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マーク・マンダースの不在_2021_04_02

開催館:東京都現代美術館
観覧料:これだけ観るなら1,500円
今回はライゾマ展とセットで買ったから2,300円(こっちがおすすめ)

どんな内容の美術展?

マーク・マンダース氏の国内初個展。
マーク氏がSkypeで展示の構成を1から指示して作り上げた展示。

そもそもマーク・マンダースとは

マンダースは1968年オランダ生まれ。
デザインを学んだ後、「建物としての自画像」というコンセプトで、インスタレーション、ドローイング、彫刻、短編映画を制作し続けている。
Wikipediaより

マンダースの作品について:

・マンダースは物と自身との間に起きる複雑な関係性に強く関心を抱いている。
・言葉ではなく物によって本を書き、自画像を想像上の建物として現実にはめ込んだものが作品。
・個々の作品は、私的な記憶や過去の美術史に基づくイメージから構成されている。
(キャプションや作品リストより)

今回の展示自体が1つの作品(物語)となっていて、個々の作品にもストーリーがって、作品同士には文脈みたいなものがある。これらを静かに読み解くような展示。

目玉の作品は?

公式ホームページとかSNSを見ると、〈マインド・スタディ〉がよく挙がっているからこれが目玉なのかも?

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わ〜不穏な雰囲気の作品!

行ってみようと思った理由は?

元々、ライゾマ展に行こうと思っていて、せっかくだからもう一つ展示観ようと思ったのがきっかけ。

去年末の金沢21世紀美術館での展示がすごくよかったという声をたくさん見かけたので、行くならこれでしょう、ということ流れ。

美術展全体の構成や印象は?

<印象>

今にも崩れそうな粘土みたいな素材の頭像が転がっていたり(乾いた土の頭部)、少女像が大きな家具に結び付けられていたり(マインド・スタディ)、マンダースの作品は観る前からうっすら怖いと思っていた。

実際、展示会場は静かだけど、穏やかな静けさではなくて、作品もあってかどこか不安になる緊張感がある。
その静けさのもと、作品を覗き込んで考えることを促されるような展示だった。

展示会場にマンダース自身はいないけど(不在)、随所にある作品の痕跡から彼の存在がいると感じられる。

<構成>

構成自体も作品ということで、会場は部屋という区切りの他にも、半透明のビニールを使って区切られている。

この半透明のビニールがあることで、ビニールの向こう側にある作品も鑑賞者も、自分と同じ空間にはいないけど確かに「いる」という感じ。

彫刻やオブジェクトの他にもドローイングも展示されている。あと最後に床がふわふわな空間作品も。

印象的な作品BEST3 と簡単な理由

①〈乾いた土の頭部〉― 大きいし今にも崩れそう、という緊張感と、目を瞑っていることからの静けさ、のバランスが良い。

②〈マインド・スタディ〉― 大きな家具と紐で結ばれているが、その紐の引力に片足で反抗している少女。
展示の中でも随一の緊張感がある作品だと思った。過去の経験に由来する所もあるのかな。

③〈黄色い縦のコンポジション〉 ― 頭部を板で挟んだような作品群の中でも、特に黄色のこの作品が印象に残った。黄色は何を意味するのか、それだけでもずっと考えていられる。

1番の推し作品を詳しく

マーク・マンダース〈乾いた土の頭部〉、2015~2016年

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<どういう作品?>

サイズが233 cm ✕ 155 cm ✕ 283 cmと大きい。
一見乾燥しきっていない粘土からできた巨大な頭部。後方に板と、板と像を繋ぐ金属製のワイヤーがある。
だけど、作品リストには「彩色されたブロンズ」としか書いてない。

<すきなところ>

眠っているかのように目を瞑っているのに、今にも崩れそうな見た目の不安定さと、後方の板とワイヤーの引張による緊張感。静謐さと応力のバランスが良いなとまず思った。

表面上は穏やかに眠っていても、頭の中では「明日が来るの嫌だな」とかそういった不安をぼろぼろ感じる夜があるじゃないですか。
自分はこの像が眠っているように見えたからか、この像から似た感覚を感じた。

調和をあえて崩した状態で、時を止めたように彫刻しているからか、全体的に不穏なんだよね。
だけどもっと見て感じていたいと思わせるマンダースすごい。

最後に

・今まで現代美術は、解説や明確な答えが得られないことが多くて「すっきりしなないな〜」と思っていたけど、マーク・マンダースのこの展示で初めて、「それが良いんだ」って思えた。

・考える余白がたくさんある。わからなくて不安になる。これらの要素があるから記憶に残って消えない。すごいね。

・観た前後で、作品に対する向き合い方が変わったきっかけになったこの展示は、自分の中でかなり衝撃だった。

・おまけのつもりで観た展示だったのに、おまけの方に強く惹きつけられた。現時点で良かった展示、第1位です。

・もう一度行きたいけど、現時点(2021/5/6)で、緊急事態宣言延長かも〜みたいなこと言ってるから、休館が長引いてそのまま終了とならないことを祈っている。

おまけ

現美のB1Fでやっているライゾマ展と、3Fでやっているマンダース展の動と静の対比がすごかった。

ライゾマ展の音響の低音が、マンダースのドローイングを展示している部屋にまで響いてた(それくらいマンダース展は静か)。

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