#44 ホーソーン「ウェイクフィールド」〜承認欲求モンスター爆誕!の巻 の感想

※これはポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」の感想です


今回の本

今回のキーワード

  • 夫婦間の義務不履行(結婚は契約)

  • 義務の中には何が含まれているのか?

  • 経済的に困窮させてないのであれば義務を果たしているのでは?

  • 奥さんは途中で気づいていたのではないか?

  • 破滅願望と蒸発願望

夫婦間の義務とは何か?(日本の民法の場合)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

民法第752条

というように、日本の民法はまず「同居」っていうのが義務なんだということを知らなかった。(もちろん単身赴任等の事情は除く)
となると、現代の日本であればウェイクフィールド氏は、離婚を申し出され、慰謝料を請求されても文句は言えない立場である。また「3年以上の生死不明(民法770条1項3号)」も離婚原因にあたると見なされるので、20年も失踪しているのは文句なしのレッドカードだろう。

匂わせ察してちゃん

「承認欲求モンスター」と番組内では称されているが、それに加えてこのウェイクフィールド氏は「匂わせ」しがちな「察してちゃん」なのではないだろうか。いませんか。職場や学校にも具合悪そうに振る舞いながら「大丈夫?早退したら?」とか打診されると「大丈夫です」とか言う人。
こういうタイプなんだと思う。自分から言い出したくはなく、人から察してもらいたいってタイプの人。大人じゃない、ってことなんだろう。
恐らく、奥さんが食卓にカトラリーを出し忘れたら「手で食べろということかな?」って言うタイプ。暴言を吐いたり殴ったりしなくても、こちらのメンタルを削っていく人っている。

奥さんは知っていた説

配信内で大東先生が「奥さんは途中で気づいていたのでは?」と言っていたが同感。すれ違った時以外でも、こんな近所に潜んでたら誰かが見かけてないわけない。
となると私の推理としては『もともと奇怪な人だったがゆえに、ことを大きくしたくなかった奥さんはそのままやり過ごすことを決意する。近所の人からも夫を見かけたことを聞き、居場所も突き止める。が、本人が帰るのを黙って待つことにした』というものである。
奥さんも面倒だったんだろう。不在も寂しくもなければ悲しくもない、いなきゃいなくてもまぁいいわ、という感じだろうか。

改めて夫婦間の義務とは?

個人的に、同居したり互いに扶助するという以前に「信頼関係を保とうと努力すること」が夫婦間の義務なんだと思う。
つまり「相手を不安にさせない」というのがここに入る。勝手にいなくならない、相手に心配をかけない。こういう基本的なことがルールなのではないか?
そういう点からいうと、承認欲求のためだけに失踪するようなウェイクフィールド氏は「不誠実」なのだ。そして私が一番腹が立ったのが(帰った後)終生愛情深い夫となった」ってところ!20年も奥さんに不誠実な行いをしておいて、そのあといくら愛情深くなったって駄目でしょう。

番組内で紹介された本

これはウェイクフィールドと違って、本当に別人が帰って来るパターン。気になる。

その他の参考本

妻を嫌う夫がこっそり隠し部屋的なアパートを借りてそこで読書したりお酒を飲んだり楽しむ表題作を思い出した。いわば「プチ蒸発」とでもいうべきか。

失踪を扱った作品で真っ先に思いついた本。まだ読んでいないけど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?