【書評】システム開発紛争ハンドブック

法務在籍時に読んでおいてよかったかもと感じた書籍【第3弾】です!

【概要】システム開発・運用に関する紛争・トラブルの類型毎に解決指針・方法を考察
【難易度】★★★
【法務お役立ち度】★★★★★

この分野を専門とする松島先生と伊藤先生の共著で,伊藤先生の他の著書である「ITビジネスの契約実務」は,法務部門時代に何度も読み返しておりました。

こちらを購入したのは修習開始後でしたが,弁護修習中にソフトウェア開発トラブルに起因した訴訟に関わる機会があり,その時にちょうど本書にお世話になりました。

本書では,システム開発~運用に至るプロジェクトのフェーズ毎に項目が分けられ,各々の紛争トラブルの原因,類型,解決に至るまでの考え方について豊富な裁判例を含む具体例を交えながら説明されております。

法務部門(主にIT系)でよく直面する以下の項目はばっちりカバーされております。

①契約の成否自体が争いとなる場合
②作業範囲(開発対象)が争いとなる場合
③契約の法的性質・形態が争われる場合(請負or準委任であるか等)
④プロジェクトが頓挫した場合
⑤成果物に瑕疵が発生した場合(瑕疵担保【現在は契約不適合】責任等)
⑥システム運用中にトラブルが発生した場合
⑦成果物の帰属が争われる場合

私が関わった前記紛争は①,②,⑤が論点になりうるものでしたが,本書にはシステム開発時の紛争に関する主張・立証ポイントについても詳細な説明がされているのがありがたかったですね。

法務部門時代にも類似案件をいくつか担当したことがあったのですが,もう少し早めに本書を読み込む機会があったらなぁと後悔しております。

本書は債権法改正前に発行されたもので(最終章に債権法を見据えた補足があるものの),欲をいえば改訂版も読んでみたいところ…

今後私が弁護士になった後も,こうした類型の紛争等を担当することが多くなりそうなので,本内容を頭に叩き込んでおきたいです。

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