはアメリカに順応するんじゃなくて、中国を広げている。たくましすぎる。そのスーパーでは英語が通じないことが多々ある。

ニューヨークにはいくつかチャイナタウンがあるが、最も有名で規模も大きいのはクイーンズにあるフラッシングという場所で、ここは本当に中国そのもの。
おそらくアメリカ最大のチャイナタウン、というか、アメリカいち精密に出来た中国だと思う。見渡す限りアジア人しかいないし、中国語しか聞こえない。
道端でお祭りでよくみる品種の金魚(すぐ弱るやつ)とか揚げパン(衣装ケースにつまっている)を売っている。
白人の多い環境から、アジア人しかいない環境に行くと、なんとなくここでは浮かない、アジアンヘイトに遭うこともない、という少し落ち着いた気持ちになる。けれど、普段当たり前に英語で話しかけられるように、ここでは中国語で話しかけられるので容赦ないスピードの中国語が降ってくる。
"Sorry,What did you say?"と英語で返したら、ゆっくり中国語で返された。そうじゃないんだよな…
やっぱりあんまり落ち着けない。でもどこか帰属意識が働いて、ここなら見た目だけで判断されることが少ないなと思える。それは少しだけ、よりどころになる。

話を食に戻す。
大根や薄切り肉が買えて、みりんやだしなど日本特有の調味料も入手できる。となると和食や日本の家庭の味は作り放題。
ニューヨークで手に入らないものは少ない。当然日本より割高にはなるけれど、買えることがありがたい。これからも買いたいから払う。
自炊ができるのであれば、日本食が恋しくなることがグッと減る。
(ちなみに日系スーパーのない、みりんが手に入りにくい場所ではハチミツとウォッカで代用することがあるそう)

とはいえ、やはり手に入らないものはある。
アメリカでは生食可能な卵が簡単に手に入らない。理由は日本と違って殻の消毒をしていないためで、サルモネラ菌が付着している。卵は割る際に中身が殻の外側と接触することが避けられないから、生食はできない。
たまごかけごはんとは疎遠になった。

  • もともと日本の外食産業にお世話になりまくっていない

  • コンビニで食事を済ませることが少ない

  • 自分の食べたいものは自分で拵えることができる

ファストフードがそこまで好きではないとしても、以上の3点を満たしていれば、食事に困らない。

郷に入っては郷に従えというし、自分の意思でアメリカにいるのだから、食事に関して文句言うのはその国に暮らしているのにおかしい、という考え方もあるかもしれないけれど、食べたいものを食べること、1日3回ある食事にストレスを抱えないように取り組んでいくことは、メンタルヘルスに直結する。病んだらやってけない。
心身ともに健康であるために自分に合う食事を実現していかないといけない。

最後にアメリカに来てから食べたものたちをすこし並べておきます。これが頻繁に食べれそうなら全然やっていけます。